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大学数学基礎解説
文献あり

Radon変換(後半)

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Radon変換(後半)

さて, Radon変換の逆変換公式を導こう. 前半, 後半に分けたのは後半の内容が難しいからであって, 面倒臭かった訳ではない. 多分.

前回のあらすじと補足

fS(Rn)のRadon変換は, 超平面α:x,e=pに対して,
R[f](e,p)=αf(x)dσ(x)
で定まるものであった. 文献によっては, これでもかと簡単に
R[f](e,p)=αf
と書かれたりもする. 超関数の概念を用いれば, Radon変換は1次元のデルタ関数を用いて,
R[f](e,p)=Rnf(x)δ(x,ep)dx
と書いてもよい.

双対Radon変換

Radon変換の双対を考えるが, Fourier変換のような対称性は無いことに注意せよ.

双対Radon変換

関数φ:Sn1×RCに対して, xRnにおける双対Radon変換, またはback projection
R[φ](x)=1ΩnSn1φ(e,x,e)dγ(e),(xRn)
で定義する. ここで, dγSn1上の測度である.

関数の定義域の条件は少し話がズレるのでここでは省略し, 参考文献に譲る. 少なくとも, この記事内においてはマズいことは起きない.

R[R[f]](x)=Ωn1ΩnRnf(y)|xy|dy
が成り立つ.

O(n)を直交群する. O(n)はコンパクトLie群であるので, その正規化されたHaar測度をdgと定めておく:
O(n)dg=1.

|x|=rを満たすxRnを引数に持つ関数fの回転平均
O(n)f(gx)dg
を考えよう. 以下のような関係,
O(n)f(gx)dg=1ΩnSn1f(re)dγ(e)
があるので, 双対Radon変換は固定したベクトルe0Rnに対して,
R[φ](x)=1ΩnSn1φ(e,x,e)dγ(e)=O(n)φ(ge0,x,ge0)dg
と書くことが出来る.

従って, Radon変換の双対Radon変換は,
R[R[f]](x)=O(n)R[f](ge0,x,ge0)dg=O(n)y,ge0=x,ge0f(y)dydg
となるが, 積分領域に注意すれば, 以下を得る:
R[R[f]](x)=O(n)y{ge0}f(x,ge0ge0+y)dydg.

次に, x=x,ge0ge0+x,ge0ge0なるxの直交分解から
O(n)y{ge0}f(x,ge0ge0+y)dydg=O(n)y{ge0}f(xx,ge0ge0+y)dydg
となるが, x,ge0ge0{ge0}の元であることに留意すると, 以下のように式変形が出来る:

R[R[f]](x)=O(n)y{ge0}f(x+y)dydg=O(n)zRn1f(x+gz)dzdg.
第一積分を極座標表示して, Fubiniの定理を用いると,
R[R[f]](x)=O(n)0Sn2f(x+rge)rn2dγ(e)drdg=0Sn2O(n)f(x+rge)rn2dgdγ(e)dr
となり, Sn1上の積分と, 直交座標表示から,
R[R[f]](x)=1Ωn0Sn2Sn1f(x+re)rn2dγ(e)dγ(e)dr=1Ωn0{Sn2dγ(e)Sn1f(x+re)rn2dγ(e)}dr=Ωn1Ωn0Sn1f(x+re)rn2dγ(e)dr=Ωn1ΩnRnf(x+y)|y|dy
を得て, 証明が完了する.

O(n)SO(n)の違いについて

証明内ではO(n)を用いて議論を進めたが, 幾何学的にはSO(n)を用いた方が良いと思われる. O(n)SO(n)は偶数次元と奇数次元で挙動が変わってくることが知られているが, もしダメなときは教えてほしい.

逆変換公式

Rieszポテンシャル

fS(Rn)に対して, α>0のときのαRieszポテンシャルIαf
Iαf(x)=f1cn(α)||nα(x)=1cn(α)Rnf(y)|xy|nαdy
なる特異積分で定義する. ここで, 定数cn(α)は,
cn(α)=2απn/2Γ(α/2)Γ((nα)/2)
である.

Rieszポテンシャルとは

Rieszポテンシャルは見ての通り特異積分作用素であるが, fS(Rn)ならばwell-definedであることが示される. さらに, Rieszポテンシャルは
ΔIαf=Iα2f
を満たす. すなわち, ラプラシアンの逆作用素の1つの表現を与えている.

さて, Rieszポテンシャルを用いれば, 補題1は,
R[R[f]](x)=cn(n1)Ωn1ΩnIn1f(x)
と書くことが出来る. この係数を計算すると, 以下が得られる:
cn(n1)Ωn1Ωn=2n1πn/2Γ((n1)/2)Γ(1/2)2π(n1)/2Γ((n1)/2)2πn/2Γ(n/2)=2n1πn12Γ(n/2)Γ(1/2)=2n1πn22Γ(n2)

Radon inversion formula

f=1Cn(Δ)n12R[R[f]]
が成り立つ. ここで, 定数Cnは以下で定義されるものとする:
Cn=(4π)n12Γ(n2)Γ(12).

Rieszポテンシャルによる表現,
(Δ)pf=I2pf
を用いれば, 補題1の結果を
R[R[f]](x)=2n1πn22Γ(n2)In1f(x)=2n1πn22Γ(n2)(Δ)n12f(x)
と書くことが出来る. 従って, 擬微分作用素の意味で(Δ)n12を作用させれば,
Δn12R[R[f]](x)=2n1πn22Γ(n2)(Δ)n12(Δ)n12f(x)=Cnf(x)
となり, 証明が完了する.

これで, 目標であったRadon変換の逆変換公式が得られた.

参考文献は以下のノートと, そのノートの参考文献になります.

参考文献

投稿日:2021422
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  2. 前回のあらすじと補足
  3. 双対Radon変換
  4. 逆変換公式
  5. 参考文献