今回は2021を盛り込んだ整数問題です.今年出題された6問の中でも最も面白い問題です.
以下の問いに答えよ。
正の奇数 $K$, $L$ と正の整数 $A$, $B$ が $KA = LB$ を満たしているとする。$K$ を $4$ で割った余りが $L$ を $4$ で割った余りに等しいならば,$A$ を $4$ で割った余りは $B$ を $4$ で割った余りと等しいことを示せ。
正の整数 $a$, $b$ が $a > b$ を満たしているとする。このとき,$A = {}_{4a+1}\mathrm{C}_{4b+1}$, $B = {}_{a}\mathrm{C}_{b}$ に対して $KA = LB$ となるような正の整数 $K$, $L$ が存在することを示せ。
$a$, $b$ は (2) の通りとし,さらに $a - b$ が $2$ の倍数で割り切れるとする。${}_{4a+1}\mathrm{C}_{4b+1}$ を $4$ で割った余りは $_{a}\mathrm{C}_{b}$ を $4$ で割った余りと等しいことを示せ。
${}_{2021}\mathrm{C}_{37}$ を $4$ で割った余りを求めよ。
この問題は誘導が良く設計されています.多分,全6問の中で一番面倒な問題であったと思います.が,私はこういう問題の方が得意なので,戦略はすぐにたちました.とはいえ,解答を書くとなると話は別です.
実際,(2) と (3) については長くなってしまったために解答を書き換えました.(オリジナルは感想の後に載せています.)
この問題は素直に考えましょう.
$K$, $L$ を $4$ で割った商をそれぞれ $p$, $q$, 共通の余りを $r$ とおくと,
\begin{align}
K &= 4p + r&
L &= 4q + r
\end{align}
と表すことができます.ここで,$K$ と $L$ は奇数であり,$r$ は $K$, $L$ を $4$ で割った余りであるので,$r = 1$ もしくは $r = 3$ となります.
$KA = LB$ より $(4p + r)A = (4q + r)B$ すなわち $r(A - B) = 4(qB - pA)$ となりますが,$p$, $q$, $r$, $A$, $B$ は全て整数であることから,右辺は 4 の倍数で,$r$ と $4$ は互いに素であるので,$A - B$ は4の倍数となります.
すなわち,$A$ を $4$ で割った余りと $B$ を $4$ で割った余りは等しいことが証明されました.
${}_{4a+1}\mathrm{C}_{4b+1}$ を式変形していきます.
\begin{align}
{}_{4a+1}\mathrm{C}_{4b+1}
&=\frac{(4a+1)!}{(4b+1)!\times\{4(a-b)\}!}\\
&=\frac{(4a+1)4a(4a-1)\cdots 1}{(4b+1)4b(4b-1)\cdots 1\times 4(a-b)\{4(a-b)-1\}\cdots 1}\\
&=\frac{\displaystyle\prod_{i=1}^{a}(4i)}{\displaystyle\prod_{i=1}^{b}(4i)\times\prod_{i=1}^{a-b}(4i)}\times\frac{\displaystyle\prod_{i=1}^{a}\{2(2i-1)\}}{\displaystyle\prod_{i=1}^{b}\{2(2i-1)\}\times\prod_{i=1}^{a-b}\{2(2i-1)\}}\times\frac{\displaystyle\prod_{i=1}^{2a+1}(2i-1)}{\displaystyle\prod_{i=1}^{2b+1}(2i-1)\times\prod_{i=1}^{2(a-b)}2(2i-1)}\\
&=\frac{\displaystyle\prod_{i=1}^{a}i}{\displaystyle\prod_{i=1}^{b}i\times\prod_{i=1}^{a-b}i}\times\frac{\displaystyle\prod_{i=1}^{a}(2i-1)}{\displaystyle\prod_{i=1}^{b}(2i-1)\times\prod_{i=1}^{a-b}(2i-1)}\times\frac{\displaystyle\prod_{i=1}^{2a+1}(2i-1)}{\displaystyle\prod_{i=1}^{2b+1}(2i-1)\times\prod_{i=1}^{2(a-b)}2(2i-1)}\\
&={}_{a}\mathrm{C}_{b}\times\frac{\displaystyle\prod_{i=1}^{a}(2i-1)}{\displaystyle\prod_{i=1}^{b}(2i-1)\times\prod_{i=1}^{a-b}(2i-1)}\times\frac{\displaystyle\prod_{i=1}^{2a+1}(2i-1)}{\displaystyle\prod_{i=1}^{2b+1}(2i-1)\times\prod_{i=1}^{2(a-b)}2(2i-1)}
\end{align}
ここで,$\prod$ という見慣れぬ記号が出てきますが,これは $\sum$ の掛け算版です.この記号を使う方が書くのが簡単で,どのように分子分母を分けたかが分かりやすいので使いました.
上の式は要するに,分子分母にある因数(掛け算の構成要素)を「$4$ の倍数」「$4$ の倍数ではない偶数」「奇数」に分けて,$4$ の倍数同士を $4$ で,$4$の倍数ではない偶数同志を $2$ で約分しています.
