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間違った計算で成立する三乗根の二重根号等式

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間違った計算で成立する三乗根の二重根号等式

練乳は飲み物☆

先日、マクドナルドさんで「ミルキーのままの味」という期間限定イベをやっているのをおみかけまして、光の速さでレジカウンターの行列に並んできたのですが、


ミルキーのマックシェイク


ミルキーのワッフルコーン


想像以上にミルキーそのまんまでした!! 6月上旬位までとのことですので、練乳大好き「れんにゃ~」を自称される方はお早めに足を運ぶことをオススメします(*´ω`*)♪♪

さてさて、そんな甘々スイーツを堪能していたところ、ふと数学を使った小ネタのアイデアが降ってきました。一言でいうなら「 間違った計算で成立する等式選手権 」にエントリーできそうな 数式マジック です。

百聞は一見に如かず、まずはコチラの ミルキー 計算をご覧くださいませ。

±5±23=±15±213=(±5±1)(21)2(51)3=±5±12
±213±53=±213±513=(±13±1)(52)2(131)3=±13±12
±52±73=±52±713=(±2±1)(75)2(21)3=±2±1
±63±103=±63±1013=(±3±1)(106)2(31)3=±3±1

一見すると公式にあてはめて解いたかのようにも見えますが、果たしてこれは数学的に正しいでしょうか? 検算してみる限り、一応これらはすべて等式として成立しているようです。

しかし、残念ながら他の問題に適用してみても、必ずしもうまくいくとは限りません(;´Д`)
±153±263=±153±2613  (±3±1)(2615)2(31)3=(±3±1)1143

と思いきや、次のように魔法をかけてあけてあげると途端に成立するようになります!?

±153±263=±153±1343=(±3±4)(1315)2(34)3=±3±2

というわけで、今回思いついたのはこのような三乗根を用いた小学生の夢的トリックです。正しくないはずの計算で正しい答えを導く というお遊びに潜む数理パズル、さっそくそのカラクリを紹介いたしましょう(*´艸`*)

※手っ取り早くやり方だけ知りたい方は、次のセクションは読み飛ばしておっけーですよ!

魔法の三乗根ソルバー





α, β, q=αβ3 が有理数ならば ±α±β3 の二重根号を外すことができます。
{{p, r, s, t}  Qp=(q+r)s=3p+r=3(q+r)+r=(3q+4r)t=p+3r=(q+r)+3r=(q+4r)α=t2p=(q+4r)2(q+r)β=s2r=(3q+4r)2rαβ3 =t2ps2r3=(q+4r)2(q+r)(3q+4r)2r3=q33=q(±p±r)3=(±q+r±r)3=±(q+4r)q+r±(3q+4r)r=±tp±sr±α±β3=±tp±sr3=±(q+4r)q+r±(3q+4r)r3=±p±r=(±q+r±r)33

三乗根の二重根号を外せる条件

ここで、

{s3p+r=3q+4r3(q+r)+r=3q+4r3q+4r=1tp+3r=q+4r(q+r)+3r=q+4rq+4r=1st(3p+r)(p+3r)=st2(pr)=(3q+4r)(q+4r)2[(q+r)r]=2q2q=1

という関係性に注目し、次のようなギミックを準備しておきます。

{n  QP=n2p=n2(q+r)R=n2rS=sn=3q+4rnT=tn=(q+4r)nT2P=[(q+4r)n]2[n2(q+r)]=αS2R=[3q+4rn]2[n2r]=β

{S3P+R3=sn3n2p+n2r3=3q+4rn3n2(q+r)+n2r3=1n33=1nTP+3R3=tnn2p+3n2r3=q+4rnn2(q+r)+3n2r3=1n33=1nST(3P+R)(P+3R)3=ST2(PR)3=[sn][tn]2([n2p][n2r])3=[3q+4rn][q+4rn][3n2(q+r)+n2r][n2(q+r)+3n2r]3=1n33=1n

これを次のように仕込めば魔法の数式の出来上がり!

±α±β3=±TP±SR3=±tnn2p±snn2r3=±tp±sr3=±p±r=±n2p±n2rn=±P±Rn

 {1n3=TP+3R=SR+3P =ST2(PR)±TP±SR3=(±P±R)ST2(PR)3

イリュージョンのソリューション

まず、三乗根内の平方根の係数を二乗して平方根内に入れてしまい、±α±β3 という形にします。慣れないうちは αβ となるように並べ替えておくのが吉かも。

このとき、q3=αβ を満たす有理数 q が存在することを確認しましょう。これが二重根号をキレイに外すための条件となっていますので、万が一無理数となってしまう場合にはそこで試合放棄して構いません(笑)

もっとも、一般的な試験問題や有理数解を持つ三次方程式由来の二重根号など確実に外せることが分かっている場合、αβ の三乗根は必ず有理数となるはずですのでこれについてはまず心配無用でしょう☆

ここから
±α±β3=±TP±SR3=(±P±R)ST2(PR)3

が成り立つように数式変形させるわけですが、これについては

1n3=ST2(PR)(=TP+3R=SR+3P)

を満たす有理数 n が見つかるように調整するだけでオッケイ。

ヒューリスティックではありますが、一般に出回っているような問題の場合シンプルな解にする傾向が強いため n=2 あるいは n=1 でアタリをつけてみるとほぼほぼ見つかる印象です。

他、過去記事 みゆ🌹の魔法 その2 平方根 in 三乗根 にて紹介させていただいた魔法を導入する方法もあります。 魔法の手順内の sr はこちらの記事では n=2 のときの SR に相当しておりますので前章で出てきた {S=snR=n2r を用いて {S=s2R=4r で読み替えてあげれば対応完了! すると

q3=αβq を用いて

{β=s2r3q=s4r

を満たすような sr を探し、任意の(都合のよい)n を用いて

{T=s2qnP=n2(r+q)S=snR=n2r

と導くことも可能です。

 いずれもヒューリスティックな手法であることにはかわりありませんが、試験問題のようなキレイな値になるケースならこれらの方法で案外見つかるのでお試しを(〃ω〃)

実演

ネット上でみかけた二重根号問題をかたっぱしからイリュージョンしてみました☆

±27±6213=±99±6213=(±9±21)(69)2(921)3=±3±212
±10±7243=±544±7423=(±4±2)(7454)2(42)3=±2±22=±521±72123=(±1±12)(7252)2(112)3=±1±12
±2827±13=±23219±113=(±219±1)(123)2(2191)3=±219±12=±216±12=±2921±3993=(±21±9)(3929)2(219)3=±21±36
±1536±265223=±51254±532503=(±54±50)(532512)2(5450)3=±36±522=±51272±532523=(±272±252)(5351)2(272252)3=±326±522

おしまい

というわけで、今回は数式で遊んでみました。最後に、この記事を書くにあたって最初にひらめいた恒等式をオマケとして掲載しておきますね。

y3=(xy2)2(x+2y)(x+y2)2(x2y)±(xy)x+2y±(x+y)x2y23=±x+2y±x2y2

{x=2q+4ry=q とすると
q3=(q+4r)2(q+r)(3q+4r)2r±(q+4r)q+r±(3q+4r)r3=±q+r±r

謝辞

内容について検証くださった nayuta_ito 先生に感謝致します。

投稿日:202155
更新日:202499
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投稿者

https://mathlog.info/articles/323         数学を愛する会 副会長 CCO / ガラパゴ数学 開拓者 / 猫舌・甘党・薄味派

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