$H$ を複素ヒルベルト空間, $A \colon H\to H$ を線形作用素とする. A がエルミート(Hermitian)であるとは
$$
\langle Ax,y\rangle=\langle x,Ay\rangle\ \ (\forall x,y\in H)
$$
が成り立つことである.
$H$ を複素ヒルベルト空間, $A \colon H\to H$ を線形作用素とする. A がエルミートかつ有界であるとき $A$ は自己共役(self-adjoint)であるという.
上に明記されていない用語の定義は全て"Introduction to Hilbert Spaces" の定義に従うものとする.
$H$ を複素ヒルベルト空間, $A,B \colon H\to H$ を線形作用素とする. 双線形形式 $\phi_A,\phi_B\colon H\times H\to\mathbb{C}$ を
$$
\phi_A(x,y)=\langle Ax,y\rangle \\
\phi_B(x,y)=\langle Bx,y\rangle
$$
によって定め, $\Phi_A, \Phi_b$ をそれぞれ $\phi_A, \phi_B$ の2次形式とする.
以下の1,2,3 は同値である:
(証明)
1⇨2: 明らか.
2⇨3: 明らか.
3⇨2: "Introduction to Hilbert Spaces" Theorem 4.3.8
2⇨1: $\phi_A=\phi_B$ であると仮定すると, 任意の $x,y \in H$ に対して $ \langle Ax,y\rangle =\langle Bx,y\rangle $ が成り立つ. 任意の $x\in H$ に対して
$$
\begin{align*}
\|Ax-Bx\|^2 &=\langle Ax-Bx,Ax-Bx\rangle\\&=\langle Ax,Ax\rangle-\langle Ax,Bx\rangle-\langle Bx,Ax\rangle+\langle Bx,Bx\rangle\\
&=\langle Ax,Ax\rangle-\langle Bx,Bx\rangle-\langle Ax,Ax\rangle+\langle Bx,Bx\rangle\\
&=0
\end{align*}
$$
以下の1,2,3は同値である:
(証明)
1⇨2: "Introduction to Hilbert Spaces" Definition 4.3.5 の下
2⇨1: $\phi_A$ は有界と仮定するとある $K>0$ が存在して任意の $x,y \in H$ $ に対して|\langle Ax,y\rangle|\leq K\|x\|\|y\|$ が成り立つ.
よって任意の $x\in H$ に対して $\|Ax\|^2=\langle Ax,Ax\rangle \leq K\|x\|\|Ax\|$ が成り立つ. よって $\|Ax\|\leq K\|x\|$ となるから $A$ は有界である.
2⇨3: "Introduction to Hilbert Spaces" Theorem 4.3.10
3⇨2: "Introduction to Hilbert Spaces" Theorem 4.3.10
以下の1,2,3は同値である:
(証明)
1⇨2: $A$ が自己共役のとき任意の$x,y\in H$ に対して
$$
\phi_A(x,y)=\langle Ax,y\rangle=\langle x,Ay\rangle =\overline{\langle Ay,x\rangle}=\overline{\phi_A(y,x)}
$$
よって $\phi_A$ はsymmetricである.
2⇨1 (Helinger-Toeplitz): $\phi_A$ がsymmetricであると仮定すると $\langle Ax,y\rangle =\overline{\langle Ay,x\rangle }=\langle x,Ay\rangle $ が成り立つ. よって $A$ はエルミートである. 次に $A$ が有界であることを言いたい. $B$ を $H$ の単位球面として各 $x\in B$ に対して線形汎関数 $f_x\colon B\to \C$ を
$$
f_x(y)=\langle y,Ax\rangle
$$
によって定義する. $A$がエルミートであることより任意の $y\in B$ に対して
$$
\sup_{x\in B}|f_x(y)|=\sup_{x\in B}|\langle y,Ax\rangle|=\sup_{x\in B}|\langle Ay,x\rangle|\leq \|Ay\|<\infty
$$
が成り立つから, 一様有界性の原理(Introduction to Hilbert Spaces :Thm 1.5.13) より
$$
\sup_{x\in B}\sup_{y\in B}|\langle Ax,y\rangle|<\infty
$$
が成り立つ. 従って
$$
(\sup_{x\in B}\|Ax\|)^2\leq\sup_{x\in B}\|Ax\|^2=\sup_{x\in B}|\langle Ax,Ax\rangle|\leq \sup_{x\in B}\sup_{y\in B}|\langle Ax,y\rangle |<\infty
$$
となるから $A$ が有界であることが示された.
2⇨3, 3⇨2: (Introduction to Hilbert Spaces :Thm 4.3.9)
以下の1,2,3は同値である:
(証明)
1⇨3: 定義より明らか.
3⇨1: $\Phi_A$ がpositiveであるとすると $\Phi_A$ は実であるから, 定理5より $A$ は自己共役である. また任意の $x\in H$ に対して $\langle Ax,x \rangle \geq 0$ が成り立つから $A$ はpositive であることが示された.
2⇨3: 定義より明らか.
3⇨2: 定義より明らか.