これにより,
\begin{align}
K&=\prod_{i=1}^{b}(2i-1)\prod_{i=1}^{a-b}(2i-1)\prod_{i=1}^{2b+1}(2i-1)\prod_{i=1}^{2(a-b)}(2i-1)\\
L&=\prod_{i=1}^{a}(2i-1)\prod_{i=1}^{2a+1}(2i-1)
\end{align}
とおくと,$K$ と $L$ はそれぞれ奇数であり,上式より $\displaystyle A=B\times\frac{L}{K}$ すなわち $KA = LB$ が成立するのは明らかなので,これが条件を満たす $K$ と $L$ になります.
$K$ を $4$ で割った余りと $L$ を $4$ で割った余りが等しければ,(1) より命題が成立することになります.
$m$, $n$ が整数であるとき,
したがって,奇数のみからなる積は,積に含まれる $4$ で割って $3$ 余る因数の個数が偶数のときは $4$ で割って $1$ 余り,奇数のときは $4$ で割って $3$ 余ります.よって,$K$ に含まれる $4$ で割って $3$ 余る因数の個数と $L$ に含まれる $4$ で割って $3$ 余る因数の個数の偶奇が等しいことを証明すれば十分となります.
では、$K$ と $L$ の因数の中に $4$ で割って $3$ 余る数が何個あるかを数えましょう.
$1, 3, 5, 7, \ldots$ を $4$ で割った余りは $1, 3, 1, 3, \ldots$ と交互に現れることから,自然数 $n$ に対して $1, 3, \ldots, 2n-1$ の中には $4$ で割って $3$ 余る数が $[n/2]$ 個存在します.ここで,$[x]$ は $x$ を超えない最大の整数を表します.
以上のことから,$4$ で割って $3$ 余る数の個数は次のようになります:
したがって,$K$ と $L$ の中の $4$ で割って $3$ 余る因数の個数をそれぞれ $M$ と $N$ で表すと,
\begin{align}
M &=[b/2] + (a-b)/2 + b + (a-b)\\
N &=[a/2] + a
\end{align}
となるので,$N - M = [a/2] - [b/2] - (a-b)/2$ となります.ここで,$a - b$ は $2$ の倍数であることより,$a$ と $b$ の偶奇は一致するため,$[a/2] - [b/2] = (a-b)/2$ となります.したがって,$N - M = 0$ すなわち $M = N$ となり,$M$ と $N$ の偶奇も一致したため,命題が証明されました.
単に計算問題です.
\begin{align}
{}_{2021}\mathrm{C}_{37}
&\equiv {}_{4×505+1}\mathrm{C}_{4×9+1} \equiv {}_{505}\mathrm{C}_{9} \equiv {}_{4×126+1}\mathrm{C}_{4×2+1}\\
&\equiv {}_{126}\mathrm{C}_{2} = 126\times 125 \div 2 \equiv 3 \times 1 \equiv 3 \pmod{4}
\end{align}
であるので,余りは $3$ となります.
小問 (2) と (3) は当初の証明から変更しました.アイデアは同じですが,上記のように $K$ と $L$ を直接求める方が記述が簡単になるからです.
ですが,当初の証明の方が私の思考が伝わると思うので,かなり恥ずかしい代物ですが敢えて残しておきます.
しかし,この問題は入試としてはかなりタフだと思います.特に (3) は時間内で解くのが厳しい.(1), (2), (4) くらいが限界のような気がします.
問題としてはなかなかに意欲的で,面白い問題だと思います.少し泥臭いことを要求しますが,このくらいはありだと思いますし,それほど汚い感じはしませんでした.
$A$ と $B$ が因数として $2$ をいくつ持つかを数えれば終わりです.
\begin{align}
A &= 2^p L\\
B &= 2^q K
\end{align}
と表すとします.ここで,$p$, $q$ は非負整数で,$L$, $K$ は正の奇数であるとします.このとき,$p$ = $q$ が成立すれば $KA = LB = 2^p KL$ が成り立つので,以下では $A$ と $B$ に含まれる 因数 $2$ の個数が等しいことを示します.
自然数 $n$ に対して $n!$ に含まれる因数 $2$ の個数を $Z(n)$ とします.このとき,次の補題が成り立ちます.
$Z(2n+1) = Z(2n) = Z(n) + n$
$2n + 1$ は奇数であるので,$Z(2n+1) = Z(2n)$ は明らかです.$1, 2, \ldots, 2n$ の中で因数 $2$ を含むのは偶数である $2, 4, \ldots, 2n$ のみで,これらすべてを $2$ で割ると $1, 2, \ldots, n$ が得られます.したがって,$1$ ~ $n$ までの中に含まれる因数 $2$ の個数 $Z(n)$ に,各偶数から $1$ 個ずつ取り除いた因数 $2$ の個数の合計 $n$ を加えた数が $Z(2n)$ になります.
