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【大阪大学2021年度前期入試数学(理系)第4問】積分の皮をかぶった整数問題

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第4問は積分問題のふりをした整数問題です.積分のことはあまり意識しなくてけっこうです.

問題

整数 $a$, $b$, $c$ に関する次の条件 $(*)$ を考える.
\begin{equation} \int_{a}^{c}(x^2+bx)dx = \int_{b}^{c}(x^2+ax)dx    \cdots  (*) \end{equation}

  1. 整数 $a$, $b$, $c$$(*)$ および $a\ne b$ をみたすとき,$c$$3$ の倍数であることを示せ.

  2. $c=3600$ のとき,$(*)$ および $a< b$ をみたす整数の組 $(a,b)$ の個数を求めよ.

解答解説

深く考えずに積分計算をした方が幸せです.

(1) の解答

$(*)$ の両辺を計算すると,
\begin{align} \mbox{左辺}&=\left[\frac{1}{3}x^3+\frac{b}{2}x^2\right]_{a}^{c}=\frac{1}{3}(c^3-a^3)+\frac{b}{2}(c^2-a^2)\\ \mbox{左辺}&=\left[\frac{1}{3}x^3+\frac{a}{2}x^2\right]_{b}^{c}=\frac{1}{3}(c^3-b^3)+\frac{a}{2}(c^2-b^2) \end{align}
となるので,左辺 $-$ 右辺 を計算すると,
\begin{align} \mbox{左辺}-\mbox{右辺} &=\frac{1}{3}(b^3-a^3)+\frac{c^2}{2}(b-a)+\frac{ab}{2}(b-a)\\ &=\frac{1}{6}(b-a)\{2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab\} \end{align}
である.$\mbox{左辺} = \mbox{右辺}$ すなわち $\mbox{左辺} - \mbox{右辺} = 0$ であることから,$(b-a)\{2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab\}=0$ であるが,$a\ne b$ より $2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab=0$ である.

さて,この式から $2(b-a)^2 = -3c^2 - 9ab = -3(c^2 + 3ab)$ と変形でき,$a$, $b$, $c$ は整数であることから右辺は $3$ の倍数であるので,$(b-a)^2$$3$ の倍数でなければならない.したがって,$b-a$$3$ の倍数でなければならない.

そこで,ある整数 $p$ を用いて $b-a=3p$ と表すと,$3c^2 = -18p^2 - 9ab$ すなわち $c^2 = -6p^2 - 3ab = -3(2p^2-ab)$ であることから $c^2$$3$ の倍数でなければならないので,$c$$3$ の倍数でなければならない.

(2) の解答

$2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab=0$ から $2a^2 + 5ab + 2b^2 = -3c^2$ であるが,$2a^2 + 5ab + 2b^2 = (2a + b)(a + 2b)$ であるので,$(2a + b)(a + 2b) = -3c^2 = -3\times 3600^2$ である.

さてここで,$(a+2b)-(2a+b)=b-a>0$ であるが,(1) から $c$$3$ の倍数であるとき $b-a$$3$ の倍数であるので,$a+2b$$2a+b$ をそれぞれ $3$ で割った余りは等しい.また,$(a+2b)(2a+b)$$3$ の倍数であるので,$a+2b$$2a+b$ はともに$3$ の倍数である.

整数 $q$, $r$ (ただし $q>r$) に対して $a+2b=3q$, $2a+b=3r$ とおくと,$3(a+b)=3(q+r)$ より $a+b=q+r$ となり,$a=2r-q$, $b=2q-r$ と整数解 $(a,b)$ が得られるので,$(a+2b)(2a+b)=9qr=-3\times 3600^2$ すなわち $qr = -3\times 1200^2$ となる整数の組 $(q,r)$ の個数を求めればよい.

$qr<0$ かつ $q>r$ であることから,$q>0>r$ となるので,$q$$3\times 1200^2$ の正の約数である.そのそれぞれに整数 $r$$1$ つ定まるので,$qr = -3\times 1200^2$ となる整数の組 $(q,r)$ の個数は $3\times 1200^2$ の正の約数の個数に等しい.$3\times 1200^2=3\times(2^4\times 3\times 5^2)^2=2^8\times 3^3\times 5^4$ より,$3\times 1200^2$ の正の約数の個数は $9\times 4\times 5=180$個ある.よって,条件をみたす整数の組 $(a,b)$ の個数は $180$個である.

感想

この問題はあまりきれいに解こうと考えない方がいいです.素直に積分の計算をして,$a$, $b$, $c$ からなる方程式を出してみることです.考えるのはそれから.

実際に $2(a^2+ab+b^2)+3c^2+3ab=0$ という方程式を出してみると,$2(a^2+ab+b^2)$ 以外の項は $3$ の倍数なので,$a$$b$ に関して何か条件が定まることが予想されます.そこで,$a^2+ab+b^2$ の部分から $(a+b)^2$$(b-a)^2$ の形を無理やり作って残りの形を見たくなると思います.

上記の (1) はそのような考えに基づいて変形しております.あとは自然な議論で進めています.

後半である (2) は $c$ に具体的な値が代入されているので,$2a^2+5ab+2b^2$ の部分を積の形で表したいと考えて因数分解を行っています.これは整数問題の定石ともいえる手法です.

そのことさえ分かれば,あとは難しい議論ではないと思います.とはいえ,整数問題は昔から鬼門であり,(2) どころか (1) でつまずいた受験生も多かったかもしれません.

投稿日:2021515
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投稿者

名前はトムヤムクン(TomYumGoong)と読みます.仕事で数学を使う電子・情報系人間.塾講師とは違った立場で気楽に,主に中学入試の算数と大学入試の数学の問題を眺めていこうと思っています.

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