(練習。少々雑です。)
まず, 次の二つの記号を定義する.
以後$\mathcal{H}$の点の記号として$\tau$を, $\Gamma$の元の記号として$\gamma$をしばしば用い, 断りなければ$\gamma = \begin{bmatrix} a&b\\c&d \end{bmatrix}$であるものとする.
$\mathcal{H}$には$\Gamma$が一次分数変換により作用する: $\gamma = \begin{bmatrix} a&b\\c&d \end{bmatrix}$ , $\tau \in \mathcal{H}$のとき, $\gamma(\tau) := \dfrac{a\tau + b}{c\tau + d}$.
$k$を4以上の偶数とし, $G_k$を次で定義する.
\begin{equation}
G_k(\tau)=\sum_{(c,d)\in \mathbb{Z}^2-\{(0,0)\}} \dfrac{1}{(c\tau + d)^k}
\end{equation}
これをウェイト$k$のアイゼンシュタイン級数という.
上の級数は広義一様絶対収束することが知られており, したがって$\mathcal{H}$上の正則函数を定める.
一般に関数$f:\mathcal{H}\to \mathbb{C}$がウェイト$k\in \mathbb{Z}$のモジュラー形式であるとは, 次の3条件を満たすことをいう.
$G_k$はウェイト$k$のモジュラー形式であることが知られている. ウェイト$k$のモジュラー形式全体の集合を$\mathcal{M}_{k}(\Gamma)$と書き, $\mathcal{M}(\Gamma) = \oplus_{k\in \mathbb{Z}} \mathcal{M}_{k}(\Gamma)$は自然に次数付$\mathbb{C}$代数である.
$\Gamma$は実は$\begin{bmatrix} 1&1\\0&1 \end{bmatrix}, \begin{bmatrix} 0&-1\\1&0 \end{bmatrix}$の2元で生成できるため, モジュラー性の2.はこの2つの元に対して確認すれば十分である. 特に一つ目の生成元に対しては, 確認するべきことは単に$f(\tau + 1) = f(\tau)$という$\mathbb{Z}$周期性である. $G_k$に関して2.を示すとき, 総和の取り方を変える必要があるので, 総和の変形に絶対収束性を必要とするであろう.
$g_2(\tau) = 60G_4(\tau), g_4(\tau) = 140G_6(\tau)$とおき, $\Delta(\tau) = g_2(\tau)^{3} - 27g_3(\tau)^2$とおく. $g_2^{3},g_3^{2}\in \mathcal{M}_{12}(\Gamma)$なので$\Delta\in \mathcal{M}_{12}(\Gamma)$である. $\Delta$は$\mathcal{H}$上では0にならないことが知られており, このとき次が定義される.
\begin{equation}
j(\tau) = 1728\dfrac{g_2(\tau)^{3}}{\Delta(\tau)}
\end{equation}
これをモジュラー不変量という. $j$はウェイト12のものをウェイト12で割っているので, このような名前がついている. (ただし モジュラー性の条件の3.は満たされなくなる)
次回は次の問題を考える.
$j:\mathcal{H}\to \mathbb{C}$は全射であることを示せ.