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大学数学基礎解説
文献あり

∈ の誤用

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集合の記号 $\in$$\subseteq$ を正しく使えない理系大学生が実は案外多いことをご存知でしょうか?正しく言うと,$A\subseteq B$ と書くべきところを $A\in B$ と書いてしまうのです.肌感覚では $2$$3$割くらいいると思います.

部下が誤って記号を使っているのを見ると,
『いやいや,お前,高校大学で何習ってきたの?』
とツッコミたくなるわけですが,最近,その理由が何となくわかった気がします.

彼らは厳密な定義を通してではなく,次のように日本語で記号を理解しているようです.(ちなみに,$a$$A$ の要素,$A$$B$ の部分集合です.)

  • $a\in B\Rightarrow a$$B$ に含まれる ($a$ is contained in $B$)
  • $A\subseteq B\Rightarrow A$$B$ に含まれる ($A$ is included in $B$)

そうなんです.英語では contained と included と異なっているのですが,日本語で書くと全く同じになってしまうんです.で,『「$A$$B$ に含まれる」ってどうやって書くんだ』ってなったときに,$A\in B$ を選択しているようなのです.ちなみに,$a\subseteq B$ と誤ることはまれです.

口頭ではどちらも「含まれる」という単語を使いがちですが,もちろん,次のように分けて表現することもできます.

  • $a\in B\Rightarrow a$$B$ の元(要素)である($a$ is an element of $B$).$a$$B$ に属する($a$ belongs to $B$)
  • $A\subseteq B\Rightarrow A$$B$ の部分集合である($A$ is a subset of $B$)

私自身の反省も込めてですが,教育現場も「含まれる」という表現を避けて,もしくは,少なくともどちらかを止めて,二つの表現を厳密に分けた方がいいのかもしれません.

参考文献

投稿日:2021510
OptHub AI Competition

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投稿者

名前はトムヤムクン(TomYumGoong)と読みます.仕事で数学を使う電子・情報系人間.塾講師とは違った立場で気楽に,主に中学入試の算数と大学入試の数学の問題を眺めていこうと思っています.

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