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大学数学基礎解説
文献あり

一様有界性原理の簡単な証明

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Sokal [1] による,一様有界性原理のBaireのカテゴリー定理を経由しないシンプルな証明を紹介します.

一様有界性原理

FをBanach空間Xからノルム空間Yへの有界線形作用素の族とする.Fが各点で有界(すなわち,任意のxXに対しsupTFTx<)ならば,Fは一様有界(すなわち,supTFT<)である.

Tをノルム空間Xからノルム空間Yへの有界線形作用素とする.このとき,任意のxXr>0に対し,
supxB(x,r)TxTr
が成立する.ただし,ここで
B(x,r)={xX:xxr}
である.

補題2の証明

xX,r>0とする.三角不等式より,任意のξXに対し,
Tξ=T(12(x+ξ)12(xξ))12(T(x+ξ)+T(xξ))max{T(x+ξ),T(xξ)}
が成立する.ここで両辺のξB(0,r)についての上限をとると,右辺はsupxB(x,r)Txに,左辺はTrになる(補足:右辺の書き換えについては,supξB(0,r)T(x+ξ)=supxB(x,r)Txとなることに注意すればよい.左辺の書き換えについては,作用素ノルムの定義から,T=supξ1Tξ=supξrT(ξr)=1rsupξB(0,r)Tξとなることを用いればよい).

定理1の証明

対偶を示す.すなわち,supTFT=を仮定し,Fが各点で有界でないこと(すなわち,あるxXが存在してsupTFTx=)を示す.まず仮定より,Fから列{Tn}n=1を適当に選び,Tn4nが成立するようにできる.次に,補題2を用いると,点列xnX (n=0,1,2,)を帰納的に,
x0=0,xnxn13n,Tnxn233nTn(n=1,2,)
をみたすように選ぶことができる(補足:x1を定めるときは,補題2をT=T1, x=x0, r=31として適用した後,supの性質を使うとT1x12331T1をみたすx1の存在がいえる.以下帰納的に,xn1まで定まったとき,補題2をT=Tn, x=xn1, r=3nとして適用すると上の条件をみたすxnの存在がいえる).上の条件から,{xn}n=1XのCauchy列になっており,Xの完備性からあるxXに収束する.また,任意のn1に対し,
xxn=limmxmxn=limmj=n+1m(xjxj1)limmj=n+1mxjxj1limmj=n+1m3j=123n
が成立する.これより,
Tnx=Tn((xxn)+xn)TnxnTn(xxn)233nTnTnxxn233nTn123nTn=163nTn163n4n=16(43)n(n)
を得る(補足:一つ目の不等号では三角不等式,二つ目の不等号では条件Tnxn233nTnTn(xxn)Tnxxn,三つ目の不等号ではxxn123n,4つ目の不等号ではTn4nをそれぞれ使った).以上でsupTFTx=が示された.

参考文献

[1]
A. D. Sokal, A Really Simple Elementary Proof of the Uniform Boundedness Theorem, Amer. Math. Monthly, 2011, pp.450--452
投稿日:2021411
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