第4問は積分問題のふりをした整数問題です.積分のことはあまり意識しなくてけっこうです.
整数 $a$, $b$, $c$ に関する次の条件 $(*)$ を考える.
\begin{equation}
\int_{a}^{c}(x^2+bx)dx = \int_{b}^{c}(x^2+ax)dx \cdots (*)
\end{equation}
整数 $a$, $b$, $c$ が $(*)$ および $a\ne b$ をみたすとき,$c$ は $3$ の倍数であることを示せ.
$c=3600$ のとき,$(*)$ および $a< b$ をみたす整数の組 $(a,b)$ の個数を求めよ.
深く考えずに積分計算をした方が幸せです.
$(*)$ の両辺を計算すると,
\begin{align}
\mbox{左辺}&=\left[\frac{1}{3}x^3+\frac{b}{2}x^2\right]_{a}^{c}=\frac{1}{3}(c^3-a^3)+\frac{b}{2}(c^2-a^2)\\
\mbox{左辺}&=\left[\frac{1}{3}x^3+\frac{a}{2}x^2\right]_{b}^{c}=\frac{1}{3}(c^3-b^3)+\frac{a}{2}(c^2-b^2)
\end{align}
となるので,左辺 $-$ 右辺 を計算すると,
\begin{align}
\mbox{左辺}-\mbox{右辺}
&=\frac{1}{3}(b^3-a^3)+\frac{c^2}{2}(b-a)+\frac{ab}{2}(b-a)\\
&=\frac{1}{6}(b-a)\{2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab\}
\end{align}
である.$\mbox{左辺} = \mbox{右辺}$ すなわち $\mbox{左辺} - \mbox{右辺} = 0$ であることから,$(b-a)\{2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab\}=0$ であるが,$a\ne b$ より $2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab=0$ である.
さて,この式から $2(b-a)^2 = -3c^2 - 9ab = -3(c^2 + 3ab)$ と変形でき,$a$, $b$, $c$ は整数であることから右辺は $3$ の倍数であるので,$(b-a)^2$ は $3$ の倍数でなければならない.したがって,$b-a$ も $3$ の倍数でなければならない.
そこで,ある整数 $p$ を用いて $b-a=3p$ と表すと,$3c^2 = -18p^2 - 9ab$ すなわち $c^2 = -6p^2 - 3ab = -3(2p^2-ab)$ であることから $c^2$ は $3$ の倍数でなければならないので,$c$ も $3$ の倍数でなければならない.
$2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab=0$ から $2a^2 + 5ab + 2b^2 = -3c^2$ であるが,$2a^2 + 5ab + 2b^2 = (2a + b)(a + 2b)$ であるので,$(2a + b)(a + 2b) = -3c^2 = -3\times 3600^2$ である.
さてここで,$(a+2b)-(2a+b)=b-a>0$ であるが,(1) から $c$ が $3$ の倍数であるとき $b-a$ も $3$ の倍数であるので,$a+2b$ と $2a+b$ をそれぞれ $3$ で割った余りは等しい.また,$(a+2b)(2a+b)$ は $3$ の倍数であるので,$a+2b$ と $2a+b$ はともに$3$ の倍数である.
整数 $q$, $r$ (ただし $q>r$) に対して $a+2b=3q$, $2a+b=3r$ とおくと,$3(a+b)=3(q+r)$ より $a+b=q+r$ となり,$a=2r-q$, $b=2q-r$ と整数解 $(a,b)$ が得られるので,$(a+2b)(2a+b)=9qr=-3\times 3600^2$ すなわち $qr = -3\times 1200^2$ となる整数の組 $(q,r)$ の個数を求めればよい.
$qr<0$ かつ $q>r$ であることから,$q>0>r$ となるので,$q$ は $3\times 1200^2$ の正の約数である.そのそれぞれに整数 $r$ が$1$ つ定まるので,$qr = -3\times 1200^2$ となる整数の組 $(q,r)$ の個数は $3\times 1200^2$ の正の約数の個数に等しい.$3\times 1200^2=3\times(2^4\times 3\times 5^2)^2=2^8\times 3^3\times 5^4$ より,$3\times 1200^2$ の正の約数の個数は $9\times 4\times 5=180$個ある.よって,条件をみたす整数の組 $(a,b)$ の個数は $180$個である.
この問題はあまりきれいに解こうと考えない方がいいです.素直に積分の計算をして,$a$, $b$, $c$ からなる方程式を出してみることです.考えるのはそれから.
実際に $2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab=0$ という方程式を出してみると,$2(a^2+ab+b^2)$ 以外の項は $3$ の倍数なので,$a$ と $b$ に関して何か条件が定まることが予想されます.そこで,$a^2+ab+b^2$ の部分から $(a+b)^2$ か $(b-a)^2$ の形を無理やり作って残りの形を見たくなると思います.
上記の (1) はそのような考えに基づいて変形しております.あとは自然な議論で進めています.
後半である (2) は $c$ に具体的な値が代入されているので,$2a^2+5ab+2b^2$ の部分を積の形で表したいと考えて因数分解を行っています.これは整数問題の定石ともいえる手法です.
そのことさえ分かれば,あとは難しい議論ではないと思います.とはいえ,整数問題は昔から鬼門であり,(2) どころか (1) でつまずいた受験生も多かったかもしれません.