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大学数学基礎解説
文献あり

[Test投稿1/2] modular invariantまで

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(練習。少々雑です。)
まず, 次の二つの記号を定義する.

  1. 複素上半平面をH={x+iyy>0}とおく.
  2. Γ:=SL2(Z)={[abcd]adbc=1,a,b,c,dZ}

以後Hの点の記号としてτを, Γの元の記号としてγをしばしば用い, 断りなければγ=[abcd]であるものとする.
HにはΓが一次分数変換により作用する: γ=[abcd] , τHのとき, γ(τ):=aτ+bcτ+d.

kを4以上の偶数とし, Gkを次で定義する.
Gk(τ)=(c,d)Z2{(0,0)}1(cτ+d)k
これをウェイトkのアイゼンシュタイン級数という.

上の級数は広義一様絶対収束することが知られており, したがってH上の正則函数を定める.
一般に関数f:HCがウェイトkZのモジュラー形式であるとは, 次の3条件を満たすことをいう.

  1. fH上正則.
  2. f(γ(τ))=(cτ+d)kf(τ)
  3. Imτならばf(τ)は有界.

Gkはウェイトkのモジュラー形式であることが知られている. ウェイトkのモジュラー形式全体の集合をMk(Γ)と書き, M(Γ)=kZMk(Γ)は自然に次数付C代数である.

Γは実は[1101],[0110]の2元で生成できるため, モジュラー性の2.はこの2つの元に対して確認すれば十分である. 特に一つ目の生成元に対しては, 確認するべきことは単にf(τ+1)=f(τ)というZ周期性である. Gkに関して2.を示すとき, 総和の取り方を変える必要があるので, 総和の変形に絶対収束性を必要とするであろう.

g2(τ)=60G4(τ),g4(τ)=140G6(τ)とおき, Δ(τ)=g2(τ)327g3(τ)2とおく. g23,g32M12(Γ)なのでΔM12(Γ)である. ΔH上では0にならないことが知られており, このとき次が定義される.
j(τ)=1728g2(τ)3Δ(τ)
これをモジュラー不変量という. jはウェイト12のものをウェイト12で割っているので, このような名前がついている. (ただし モジュラー性の条件の3.は満たされなくなる)

次回は次の問題を考える.

Diamond-Shurman, Ex1.1.9

j:HCは全射であることを示せ.

参考文献

[1]
Fred Diamond, Jerry Shurman, A First Course in Modular Forms
投稿日:2021424
OptHub AI Competition

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投稿者

京大作問サークル

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