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最大最小問題の整理

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最大最小問題の原理

最大値を求める問題には

  • 知りたい値域を直接求める。
  • 求めたい最大値がなんとなくわかるならそれを仮定して、仮定した最大値に一致し得ることと仮定した最大値を上回り得ないことを示す。

などの手段がある。
(最小の場合は省略)

原点Oを中心とする半径1の円Dと3点A(1,3),B(2,0),C(5,1)を頂点とする三角形Tがある。Tの周および内部を動く点Qと点Pの距離の最小値をm(P)とする。Dの周をPが動くとき、m(P)の最大値を求めよ。

解法1:問題の表現どおりに素直に考察します。

2直線
\begin{eqnarray} y&=&\frac{1}{3}(x-2)\tag{1}\\ y&=&-3(x-2)\tag{2} \end{eqnarray}
は直交し、特に直線$(1)$のみDと交わることなどから、Pについて直線$(1)$を基準に場合分けするとよさそうです。

$P(\cos\theta,\sin\theta)(0\le\theta<2\pi)$とおける。
直線$(1)$に対してOとPが反対側にあるための必要十分条件は
\begin{eqnarray} \sin\theta&<&\frac{1}{3}(\cos\theta-2)\\ \sqrt{10}\sin(\theta-\alpha)&<&-2 \end{eqnarray}
$\displaystyle\alpha+\frac{3}{2}\pi-\beta<\theta<\alpha +\frac{3}{2}\pi+\beta$
ただし、
\begin{eqnarray} \cos\alpha&=&\frac{3}{\sqrt{10}}\\ \sin\alpha&=&\frac{1}{\sqrt{10}}\\ \cos\beta&=&\frac{2}{\sqrt{10}}\\ \sin\beta&=&\frac{\sqrt{6}}{\sqrt{10}} \end{eqnarray}
このとき
Pから2直線$(1),(2)$に下ろした垂線の足はそれぞれTの辺CB,ABをB側に伸ばした延長にあるので2点P,Qの距離はQ=Bで最小となり
\begin{eqnarray} {m(P)}^2&=&(\cos\theta-2)^2+\sin^2\theta\\ &=&5-4\cos\theta \end{eqnarray}
一方で、$\displaystyle0\le\theta\le\alpha+\frac{3}{2}\pi-\beta, \alpha +\frac{3}{2}\pi+\beta\le\theta<2\pi$のときPから直線$(2)$に下ろした垂線の足は辺AB上にあるので、2点P,Qの距離はQがこの足に一致するときに最小となり
\begin{eqnarray} {m(P)}^2&=&\frac{(3\cos\theta+\sin\theta-6)^2}{3^2+1^2} \end{eqnarray}


${m(P)}^2$$\theta$の式に表すことができましたが、前者と後者を総合して、例えばグラフを用いて論じるのは面倒です。

$\theta$の変域$m(P)$の描画${m(P)}^2$の描画
$\displaystyle\alpha+\frac{3}{2}\pi-\beta<\theta<\alpha+\frac{3}{2}\pi+\beta$
$\displaystyle0\le\theta\le\alpha+\frac{3}{2}\pi-\beta,\alpha+\frac{3}{2}\pi+\beta\le\theta<2\pi$

解法2:解を推測し、その根拠を後から説明します。

以降2点X,Yの距離を$\overline{XY}$と表すことがあります。

(A)

$\displaystyle R\left(-\frac{3}{\sqrt{10}},-\frac{1}{\sqrt{10}}\right),S\left(\frac{9}{5},\frac{3}{5}\right)$とする。RはD上の点で、SはTの周または内部の点である。
$1.$線分OSの長さは$\displaystyle\frac{3}{5}\sqrt{10}$だから、線分PSの長さは3点P,O,Sが一直線上にある、つまりP=Rのときに最大値$\displaystyle\frac{3}{5}\sqrt{10}+1$をとる。
$2.$P=Rのとき、Pは$\displaystyle y\le-3(x-2),y\ge\frac{1}{3}(x-2)$を満たすので線分PQの長さはQ=Sで最小となる。
以上の事実より、$m(P)$の最大値は、$\displaystyle\frac{3}{5}\sqrt{10}+1$である。


(A)においてSは線分PQの長さが最大となるときのQです。Qを固定してQ=Sとする、つまりQの可動域をSのみとしてPが動くとき、m(P)の最大値は1のようにして容易に求められます。本問ではQはTの周および内部を動きますが、SはTの周または内部にあるので、任意のPで、Sを含めあるQが$\overline{PQ}\le \overline{PS}$を満たします。問題にあるとおりm(P)は$\overline{PQ}$の最小値なので$m(P)\le \overline{PS}$です。$\overline{PS}$がm(P)を抑えてm(P)の上限を確定させています。これをまとめると「任意のPで$m(P)\le \overline{PS}\le \overline{RS}$が成立する」となります。各等号は右の成立下で左の成立を2のように確認できます。しかし、Qの仮の可動域次第ではこの考え方は使えません。

(B)

(1,2(A)の表現を借ります。)
$3.$Oと直線$(2)$の距離は$\displaystyle\frac{3}{5}\sqrt{10}$だから、Qが直線(2)上をくまなく動く場合線分PQの長さは$\displaystyle P\left(-\frac{3}{\sqrt{10}},-\frac{1}{\sqrt{10}}\right)$およびQ=Sのときに最大値$\displaystyle\frac{3}{5}\sqrt{10}+1$をとる。
$4.$...?


Pから直線$(2)$に下ろした垂線の足をHとします。Qが直線(2)上をくまなく動くときはあるPで$m(P)\ge \overline{PH}$が成立するので、$\overline{PQ}$が最大である根拠に欠けます。

解法Qの仮の可動域左のとき$\overline{PQ}$が最大である根拠
(A)S$\forall~P\in~D,m(P)\le\overline{PS}$$\mathcal{OK}$
(B)直線$(2)$$\exists~P\in~D,m(P)\ge\overline{PH}$
$\mathcal{NG}$(左の事実のために$\forall~P\in~D,m(P)\le\overline{RS}$を指摘出来ない)

解法2の補足

2の考え方を使ったときの利点

場合分けが要らない。

これはm(P)そのものを直接考察しないことによる効果です。

2の考え方を使うための留意点

先に解の検討をある程度つけておく必要がある。

本問ではm(P)が最大となるときのP,Qを手がかりに(A)を書きました。一般には図に書けば容易に推測できるようなものである場合に限るようです。

「抑え」を自分で用意する必要がある。

本問ではQの仮の可動域をSのみとしたおかげで任意のPで$m(P)\le \overline{PS}\le \overline{RS}$が成立し、これがP=Rのときm(P)が最大である根拠になりました。一般には問われた値が最大/最小である根拠になるよう意識しつつ、変域を単純なものに置き換えることで場合分けを避けて一元的な不等式による説明ができるとよいでしょう。

コメント

言葉の力を過信した結果、2(A)の表現はさすがに短くなりすぎていると思います。ここでは言葉の意味と文脈からして$m(P)\le \overline{PS}\le \overline{RS}$は当然だと考えたのでその後述にまとめました。

投稿日:202152

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記事の方針 ・一般に「上手い」とされている操作を取り上げ、考える者の能力と照らし合わせその理由を解き明かす。

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