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大学数学基礎解説
文献あり

twitterに投稿した積分の問題の解説

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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathrm{div}} \newcommand{division}[0]{÷} \newcommand{grad}[0]{\mathrm{grad}\ } \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rot}[0]{\mathrm{rot}\ } \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

はじめに

今回は先日twitterに投稿した問題の解説をしたいと思います。
問題はこちらです。

$\Large【問題】$
$(1)$$a$$a>1$なる実数,$n$を整数とする.
  $\displaystyle \lim_{n\to\infty} |a^n-1|^\frac{1}{n}$
  を求めよ.
$(2)$$r>1$なる実数$r$に対し,
  $\displaystyle \int_0^{2\pi}\log(r+\cos{x})dx$
  を求めよ.

$(1)$の解説

解説です.
まずは$(1)$から.$(2)$に比べると$(1)$は簡単なのではないでしょうか.
$a>1$なので,十分大きい$n$$a^n-1\fallingdotseq a^n$
とわかります.そこで,十分大きい$n$
$a^{n-1}< a^n-1< a^n$
であることを示します.
右側の不等号は明らか.
左側の不等号は$a-1>0$$n\to\infty$$a^{n-1}\to\infty$に注意すると,十分大きい$n$
$(a-1)a^{n-1}>1$
なので十分大きい$n$で成立します.
これと$a>0$より,十分大きい$n$に対し,
$a^{1-\frac{1}{n}}<|a^n-1|^\frac{1}{n}< a$
であり,$n\to\infty$で最左辺,最右辺は共に$a$に収束するので,はさみうちの原理より,
$\displaystyle{\lim_{n\to\infty}|a^n-1|^\frac{1}{n}=a}$

$(2)$の解説

積分を直接解こうとしても置換積分や部分積分ではうまくいきません.
そこで,$(1)$が使えないかと考えます.
$|a^n-1|^\frac{1}{n}$のままでは扱いづらいので,自然対数をとってみます.
$\displaystyle{\log{(|a^n-1|^\frac{1}{n})}=\frac{1}{n}\log{|a^n-1|}}$
ですが,式に被積分関数にある$\cos$がまだ出てないのでどうにか$\cos$を出現させたいと考えると,$a^n-1$が因数分解できることに気づきます.
$($ここがかなり難しい$)$
$x^n-1=0$の解が$\displaystyle{x=\cos{(\frac{2k\pi}{n})}+i\sin{(\frac{2k\pi}{n})}}$ $(1\le k\le n,kは整数)$
なので,
$\displaystyle{\log(|a^n-1|)\\ =\sum_{k=1}^{n}\log(|a-\cos(\frac{2k\pi}{n})-i\sin(\frac{2k\pi}{n})|)}$
よって,
$\displaystyle{\log(|a^n-1|^2)\\ =\sum_{k=1}^{n}\log(a^2+1-2a\cos(\frac{2k\pi}{n}))}$
なので,
$\displaystyle{2\log(|a^n-1|^\frac{1}{n})\\ =\frac{1}{2\pi}\frac{2\pi}{n}\sum_{k=1}^{n}\log(a^2+1-2a\cos(\frac{2k\pi}{n}))}$
です.この式の両辺で$n\to\infty$の極限をとると,$\log$は連続なので,
$\displaystyle{2\log{a}=\frac{1}{2\pi}\int_{0}^{2\pi}\log(a^2+1-2a\cos x)dx}$
よって
$\displaystyle{4\pi\log{a}\\ =\int_{0}^{2\pi}\log(a^2+1-2a\cos x)dx \\ =2\pi\log{2a}+\int_{0}^{2\pi}\log(\frac{a^2+1}{2a}-\cos x)dx} $
したがって
$\displaystyle{2\pi\log{\frac{a}{2}}=\int_{0}^{2\pi}\log(\frac{a^2+1}{2a}-\cos x)dx}$
です.
ここで,$\displaystyle\frac{a^2+1}{2a}=r$とおくと,
相加相乗平均の不等式と$a\neq1$より$r>1$がわかり,それと$a>1$より$a=r+\sqrt{r^2-1}$なので任意の$r>1$なる実数$r$に対し,$\displaystyle\frac{a^2+1}{2a}=r$なる実数$a$で,$a>1$であるものが存在します.
よって,任意の$r>1$なる実数$r$に対し,
$\displaystyle{\int_{0}^{2\pi}\log(r-\cos x)dx\\ ={2\pi\log{(\frac{r+\sqrt{r^2-1}}{2})}}}$
であり,$\cos$の周期性より$\displaystyle{\int_{0}^{2\pi}\log(r-\cos x)dx\\ =\int_{-\pi}^{\pi}\log(r-\cos x)dx}$
で,ここで$x=\pi-\theta$と置換すると
$\displaystyle{\int_{-\pi}^{\pi}\log(r-\cos x)dx\\ =\int_{0}^{2\pi}\log(r+\cos \theta)d\theta}$
ゆえに
$\displaystyle{\int_{0}^{2\pi}\log(r+\cos x)dx\\ ={2\pi\log{(\frac{r+\sqrt{r^2-1}}{2}})}}$

おわりに

今回の問題は「和の極限」→「積分」ではなく「積分」→「和の極限」として解く問題でした。
普段と逆の手順なのでなかなか思いつくのが難しかったんではないでしょうか。
ちなみに$(1)$$2012$京大理系数学$\fbox{1}(1)$に類題があります。
最後まで読んでくださりありがとうございました。

参考文献

投稿日:2021419
OptHub AI Competition

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Qoo
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