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カルダノの公式を使った三乗根号(立方根)外し問題の作成

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外が三乗根である二重根号を開く問題との出会いと疑問

a+bc3の三乗根を外す問題とその解法を見たとき、数値の設定によっては高校生にも解きやすい問題を作れそうだと思い、覚書として記事を作ります。

[問]
5+2133
の根号を外せ

[解]
u=5+2133,v=52133
とする。このとき、t=u+vとおくと
t3=u3+v3+3uv(u+v)=109tt3+9t+10=0
t=1のとき左辺は0になるので因数定理より
(t+1)(t2t+10)=0
t=1,1±39i2
ここでtRよりt=1なので、
{u+v=1uv=3
を満たす。従って、u,vは次の二次方程式を満たす:
s2+s3=0
s=1±132
ここで、5+213>0u=1+132
よって
5+2133=1+132

この解法を見たとき、

  • なぜ5+2133+52133を考えるのか

  • なぜ52133を足しているのか

等について疑問を抱きました。初めはピンときませんでしたが、実は三次方程式の解の公式としてよく知られているカルダノの公式を導出する際に似たことをしていることを思い出したため、カルダノの公式と比較しながら考えてみることにしました。今回の記事ではカルダノの公式の導出の一部を用いるだけなので、読み飛ばしていただいてもかまいません。

カルダノの公式の導出

カルダノの公式の導出

ax3+bx2+cx+d=0の解の公式は両辺をaで割ることによってx3+bax2+cax+da=0を得る。ここで、
x=yb3a
とおき代入することで二次の項を消去できるため次の三次方程式を得る:
y3+py+q=0
ここで、y=u+vとおき整理することで
(u+v)3+p(u+v)+q=0u3+v3+(3uv+p)(u+v)+q=0
このとき、u,vの値が下の連立方程式を満たすように取ればu3+v3+(3uv+p)(u+v)+q=0の解の候補を導出できる。

{u3+v3=quv=p3
{u3+v3=qu3v3=(p3)3
上の連立方程式から(tu3)(tv3)=0を考えることで、
t2+qt(p3)3=0t=q±q2+4(p3)32C
ここで、
t1=q+q2+4(p3)32,t2=qq2+4(p3)32
とすると、t1t2Ru3v3Rが分かるので、ω=1+3i2を用いて
uvRuvRωuvRω2
となるが、これはuv=p3よりuvRであることが分かる。従って、
u1=t13=q+q2+4(p3)323,v1=t23=qq2+4(p3)323
とおくと、u,vの組合わせ(u,v)として適しているのは、(u1,v1),(u1ω,v1ω2),(u1ω2,v1ω)となる。
従って、
y=t13+t23,t13ω+t23ω2,t13ω2+t23ω
の3通りが解となる。

上記がカルダノの公式の導出となります。

カルダノの公式と問題の比較

これから、u=a+bc3の三乗根を外す問題について考えていきたいと思います。
カルダノの公式を導出する中で、

y=u+vとおき整理することで
(u+v)3+p(u+v)+q=0u3+v3+(3uv+p)(u+v)+q=0
このとき、u,vの値が下の連立方程式を満たすように取ればu3+v3+(3uv+p)(u+v)+q=0の解の候補を導出できる。{u3+v3=quv=p3
{u3+v3=qu3v3=(p3)3

としていることから、

  • u3v3が簡単な数になる
  • u3+v3が簡単な数になる

ことが大切であることが分かります。(uv)3が簡単な数になるためには、u3=a+bcよりv3=abcとおいてやれば根号が消えて簡単な数になります。そのため、v=abc3とおいていたわけですね!また、このようにvをおいたとき、u3+v3=2aとなり、簡単な数になることもカルダノの公式の導出を使いやすくしていますね!
これで、初めに抱いた疑問について解消することができました。

例1の手順で解ける問題を作る際の手順

最後に、問題を作るときの手順を紹介して終わりにしようと思います。

  • t33uvt(u3+v3)=0に対してtの値を適当に入れる。

t=1 を入れると、13uv(u3+v3)=0

  • {u3+v3=3uvt+t3u3+v3=2a
    から、uvの値を適当に決定し、aの値も決定する。

t=1 を入れると、13uv(u3+v3)=0
従って2a=3uv+1なので、uvを奇数で取ればaが整数となるため、uv=5とする。このとき、a=8となる。

  • (uv)3=a2b2cを満たすb,cを決定する。

t=1 を入れると、13uv(u3+v3)=0
従って2a=3uv+1なので、uvを奇数で取ればaが整数となるため、uv=5とする。このとき、a=8となる。
ここで、b2c=a2(uv3)=64+125=189=32×21なので、b=3,c=21
従って、u=8+3213は例1の解法で簡単に三乗根を開くことのできる数値設定である。

以上がすべての工程になります。始めの方に決めるtuvの値によってa,b,cの値がいい感じになるかならないかが決まるので、とりあえず適当に入れてみるといいと思います。
三次方程式の解の公式が立方根を開く際に役立つ事実が私には驚きだったため、使う機会があれば(果たしてそんな機会はあるのかはさておき)使いたいです。

投稿日:202154
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