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東大数理院試過去問解答例(2025B06)

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ここでは東大数理の修士課程の院試の2025B06の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。

2025B06

Rnの連結開集合U及びp,qUに対して、dU(p,q)pqを結ぶU内の区分的に滑らかな曲線の長さの下限とする。連結開集合U0,U1Rn及び全単射f:U0U1で、任意のp,qU0に対して
dU0(p,q)=dU1(f(p),f(q))
を満たすものが取れたとする。このときR2の等長変換Aが唯一つ存在して、任意のpU0に対して
f(p)=A(p)
を満たしていることを示しなさい。

 まずU0の開部分凸集合V0をとる。このとき任意のx,yV0について
d(f(x),f(y))dU1(f(x),f(y))=dU0(x,y)=d(x,y)
である(最後の等式にU0の凸性を用いている)から、通常の距離位相に関してf:V0U1は連続である。
 ここで任意のpU0に対して、f(p)の凸開近傍V1をとり、f1(V1)に於けるpの凸開近傍V0をとると、これは任意のx,yV0について
d(x,y)=dU0(x,y)=dU1(f(x),f(y))=d(f(x),f(y))
であるから、通常の位相に関してf:U0U1は等長写像である。このとき、fの全単射性も考慮すると、U0,U1の取り方に依らないある等長変換Apが存在して
f(x)=Ap(x)
を満たしている。
 最後にこのAppに依らないことを示す。p,qU0を任意に取る。まずU0は連結開集合なので弧状連結開集合であり、γ(0)=pかつγ(1)=qなる道γ:[0,1]U0をとることができる。ここでγ[0,1]上の各点に於いて充分小さい凸開近傍をとると、γ[0,1]のコンパクト性からこれは有限部分被覆を持つ。充分小さい凸開部分集合に於いて上で取った等長変換は点に依らず一定であるから、これによりAp=Aqが従う。
 以上からApAとすれば良い。

投稿日:19日前
更新日:11日前
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藍色の日々。趣味の数学と院試の過去問の(間違ってるかもしれない雑な)解答例を上げていきます。リンクはX(旧Twitter)アカウント 

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