久しぶりにやる気というものが出てきたので記事を書こうと思います.
これは簡単です. まず$n$は自然数とします. 例えば$xy$座標平面上の点は$(x,y)$と表されたり, $xyz$座標空間上の点は$(x,y,z)$等と表されたりします. このときに用いる$n$個の数の組$(x_1,\cdots,x_n)$のことを順序付けられた組あるいは単に組と呼び, $n=2$であるとき特に順序対とも呼びます. そして$x_i$を$(x_1,\cdots,x_n)$の第$i$成分と呼びます. また, 2つの順序付けられた組$(x_1,\cdots,x_n),(y_1,\cdots,y_n)$が等しいことの定義は
$$ x_i=y_i\quad(i=1,\cdots,n)$$
が成立することです.
$n$個の集合$X_1,\cdots,X_n$の直積$X_1\times\cdots\times X_n$は次のように定義されます.
$$ X_1\times\cdots\times X_n=\{(x_1,\cdots,x_n)\mid{}^\forall i\in\{1,\cdots,n\}\,(x_i\in X_i)\}$$
この定義からすぐに直積は非可換であることが分かります. また$X_1,\cdots,X_n$がすべて同一の集合$X$であったとき次のように表記します.
$$ X^n=\underbrace{X\times\cdots\times X}_{n個}=\{(x_1,\cdots,x_n)\mid{}^\forall i\in\{1,\cdots,n\}\,(x_i\in X)\}$$
例を挙げると, $xy$座標平面上の点全体の集合は$\{(x,y)|x,y\in\mathbb R\}$と表されるのでこれは$\mathbb R^2$と表すこともできます. 一般に$n$次元空間内の点全体の集合は$\mathbb R^n$と表せます. また一般化することを考え次の記号を定めます.
$$\prod_{i=1}^nX_i=X_1\times\cdots\times X_n$$
$\Lambda$を空でない集合とします. $\lambda\in\Lambda$それぞれに集合$A_\lambda$を割り当てたものを$\Lambda$で添え字付けられた集合族と言い$(A_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$や$\{A_\lambda\}_{\lambda\in\Lambda}$と書きます. ここで$A_\lambda$は$\lambda$が異なっていても同じ集合であることが許されます. 2つの集合族$(A_\lambda)_{\lambda\in\Lambda},(B_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$が等しいことの定義は
$$ A_\lambda=B_\lambda\quad(\lambda\in\Lambda)$$
が成立することと定めます. また, $\mathbb N$で添え字付けられた集合族を特に集合列と呼びます.
$n$個の集合$A_1,\cdots,A_n$の和集合及び共通部分を次のように書きます.
$$ \bigcup_{i=1}^nA_i=A_1\cup\cdots\cup A_n,\\\bigcap_{i=1}^nA_i=A_1\cap\cdots\cap A_n$$
この2つの集合は次のようにも書けます.
$$\bigcup_{i=1}^nA_i=\{x\mid{}^\exists i\in\{1,\cdots,n\}\,[x\in A_i]\},\\\bigcap_{i=1}^nA_i=\{x\mid{}^\forall i\in\{1,\cdots,n\}\,(x\in A_i)\}$$
この書き方をそのまま用いて$\Lambda$で添え字付けられた集合族$(A_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$全体の和集合と共通部分を次のように定めます.
$$\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_\lambda=\{x\mid{}^\exists\lambda\in\Lambda\,[x\in A_\lambda]\},\\\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_\lambda=\{x\mid{}^\forall\lambda\in\Lambda\,(x\in A_\lambda)\}$$
直積についても書き方を変えることで添え字付けられた集合族に対応させましょう. 直積の元, つまり組$(x_1,\cdots,x_n)$を別の方法で書き表します. これは次のような写像$x$と対応します.
$$ x:\{1,\cdots,n\}\to\bigcup_{i=1}^nX_i,\,i\mapsto x_i$$
直積とは組をすべて集めた集合なので言い換えればこのような写像をすべて集めたものと言っても同じことになります. この写像は一体どのようなものかというと$x(i)\in X_i$であることが求められ, しかもこれを満たすもの全てです. ということは直積は次のように表せることになります.
$$\prod_{i=1}^nX_i=\left\{x:\{1,\cdots,n\}\to\bigcup_{i=1}^nX\relmiddle|x(i)\in X_i\right\}$$
そして, これをそのまま用いることにより$\Lambda$で添え字付けられた集合族$(A_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$の直積を次のように定めます.
$$\prod_{\lambda\in\Lambda}A_\lambda=\left\{x:\Lambda\to\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_\lambda\relmiddle|x(\lambda)\in A_\lambda\right\}$$
直積の元$x$によって定まる$x(\lambda)$を$x$の$\lambda$成分と呼び$x_\lambda$と書きます. そしてこれを用いて$x$自身を$(x_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$と表すこともできます.
誰もが聞いたことあるであろう選択公理はこの直積の性質の1つです. それは次のように書かれます.
$\Lambda\neq\emptyset$かつ全ての$\lambda\in\Lambda$について$X_\lambda\neq\emptyset$であるとき
$$\prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda\neq\emptyset.$$
直積の表現を直感的な言葉に直すと「どんなに多くてもそれのどれもが空でないならそれらから1つづつ取ってくることができる.」といった感じになります. 選択公理と呼ばれる理由がよく分かりますね.