0

科学大数学院試過去問解答例(2023午後06)

75
0
$$$$

ここでは科学大数学系の修士課程の院試の2023午後06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです

2023午後06

$(0,1)$上の可積分関数列$\{f_n\}$及び可積分関数$f$が等式
$$ \lim_{n\to\infty}\int_0^1|f-f_n|d\mu=0 $$
を満たすとする。以下の主張(1)(2)(3)が正しれば証明し、誤りであれば反例を挙げなさい。

  1. 等式
    $$ \lim_{n\to\infty}\int_0^1|f-f_n|^pd\mu=0 $$
    を満たすような$p\in(1,\infty)$が存在する。
  2. $\{f_n\}$の部分列で殆ど至る所$f$に収束するようなものが取れる。
  3. 任意の有界連続関数$g:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$及び任意の$p\in[1,\infty)$に対して等式
    $$ \lim_{n\to\infty}\int_0^1\left|g\circ f-g\circ f_n\right|d\mu=0 $$
    が成り立つ。
  1. 誤りである。まず
    $$ h(x)=\begin{cases} \frac{2^n}{(n+1)(n+2)}&(\frac{1}{2^{n+1}}\leq x< \frac{1}{2^{n}}) \end{cases} $$
    で定義する。このとき
    $$ \int_0^1|h|d\mu=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{2n(n+1)}=\frac{1}{2} $$
    である一方、任意の$p>1$に対して
    $$ \int_0^\infty|h|^p\mu=\sum_{n=1}^\infty\frac{2^{n(p-1)}}{2n^p(n+1)^p}=\infty $$
    であるから、$h$は所望の反例になっている。
  2. 正しい。まず$\{f_{n_i}\}$
    $$ E_k=\left\{x\in(0,1)\middle||f_{n_i}(x)-f(x)|>\frac{1}{i}\right\} $$
    と置いたとき
    $$ \forall n>n_i \quad\mu(E_i)\leq\frac{1}{2^i} $$
    を満たすようにとる。以下簡単のためこれを$\{f_i\}$とおく。このとき
    $$ \mu\left(\bigcap_{i=1}^\infty\bigcup_{j=i}^\infty E_i\right)=0 $$
    であるから、特に数列$\{f_n\}$は殆ど至る所各点収束している。
  3. 正しい。まず$\{f_n\}$の部分列を任意にとる。このときこの部分列の部分列で殆ど至る所各点収束するような$\{f_{n_k}\}$が取れる。このとき$g$の連続性から$\{g\circ f_{n_k}\}$も殆ど至る所各点収束する。測度空間の有限性・$g$の有界性・有界収束定理から
    $$ \begin{split} \lim_{k\to\infty}\int_0^1|g\circ f_{n_k}-g\circ f|^pd\mu&=\int_0^1\lim_{k\to\infty}|g\circ f_{n_k}-g\circ f|^pd\mu=0 \end{split} $$
    がわかる。以上の結果と以下の補題から所望の結果が従う。

実数列$\{a_n\}$が、任意の部分列が$a$に収束する部分列を持つとき、$\{a_n\}$$a$に収束する。

$a$の収束しないとき、$a$に近づかない部分列が取れるから対偶が言える。厳密な議論は こちら

投稿日:225
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中