第5問は三角関数の微分を使った問題です.手厳しい言い方になりますが,前問とは打って変わって退屈なことこの上ない問題です.
$\alpha$ を正の実数とする。$0 \leqq \theta \leqq \pi$ における $\theta$ の関数 $f(\theta)$ を,座標平面上の $2$点 A$(-\alpha, -3)$, P$(\theta + \sin \theta, \cos \theta)$ 間の距離 AP の $2$乗として定める。
$0 < \theta < π$ の範囲に $f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ がただ $1$つ存在することを示せ。
以下が成り立つような $\alpha$ の範囲を求めよ。
$0 \leqq \theta \leqq \pi$ における $\theta$ の関数 $f(\theta)$ は,区間 $0 < \theta < \displaystyle\frac{\pi}{2}$ のある点において最大になる。
まずは何も考えずに $f(\theta)$ を求めておきましょう.
\begin{equation}
f(\theta) = (\theta + \sin \theta + \alpha)^2 + (\cos \theta + 3)^2
\end{equation}
この問題を見て $f'$ を求めるのは普通です.
\begin{align}
f'(\theta) &= 2(\theta + \sin \theta + \alpha)(1 + \cos \theta) + 2(\cos \theta + 3)(-\sin \theta)\\
&=2\{\theta +\theta\cos\theta - 2\sin\theta + \alpha\cos\theta + \alpha\}
\end{align}
となります.さらに $f''$ を求めると
\begin{align}
\frac{f''(\theta)}{2}
&= 1 + \cos \theta - \theta \sin \theta - 2 \cos \theta - \alpha \sin \theta\\
&= 1 - \cos \theta - \theta \sin \theta - \alpha \sin \theta
\end{align}
となり,ここでもまだ $f'$ がよく分からないので,$f'''$ も求めます.
\begin{align}
\frac{f'''(\theta)}{2}
&= \sin \theta - \sin \theta - \theta \cos \theta - \alpha \cos \theta\\
&= - (\theta + \alpha) \cos \theta
\end{align}
ここまで来てようやく関数の形状が見えてきます.以下の情報から,まず $f''$ の増減表を書いてみましょう.
$\theta$ | $0$ | $\displaystyle\frac{\pi}{2}$ | $\pi$ | ||
---|---|---|---|---|---|
$f'''(\theta)$ | $-$ | $0$ | $+$ | ||
$f''(\theta)$ | $0$ | $\searrow$ | $2-\pi-2\alpha$ (最小) | $\nearrow$ | $4$ |
ということで,$0 < \theta < π$ の範囲に $f''(\theta) = 0$ となる $\theta$ がただ $1$つ存在します.これを $\phi$ としておきます.このとき,$f'$ の増減表は次のようになります.
$\theta$ | $0$ | $\phi$ | $\pi$ | ||
---|---|---|---|---|---|
$f''(\theta)$ | $-$ | $0$ | $+$ | ||
$f'(\theta)$ | $4\alpha$ | $\searrow$ | 最小値 | $\nearrow$ | $0$ |
さてここで、$f'(\pi) = 0$ であるので, $\phi \leqq \theta < \pi$ のとき $f'(\theta) < 0$ となります.すなわち,この区間では $f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ は存在しません.
また,$0 < \theta < \phi$ のときに $f'(\theta)$ は単調減少し,$f'(\theta) = 4\alpha > 0$ かつ $f'(\phi) < 0$ であるので,$f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ がこの区間でただ1つ存在します.
これで命題は証明されました。
(1) より,区間 $0 < \theta < \pi$ で $f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ がただ 1つ存在するので,それを $\psi$ とおきます.
(1) の増減表より $0 < \theta < \psi$ のとき $f'(\theta) > 0$ であり,$\psi < \theta < \pi$ のとき $f'(\theta) < 0$ であるので,$f(\theta)$ は $\theta = \psi$ のときに最大となります.
$\theta$ | $0$ | $\psi$ | $\pi$ | ||
---|---|---|---|---|---|
$f'(\theta)$ | $+$ | $0$ | $-$ | ||
$f(\theta)$ | $\nearrow$ | 最大値 | $\searrow$ |
区間 $0 < \theta < \pi$ で $f'(\theta) = 0$ となる $\theta$ はただ $1$つであり,$f'(\theta) = 4\alpha > 0$ であるので,$0 < \psi < \displaystyle\frac{\pi}{2}$ であるための必要十分条件は,$f'\displaystyle\left(\frac{\pi}{2}\right) = \frac{\pi}{2} - 2 + \alpha < 0$ が成立することとなります.
よって,求める $\alpha$ の範囲は $\displaystyle 0 < \alpha < 2 - \frac{\pi}{2}$ となります.
見ての通り,難しい問題ではないです.東大受験生にとっては基本的と言っていいです.合格のためには落とせないでしょう.