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大阪大学2021年度前期入試数学(理系)第2問】基本を駆使したベクトル問題

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第2問はベクトルの内積に絡んだ問題ですが、特に問題になる箇所はないと思います。

問題

空間内に,同一平面上になり 4点 O, A, B, C がある.$s$, $t$$0 < s < 1$, $0 < t < 1$ をみたす実数とする.線分 OA を $1 : 1$ に内分する点を $\mathrm{A}_0$,線分 OB を $1 : 2$ に内分する点を$\mathrm{B}_0$,線分 AC を $s : (1 - s)$ に内分する点を P,線分 BC を $t : (1 - t)$ に内分する点を Q とする.さらに 4点 $\mathrm{A}_0$, $\mathrm{B}_0$, P, Q が同一平面上にあるとする.

  1. $t$$s$ を用いて表せ.

  2. $|\overrightarrow{\rm OA}| = 1$, $|\overrightarrow{\rm OB}| = |\overrightarrow{\rm OC}| = 2$, $\angle \mathrm{AOB} = 120^\circ$, $\angle \mathrm{BOC} = 90^\circ$, $\angle \mathrm{COA} = 60^\circ$, $\angle \mathrm{POQ} = 90^\circ$ であるとき,$s$ の値を求めよ.

解答解説

(1) の解答

まず (1) ですが,表記を簡単にするために,点A, B, C を表す位置ベクトルを $\vec{a}$, $\vec{b}$, $\vec{c}$ としておきます.このとき,$\mathrm{A}_0$$\displaystyle\frac{1}{2}\vec{a}$, $\mathrm{B}_0$$\displaystyle\frac{1}{3}\vec{b}$, $P$$(1-s)\vec{a} + s\vec{c}$, $Q$$(1-t)\vec{b} + t\vec{c}$ で表されます.

さて、$\mathrm{A}_0$, $\mathrm{B}_0$, P を通る平面は $x + y + z = 1$ を満たす実数 $x$, $y$, $z$ を用いて $\displaystyle x\left(\frac{1}{2}\vec{a}\right) + y\left(\frac{1}{3}\vec{b}\right) + z\left\{(1-s)\vec{a}+s\vec{c}\right\}$ で表され,4点 $\mathrm{A}_0$, $\mathrm{B}_0$, P, Q は同一平面上にあることから,
\begin{equation}   x\left(\frac{1}{2}\vec{a}\right) + y\left(\frac{1}{3}\vec{b}\right) + z\left\{(1-s)\vec{a}+s\vec{c}\right\} = (1-t)\vec{b}+t\vec{c}\mbox{ かつ }x + y + z = 1 \end{equation}
を満たす実数 $x$, $y$, $z$ が存在することになります.

O, A, B, C が同一平面上にないことから,ベクトル $\vec{a}$, $\vec{b}$, $\vec{c}$ は独立であるので,
\begin{equation}    x\left(\frac{1}{2}\vec{a}\right) + y\left(\frac{1}{3}\vec{b}\right) + z\left\{(1-s)\vec{a}+s\vec{c}\right\} = (1-t)\vec{b}+t\vec{c} \end{equation}
の両辺の $\vec{a}$, $\vec{b}$, $\vec{c}$ の係数はそれぞれ等しくなります.よって,
\begin{align} \frac{x}{2} + z(1-s) &= 0,& \frac{y}{3} &= 1 - t,& zs &= t \end{align}
が成り立ちます。この3式から
\begin{align} x &= 2z(s - 1) = \frac{2(s - 1)t}{s},& y &= 3(1 - t),& z &= \frac{t}{s} \end{align}
が得られ($s > 0$ に注意), これらを $x + y + z = 1$ に代入することで
\begin{equation}    \frac{2(s - 1)t}{s} + 3(1-t) + \frac{t}{s} = 1 \end{equation}
すなわち
\begin{equation}   2(s-1)t + 3s(1-t) + t = s \mbox{ すなわち } (s+1)t = 2s \end{equation}
となるため,$s>0$ であることに注意すると $t = \displaystyle\frac{2s}{s+1}$ が答えとなります.

(2) の解答

$\vec{a}$, $\vec{b}$, $\vec{c}$ の間の内積を求めておきます.
\begin{align} \vec{a}\cdot\vec{b} &= |\vec{a}|\cdot |\vec{b}| \cos 120^\circ = 1 \times 2 \times \left(-\frac{1}{2}\right) = -1,\\ \vec{b}\cdot\vec{c} &= |\vec{b}|\cdot|\vec{c}| \cos 90^\circ = 0,\\ \vec{c}\cdot\vec{a} &= |\vec{c}|\cdot|\vec{a}| \cos 60^\circ = 2 × 1 × \frac{1}{2} = 1 \end{align}
となります.

さらに $\overrightarrow{\rm OP}\cdot\overrightarrow{\rm OQ} = |\overrightarrow{\rm OP}|\cdot|\overrightarrow{\rm OQ}| \cos 90^\circ = 0$ となるわけですが,$\overrightarrow{\rm OP} = (1-s)\vec{a} + s\vec{c}$, $\overrightarrow{\rm OQ} = (1-t)\vec{b} + t\vec{c}$ であるので,
\begin{align} \overrightarrow{\rm OP}\cdot\overrightarrow{\rm OQ} &= (1-s)(1-t)\vec{a}\cdot\vec{b} + (1-s)t\vec{a}\cdot\vec{c} + s(1-t)\vec{c}\cdot\vec{b} + st|\vec{c}|^2\\ &= -(1-s)(1-t) + (1-s)t + 4st\\ &= -1 + s + t - st + t -st + 4st\\ &= -1 + s + 2(s + 1)t\\ &= -1 + 5s \end{align}
となる(ここで(1) より $t = \displaystyle\frac{2s}{s + 1}$ に注意)ので, $-1 + 5s = 0$ すなわち $s = \displaystyle\frac{1}{5}$ となります.

感想

直線上にない3点 $\mathrm{A}(\vec{a})$, $\mathrm{B}(\vec{b})$, $\mathrm{C}(\vec{c})$ を通る平面を $x + y + z = 1$ を満たす実数 $x$, $y$, $z$ を用いて $x\vec{a} + y\vec{b} + z\vec{c}$ で表すのは基本で,座標が与えられてない場合はもちろんのこと,与えられていたとしても($x$, $y$, $z$ の文字を変えて)この方法を用いるのは有効です.

ちなみに, 三角形ABCの内部(境界線上を含む)を表すときには $x + y + z = 1$ に加えて $x, y, z \ge 0$ を条件とすればよく, 使い勝手が良いです.

もちろん, なぜこのように表されるのか, 理由も説明できるようにしておくといいでしょう. (簡単なのでご自身で考えてみてください. )

投稿日:202157
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投稿者

名前はトムヤムクン(TomYumGoong)と読みます.仕事で数学を使う電子・情報系人間.塾講師とは違った立場で気楽に,主に中学入試の算数と大学入試の数学の問題を眺めていこうと思っています.

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