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【東京大学2021年度入試数学(理系)第5問】関数と微分の退屈な問題

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第5問は三角関数の微分を使った問題です.手厳しい言い方になりますが,前問とは打って変わって退屈なことこの上ない問題です.

問題

$\alpha$ を正の実数とする。$0 \leqq \theta \leqq \pi$ における $\theta$ の関数 $f(\theta)$ を,座標平面上の $2$点 A$(-\alpha, -3)$, P$(\theta + \sin \theta, \cos \theta)$ 間の距離 AP の $2$乗として定める。

  1. $0 < \theta < π$ の範囲に $f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ がただ $1$つ存在することを示せ。

  2. 以下が成り立つような $\alpha$ の範囲を求めよ。

$0 \leqq \theta \leqq \pi$ における $\theta$ の関数 $f(\theta)$ は,区間 $0 < \theta < \displaystyle\frac{\pi}{2}$ のある点において最大になる。

解答解説

まずは何も考えずに $f(\theta)$ を求めておきましょう.
\begin{equation}    f(\theta) = (\theta + \sin \theta + \alpha)^2 + (\cos \theta + 3)^2 \end{equation}

(1) の解答

この問題を見て $f'$ を求めるのは普通です.
\begin{align} f'(\theta) &= 2(\theta + \sin \theta + \alpha)(1 + \cos \theta) + 2(\cos \theta + 3)(-\sin \theta)\\ &=2\{\theta +\theta\cos\theta - 2\sin\theta + \alpha\cos\theta + \alpha\} \end{align}
となります.さらに $f''$ を求めると
\begin{align} \frac{f''(\theta)}{2} &= 1 + \cos \theta - \theta \sin \theta - 2 \cos \theta - \alpha \sin \theta\\ &= 1 - \cos \theta - \theta \sin \theta - \alpha \sin \theta \end{align}
となり,ここでもまだ $f'$ がよく分からないので,$f'''$ も求めます.
\begin{align} \frac{f'''(\theta)}{2} &= \sin \theta - \sin \theta - \theta \cos \theta - \alpha \cos \theta\\ &= - (\theta + \alpha) \cos \theta \end{align}

ここまで来てようやく関数の形状が見えてきます.以下の情報から,まず $f''$ の増減表を書いてみましょう.

  • $0 \leqq \theta < \displaystyle\frac{\pi}{2}$ のとき,$\theta + \alpha > 0$ かつ $\cos \theta > 0$ より $f'''(\theta) < 0$
  • $\displaystyle f'''\left(\frac{\pi}{2}\right) = 0$
  • $\displaystyle \frac{\pi}{2} < \theta \leqq \pi$ のとき,$\theta + \alpha > \theta$ かつ $\cos \theta < 0$ より $f'''(\theta) > 0$
$\theta$$0$$\displaystyle\frac{\pi}{2}$$\pi$
$f'''(\theta)$$-$$0$$+$
$f''(\theta)$$0$$\searrow$$2-\pi-2\alpha$ (最小)$\nearrow$$4$

ということで,$0 < \theta < π$ の範囲に $f''(\theta) = 0$ となる $\theta$ がただ $1$つ存在します.これを $\phi$ としておきます.このとき,$f'$ の増減表は次のようになります.

$\theta$$0$$\phi$$\pi$
$f''(\theta)$$-$$0$$+$
$f'(\theta)$$4\alpha$$\searrow$最小値$\nearrow$$0$

さてここで、$f'(\pi) = 0$ であるので, $\phi \leqq \theta < \pi$ のとき $f'(\theta) < 0$ となります.すなわち,この区間では $f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ は存在しません.

また,$0 < \theta < \phi$ のときに $f'(\theta)$ は単調減少し,$f'(\theta) = 4\alpha > 0$ かつ $f'(\phi) < 0$ であるので,$f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ がこの区間でただ1つ存在します.

これで命題は証明されました。

(2) の解答

(1) より,区間 $0 < \theta < \pi$$f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ がただ 1つ存在するので,それを $\psi$ とおきます.

(1) の増減表より $0 < \theta < \psi$ のとき $f'(\theta) > 0$ であり,$\psi < \theta < \pi$ のとき $f'(\theta) < 0$ であるので,$f(\theta)$$\theta = \psi$ のときに最大となります.

$\theta$$0$$\psi$$\pi$
$f'(\theta)$$+$$0$$-$
$f(\theta)$$\nearrow$最大値$\searrow$

区間 $0 < \theta < \pi$$f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ はただ $1$つであり,$f'(\theta) = 4\alpha > 0$ であるので,$0 < \psi < \displaystyle\frac{\pi}{2}$ であるための必要十分条件は,$f'\displaystyle\left(\frac{\pi}{2}\right) = \frac{\pi}{2} - 2 + \alpha < 0$ が成立することとなります.

よって,求める $\alpha$ の範囲は $\displaystyle 0 < \alpha < 2 - \frac{\pi}{2}$ となります.

感想

見ての通り,難しい問題ではないです.東大受験生にとっては基本的と言っていいです.合格のためには落とせないでしょう.

投稿日:202158

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投稿者

名前はトムヤムクン(TomYumGoong)と読みます.仕事で数学を使う電子・情報系人間.塾講師とは違った立場で気楽に,主に中学入試の算数と大学入試の数学の問題を眺めていこうと思っています.

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