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大学数学基礎解説
文献あり

いろいろな不等式

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三角不等式

三角不等式

$$ \big||x|-|y|\big| \leq |x+y| \leq |x|+|y| $$
左側の等号成立条件は$xy \leq 0$であり,右側の等号成立条件は$xy \geq 0$である。

$$ (\big||x|-|y|\big|)^2-(|x+y|)^2 \\ = (x^2-2|xy|+y^2)-(x^2+2xy+y^2) \\ = -2(|xy|+xy) \\ \leq 0 $$

$$ (|x+y|)^2-(|x|+|y|)^2 \\ = (x^2+2xy+y^2) - (x^2+2|xy|+y^2) \\ = 2(xy-|xy|) \\ \leq 0 $$

イェンセンの不等式(凸不等式)

凸関数

関数$f(x)$が区間$I$上で凸関数(下に凸な関数;上に凹な関数)であるとは,区間$I$上の任意の$x, y$$0\leq\lambda\leq1$に対し,$$\lambda f(x)+(1-\lambda)f(y) \geq f(\lambda x+(1-\lambda)y)\tag{*}$$となることである。また,式$(*)$の不等号の向きが逆である関数を凹関数(上に凸な関数;下に凹な関数)と呼ぶ。

関数$f(x)=x^2$$f(x)=e^x$は凸関数である。関数$f(x)=\sqrt x$$f(x)=\log x$は凹関数である。

イェンセンの不等式

関数$f(x)$の区間$I$上の任意の$x_1, x_2,\cdots, x_n$$\lambda_i\geq0(i=1, 2, \cdots, n), \sum_{i=1}^n\lambda_i=1$に対し,
$$\sum_{i=1}^n\lambda_if(x_i) \geq f(\sum_{i=1}^n\lambda_ix_i)$$
となる。

$n=2$のときは定義そのものである。$n=k$で成り立つと仮定して,$S=\sum_{i=1}^{k}\lambda_if(x_i)$とする。
$$ \sum_{i=1}^{k+1}\lambda_if(x_i) \\ =\sum_{i=1}^{k}\lambda_if(x_i)+\lambda_{k+1}f(x_{k+1}) \\ =S\sum_{i=1}^{k}\frac{\lambda_i}Sf(x_i)+(1-S)f(x_{k+1}) \\ \geq S\sum_{i=1}^{k}f(\frac{\lambda_i}Sx_i)+(1-S)f(x_{k+1}) \\ \geq f(\sum_{i=1}^{k+1}\lambda_ix_i) $$

$\lambda_1, \lambda_2, \cdots, \lambda_n=\frac1n$とすると,
$$\sum_{i=1}^n\frac1nf(x_i) \geq f(\sum_{i=1}^n\frac{x_i}n)$$

平均に関する不等式

相加相乗平均の不等式(AM≧GM)

相加相乗平均の不等式

$n$を正整数,$a_1, a_2, \cdots, a_n$を非負数とするとき,
$$ \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}a_i \geq \sqrt[n]{\prod_{i=1}^{n}a_i} $$
となる。
等号成立条件は$a_1=a_2=\cdots=a_n$である。

$\log x$は凹関数であるから,イェンセンの不等式により
$$ \log \sqrt[n]{\prod_{i=1}^{n}a_i} = \sum_{i=1}^n\frac 1n \log x_i \leq \log\sum_{i=1}^n\frac{x_i}n = \log\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n x_i $$
となるので対数の中を比べると示される。

二乗相加平均の不等式(RM≧AM)

二乗相加平均の不等式

$n$を正整数,$a_1, a_2, \cdots, a_n$を非負数とするとき,
$$ \sqrt{\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}a_i^2} \geq \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}a_i $$
となる。
等号成立条件は$a_1=a_2=\cdots=a_n$である。

$x^2$は凸関数であるから,イェンセンの不等式により示される。

相乗調和平均の不等式(GM≧HM)

相乗調和平均の不等式

$n$を正整数,$a_1, a_2, \cdots, a_n$を正数とするとき,
$$ \sqrt[n]{\prod_{i=1}^{n}a_i} \geq n(\sum_{i=1}^{n}a_i^{-1})^{-1} $$
となる。
等号成立条件は$a_1=a_2=\cdots=a_n$である。

相加相乗平均の不等式の$a_i$$a_i^{-1}$に置き換えると得られる。

重み付き相加相乗平均の不等式

重み付き相加相乗平均の不等式

$a_1, a_2, \cdots, a_n$を非負数,$w_i>(i=1, 2, \cdots, n), \sum_{i=1}^nw_i=1$とするとき,
$$ \sum_{i=1}^{n}w_ia_i \geq \prod_{i=1}^{n}a_i^{w_i} $$
となる。
等号成立条件は$a_1=a_2=\cdots=a_n$である。

イェンセンの不等式を用いて,相加相乗の不等式と同様に示すことができる。

コーシー・シュワルツの不等式

コーシー・シュワルツの不等式

$$ \left(\sum_{i=1}^{n}a_i^2\right)\left(\sum_{i=1}^{n}b_i^2\right) \geq \left(\sum_{i=1}^{n}a_ib_i\right)^2 $$
等号成立条件はベクトル$\boldsymbol{a}=(a_1, a_2, \cdots, a_n)$とベクトル$\boldsymbol{b}=(b_1, b_2, \cdots, b_n)$が平行であることである。

ラグランジュの恒等式

$$ \left(\sum_{i=1}^{n}a_i^2\right)\left(\sum_{i=1}^{n}b_i^2\right) - \left(\sum_{i=1}^{n}a_ib_i\right)^2 \\ = \sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n}a_i^2b_j^2 - \sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n}a_ib_ia_jb_j \\ = \sum_{1\leq i< j\leq n}^{n}(a_ib_j-a_jb_i)^2 \\ \geq 0 $$

ベクトルの内積

$$|\boldsymbol{a}|^2 |\boldsymbol{b}|^2 \geq |\boldsymbol{a}|^2 |\boldsymbol{b}|^2 \cos^2\theta = (\boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b})^2$$
から得られる。

シュールの不等式

シュールの不等式

非負数$x, y, z$と正数$t$に対し
$x^t(x-y)(x-z)+y^t(y-z)(y-x)+z^t(z-x)(z-y) \geq 0$
等号成立条件は$x=y=z$または$x, y, z$のいずれかが0で残り2つが等しいとき。

対称性より,$x \geq y \geq z$としても一般性を失わないので,
$(x-y)(x^t(x-z)-y^t(y-z))+z^t(z-x)(z-y) \geq 0$と変形することにより示される。

参考文献

[1]
鈴木晋一, 代数・解析パーフェクトマスター, 日本評論社, 2017, p48-54
投稿日:202144

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