Radon変換は1917年にJ.Radonによって導入された積分変換である.
Radon変換は波動方程式やFourier解析などと相性が良く,純粋数学の面で重要である. 一方,Radon変換はCT-スキャンや非破壊検査の中心的な道具でもある.
1979年に電子工学者のHounsfieldと応用物理学者のCormackがRadon変換を用いてCT-スキャナーを開発しノーベル生理学・医学賞を受賞したことは数学史的にも意味があることであった.
これ以降,
関数
で定義する. ここで,
定義から, Radon変換は
一般に, Radon変換の計算は容易ではないが, 対称性の高い関数に限っては手計算可能である.
Gauss関数
今, 積分路は
と表すことができる. また,
から, 線素は以下のようになる:
従って,
を得る. Gauss関数の圧倒的対称性により, 角度パラメーターが消失し, かつGauss関数が再び現れたことが分かる.
先ほどX-ray変換という単語が出てきたが, この機会にCT-スキャナーの仕組みを簡単に説明する. もちろん, 筆者はこの話題の専門家ではない.
我々は3次元空間内に存在している. CT-スキャンは被検体を輪切りに撮影するが, その輪切りになった2次元面の密度分布を完全に特定することができれば嬉しい(生物ならば腫瘍などの発見, 物質ならば非破壊検査).
ここでは生物で考えてみよう. 断面における何らかの情報を持った関数を
さて, 強度
という関係で与えられることは認めてほしい(と言っても, これは超基本な常微分方程式の解). すると, 被検体を細かく微小片分割したときのX線の出力強度は,
となることが分かる. 従って, 無限分割の極限で上式は以下に収束する:
すなわち, X線の経路を直線
が導かれた. 右辺に関数
前半はこの定理で終わりにする. この定理はRadon変換のある意味のスライスが元の関数のある線上のFourier変換に一致することを述べている. 証明は簡単だが, Radon変換の強力な武器である.
が成り立つ. ここで,
以下のような直接計算で求まる:
参考文献は以下のノートと, そのノートの参考文献になります.