ここで、
\begin{align}
A &= {}_{4a+1}\mathrm{C}_{4b+1} = \displaystyle\frac{(4a+1)!}{(4b+1)! \times \{4(a-b)\}!}\\
B &= {}_{a}\mathrm{C}_{b} = \displaystyle\frac{a!}{b!\times (a-b)!}
\end{align}
であるので、$A$ に含まれる因数 $2$ の個数 $p = Z(4a+1) - Z(4b+1) - Z(4(a-b))$,$B$ に含まれる因数 $2$ の個数 $q = Z(a) - Z(b) - Z(a-b)$ となりますが,補題1より
\begin{align}
Z(4a+1) &= Z(2a) + 2a = Z(a) + 3a\\
Z(4b+1) &= Z(b) + 3b\\
Z(4(a-b)) &=Z(a-b) - 3(a-b)
\end{align}
であるので,
\begin{align}
p &= Z(4a+1) - Z(4b+1) - Z(4(a-b))\\
&= Z(a) + 3a - Z(b) - 3b - Z(a-b) - 3(a-b)\\
&= Z(a) - Z(b) - Z(a-b) = q
\end{align}
が成立し,$p = q$ が証明されました.
前問より $A = 2^p L$ かつ $B = 2^p K$ であることが示されたので,(3) では $L$ に含まれる ($A$ に含まれる) 因数で $4$ で割って $3$ 余る数の個数と,$K$ に含まれる($B$ に含まれる) 因数で $4$ で割って $3$ 余る数の個数を数えます.ただし、その偶奇だけが等しければ十分です.
というのも,$2$つの奇数をかけるとき,$4$ で割った余りの組合せは $(1,1)$, $(1,3)$, $(3,1)$, $(3,3)$ の $4$ 通りありますが,$(1, 1)$ と $(3, 3)$ のときは積を $4$ で割ると余りが $1$ となり,$(3, 1)$ と $(1, 3)$ のときは積を $4$ で割ると余りが $3$ となります.
ということは,奇数因数の積を $4$ で割るとき,$4$ で割って余りが $3$ である因数が偶数個であれば余りが $1$ に,奇数個であれば余りが $3$ になります.また,割り算に関しても同様です.
小問 (2) と同じように $n!$ に含まれる $4$ で割って $3$ 余る奇数因数の個数の偶奇を $X(n)$ で表します.このとき,次の性質が成り立ちます.
任意の正の整数 $n$ に対して
\begin{align}
X(2n) &\equiv X(n) + [n/2] \pmod{2}\\
X(2n+1) &\equiv X(n) + [(n+1)/2] \pmod{2}
\end{align}
ここで,$[x]$ は $x$ を超えない最大の整数とします.
$1, 2, \ldots, 2n$ を偶奇で分けます.
偶数部分 $2, 4, \ldots, 2n$ に含まれる奇数因数は,これらを $2$ で割った $1, 2, \ldots, n$ に含まれる奇数因数と等しいため,この中で $4$ で割って $3$ 余る奇数因数の個数の偶奇は $X(n)$ に等しくなります.
一方,奇数部分 $1, 3, \ldots, 2n -1$ は $4$ で割ると $1, 3, 1, 3, \ldots$ となるので,余りが $3$ となる個数は $[n/2]$ となります.
よって,$X(2n)$ の式は正しいことが示されました.$X(2n+1)$ も同様です.
$L$ に含まれる $4$ で割って $3$ 余る因数の個数の偶奇は $\{X(4a+1)-X(4b+1)-X(4(a-b))\}\bmod 2$,$K$ に含まれる $4$ で割って $3$ 余る因数の個数の偶奇は $\{X(a)-X(b)-X(a-b)\}\bmod 2$ であるので,以下では
\begin{equation}
X(4a+1)-X(4b+1)-X(4(a-b))\equiv X(a)-X(b)-X(a-b)\pmod{2}
\end{equation}
であることを示します.
補題 2 より
\begin{align}
X(4a+1) &\equiv X(2a) + [(2a+2)/2] \equiv X(a) + [a/2] + a + 1 \pmod{2}\\
X(4b+1) &\equiv X(b) + [b/2] + b + 1 \pmod{2}\\
X(4(a-b)) &\equiv X(2(a-b)) + (a-b)\equiv X(a-b) + [(a-b)/2] + (a-b) \pmod{2}
\end{align}
となるので,
\begin{equation}
X(4a+1) - X(4b+1) - X(4(a-b))\equiv X(a) - X(b) - X(a-b) + [a/2] - [b/2] - [(a-b)/2] \pmod{2}
\end{equation}
ここで,$a-b$ が $2$ の倍数であるので,$[a/2] - [b/2] = (a-b)/2$ かつ $[(a-b)/2] = (a-b)/2$ となり,
\begin{align}
X(4a+1) - X(4b+1) - X(4(a-b))
&\equiv X(a) - X(b) - X(a-b) + \frac{a-b}{2}-\frac{a-b}{2}\\
&\equiv X(a) - X(b) - X(a-b) \pmod{2}
\end{align}
となります.
したがって,$K$ と $L$ を $4$ で割った余りは等しいので,$A$ と $B$ も $4$ で割った余りが等しいことが証明されました.