伊藤清三先生の「ルベーグ積分入門」を読んでいると以下のような論法が証明なしに出てくる。初出は定理4.2。ちょっと複雑なことを言っていて、初見だと確実に面食らう。しかもこの定理、今後出てこない。
任意の$\epsilon > 0$に対し、以下が成立する。
\begin{equation}
A \leq B + \epsilon
\end{equation}
故に
\begin{equation}
A \leq B
\end{equation}
証明は簡単で、もし、$A > B$ ならば $B < B + \epsilon < A$ なる$\epsilon$を取ることができる。当然コレは矛盾しているので $A \leq B$となる。
注意しなければいけないのは、$\epsilon$は$A, B$に無関係に決められる(動かせる)必要がある。$\epsilon$に対して$A, B$を定めるとか、その逆はダメである。
Terence Tao先生の「An Introduction to Measure Theory」の第2部にある「Give yourself an epsilon of room」にもテクニックとして紹介されている。「ルベーグ積分入門」を読む前にこの章を一通り読んだほうがいいんじゃないかな?