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二変数関数の極値の判定法

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一変数関数において極値が求められたように、二変数関数においても極値を考えることができる。

極値をとりうる点

関数$z=f(x,y)$を考える。
$z=f(x,y)$$C^1$関数であるとき、$z=f(x,y)$が点$(a,b)$で極値をとるならば、
$\color{blue}f_x(a,b) = f_y(a,b) = 0$
が成り立つ。
極値をとりうる点は連立方程式 $f_x(x,y) = 0$ $f_y(x,y) = 0$ を解くことで求めることができる。
ただしこれらの点は極値をとりうるだけであって、必ずとるわけではない。

どのようにして極値をとるかどうか判定するか

求めた点が極値をとるかどうか判定する方法を考える。
$f_x(a,b) = f_y(a,b) = 0$を満たす点$(a,b)$のまわりの$f_x(x,y)$($f_x$$C^2関数$)の値を調べるために、$h^2+k^2=1$を満たす定数$h,k$(すなわち$h,k$$sinθ$$cosθ$の関係にある)に対して、$z(t)=f(a+ht,b+kt)$とおく。
$f_x(a,b) = f_y(a,b) = 0$であるとき、
$\begin{eqnarray*} z'(t)&=&f_x(a+ht,b+kt)\frac{dx}{dt} + f_y(a+ht,b+kt)\frac{dy}{dt}\\ z'(0)&=&f_x(a,b)h + f_y(a,b)k=0 \end{eqnarray*}$
である。$z(t)$にマクローリンの定理を適用すると $(0 < c < x)$
$\begin{eqnarray*} z(t)& = &z(0) + \frac{z'(0)}{1!}t + \frac{z''(0)}{2!}t^2 + \frac{z'''(c)}{3!}t^3\\ z(t)-z(0)& = &\frac{z''(0)}{2!}t^2 + \frac{z'''(c)}{3!}t^3\\ f(a+ht,b+kt)-f(a,b)& = &t^2 (\frac{z''(0)}{2} + \frac{z'''(c)}{6}t) \end{eqnarray*}$
となる。
ここで、$h,k$の値によらず$z''(0) > 0$が成り立てば、$|t|\quad(t\neq0)$を十分小さくとれば$t^3$の項は無視できるので、
$f(a+ht,b+kt)-f(a,b) > 0$
が成り立つ。すなわち、$z=f(x,y)$$(a,b)$で極小値をとる。
同様に任意の$h,k$に対して$z''(0) < 0$ならば、$(a,b)$で極大値をとる。
また、$h,k$の値によって$z''(0)$の符号が変化するならば、極値をとらない。
これらのことから、$z''(0)$の符号を調べれば$z=f(x,y)$$(a,b)$で極値をとるかどうかを判定することができる。

判定法導出

ここで、$A=f_{xx}(a,b)$ , $B=f_{xy}(a,b)$ , $C=f_{yy}(a,b)$とおけば、
$\begin{eqnarray*} z''(0) &=& f_{xx}(a,b)h^2+2f_{xy}(a,b)hk+f_{yy}(a,b)k^2\\ &=& Ah^2+2Bhk+Ck^2 \end{eqnarray*}$
である。
(1)$A\neq0$のとき、
$\quad$$\begin{eqnarray*} z''(0) &=& Ah^2+2Bhk+Ck^2\\ &=& A(h^2+\frac{2B}{A}hk+\frac{C}{A}k^2)\\ &=& A((h+\frac{B}{A}k)^2-(\frac{B}{A}k)^2+\frac{C}{A}k^2)\\ &=& A((h+\frac{B}{A}k)^2-\frac{AC-B^2}{A^2}k^2) \end{eqnarray*}$
$\quad$となる。$H(a,b)=AC-B^2$(これをヘシアンという)とおくと以下が成り立つ。
$H(a,b)=AC-B^2>0$のとき
$\quad$$A>0$ならば、任意の$h,k$にたいして$z''(0)>0$となるから極小である。
$\quad$$A<0$ならば、任意の$h,k$にたいして$z''(0)<0$となるから極大である。
$H(a,b)=AC-B^2<0$のとき
$\quad$$h,k$の値によって$z''(0)$の符号が変化するので、極値はとらない。
$H(a,b)=AC-B^2=0$のとき
$\quad$個々の関数によって極値の有無が異なる。そのため判断できない。
(2)$A=0$のとき
$\quad$$z''(0)=(2Bh+Ck)k$
$\quad$となる。
$B\neq0$の時、$z''(0)$の値は$h,k$によるので極値ではなく、ヘシアンに代入してみても$H(a,b) <0$である。
$B=0$の時、極値かどうかは判断できない。ヘシアンに代入してみても$H(a,b)=0$である。
以上より以下のことが成り立つ。

まとめ

関数$z=f(x,y)$
$\quad$$\quad$$C^2$$\quad$かつ$\quad$$f_x(a,b) = f_y(a,b) = 0$
を満たすとき、$A=f_{xx}(a,b)$ , $B=f_{xy}(a,b)$ , $C=f_{yy}(a,b)$とおけば、次が成り立つ。
(ただし$H(y,x)=f_{xx}f_{yy}-(f_{xy})^2$である。)
$H(a,b)=AC-B^2>0$のとき
$\quad$$A>0$ならば、$z=f(x,y)$は点$(a,b)$で極小値をとる。
$\quad$$A<0$ならば、$z=f(x,y)$は点$(a,b)$で極大値をとる。
$H(a,b)=AC-B^2<0$のとき
$\quad$$z=f(x,y)$は点$(a,b)$で極値をとらない。
$H(a,b)=AC-B^2=0$のとき
$\quad$この方法では判別不可

投稿日:2020117

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Takatom
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