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作用素・双線形形式・2次形式の関係について

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作用素・双線形形式・2次形式の関係について

準備

定義1 (エルミート作用素)

$H$ を複素ヒルベルト空間, $A \colon H\to H$ を線形作用素とする. A がエルミート(Hermitian)であるとは
$$ \langle Ax,y\rangle=\langle x,Ay\rangle\ \ (\forall x,y\in H) $$
が成り立つことである.

定義2 (自己共役作用素)

$H$ を複素ヒルベルト空間, $A \colon H\to H$ を線形作用素とする. A がエルミートかつ有界であるとき $A$自己共役(self-adjoint)であるという.

注意

上に明記されていない用語の定義は全て"Introduction to Hilbert Spaces" の定義に従うものとする.

本題

設定

$H$ を複素ヒルベルト空間, $A,B \colon H\to H$ を線形作用素とする. 双線形形式 $\phi_A,\phi_B\colon H\times H\to\mathbb{C}$
$$ \phi_A(x,y)=\langle Ax,y\rangle \\ \phi_B(x,y)=\langle Bx,y\rangle $$
によって定め, $\Phi_A, \Phi_b$ をそれぞれ $\phi_A, \phi_B$ の2次形式とする.

定理3 (相当)

以下の1,2,3 は同値である:

  1. $A=B$
  2. $\phi_A=\phi_B$
  3. $\Phi_A = \Phi_B$

(証明)

1⇨2: 明らか.

2⇨3: 明らか.

3⇨2: "Introduction to Hilbert Spaces" Theorem 4.3.8

2⇨1: $\phi_A=\phi_B$ であると仮定すると, 任意の $x,y \in H$ に対して $ \langle Ax,y\rangle =\langle Bx,y\rangle $ が成り立つ. 任意の $x\in H$ に対して
$$ \begin{align*} \|Ax-Bx\|^2 &=\langle Ax-Bx,Ax-Bx\rangle\\&=\langle Ax,Ax\rangle-\langle Ax,Bx\rangle-\langle Bx,Ax\rangle+\langle Bx,Bx\rangle\\ &=\langle Ax,Ax\rangle-\langle Bx,Bx\rangle-\langle Ax,Ax\rangle+\langle Bx,Bx\rangle\\ &=0 \end{align*} $$

定理4 (有界性)

以下の1,2,3は同値である:

  1. $A$ 有界である
  2. $\phi_A$ は有界である
  3. $\Phi_A$ は有界である

(証明)

1⇨2: "Introduction to Hilbert Spaces" Definition 4.3.5 の下

2⇨1: $\phi_A$ は有界と仮定するとある $K>0$ が存在して任意の $x,y \in H$ $ に対して|\langle Ax,y\rangle|\leq K\|x\|\|y\|$ が成り立つ.

よって任意の $x\in H$ に対して $\|Ax\|^2=\langle Ax,Ax\rangle \leq K\|x\|\|Ax\|$ が成り立つ. よって $\|Ax\|\leq K\|x\|$ となるから $A$ は有界である.

2⇨3: "Introduction to Hilbert Spaces" Theorem 4.3.10

3⇨2: "Introduction to Hilbert Spaces" Theorem 4.3.10

定理5 (自己共役・対称性)

以下の1,2,3は同値である:

  1. $A$ は自己共役である
  2. $\phi_A$ はsymmetricである
  3. $\Phi_A$ は実である

(証明)

1⇨2: $A$ が自己共役のとき任意の$x,y\in H$ に対して
$$ \phi_A(x,y)=\langle Ax,y\rangle=\langle x,Ay\rangle =\overline{\langle Ay,x\rangle}=\overline{\phi_A(y,x)} $$

よって $\phi_A$ はsymmetricである.

2⇨1 (Helinger-Toeplitz): $\phi_A$ がsymmetricであると仮定すると $\langle Ax,y\rangle =\overline{\langle Ay,x\rangle }=\langle x,Ay\rangle $ が成り立つ. よって $A$ はエルミートである. 次に $A$ が有界であることを言いたい. $B$$H$ の単位球面として各 $x\in B$ に対して線形汎関数 $f_x\colon B\to \C$
$$ f_x(y)=\langle y,Ax\rangle $$

によって定義する. $A$がエルミートであることより任意の $y\in B$ に対して
$$ \sup_{x\in B}|f_x(y)|=\sup_{x\in B}|\langle y,Ax\rangle|=\sup_{x\in B}|\langle Ay,x\rangle|\leq \|Ay\|<\infty $$
が成り立つから, 一様有界性の原理(Introduction to Hilbert Spaces :Thm 1.5.13) より
$$ \sup_{x\in B}\sup_{y\in B}|\langle Ax,y\rangle|<\infty $$
が成り立つ. 従って
$$ (\sup_{x\in B}\|Ax\|)^2\leq\sup_{x\in B}\|Ax\|^2=\sup_{x\in B}|\langle Ax,Ax\rangle|\leq \sup_{x\in B}\sup_{y\in B}|\langle Ax,y\rangle |<\infty $$
となるから $A$ が有界であることが示された.

2⇨3, 3⇨2: (Introduction to Hilbert Spaces :Thm 4.3.9)

定理6 (正定値性)

以下の1,2,3は同値である:

  1. $A$ はpositiveである
  2. $\phi_A$ はpositiveである
  3. $\Phi_A$ はpositiveである

(証明)

1⇨3: 定義より明らか.

3⇨1: $\Phi_A$ がpositiveであるとすると $\Phi_A$ は実であるから, 定理5より $A$ は自己共役である. また任意の $x\in H$ に対して $\langle Ax,x \rangle \geq 0$ が成り立つから $A$ はpositive であることが示された.

2⇨3: 定義より明らか.

3⇨2: 定義より明らか.

投稿日:202152

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投稿者

「音の現象」を数学的に検証することに興味を持っています. 微分作用素の固有値問題に対する計算機援用証明について研究しています.

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