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【京都大学2021年度前期入試数学(文系)第1問】ホントに教科書の演習問題レベル

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京都大学の理系の問題が全問終わりましたので,引き続き文系の問題を取り上げたいと思います.最初の問題は基本問題演習です.

問題

次の各問に答えよ.

問1 $10$進法で表された数 $6.75$$2$進数で表せ.また,この数と $2$進法で表された数 $101.0101$ との積として与えられる数を $2$進法および $4$進法で表せ.

問2 $\triangle \mathrm{OAB}$ において $\mathrm{OA} = 3$$\mathrm{OB} = 2$$\angle \mathrm{AOB} = 60^\circ$ とする.$\triangle \mathrm{OAB}$ の垂心を H とするとき,$\overrightarrow{\rm OH}$$\overrightarrow{\rm OA}$$\overrightarrow{\rm OB}$ を用いて表せ.

解答解説

理系と同様,全くの別分野の基本問題が2問,組み合わされた小問集です.

問1 の解答

この問題は何を試したいのでしょうか.よくわからないですが,言われたとおりに $6.75$$2$進法で表すと,$6.75 = 2^2 + 2^1 + \displaystyle\frac{1}{2} + \frac{1}{2^2}$ なので,$110.11$ となります。

真面目に解き方を説明しておくと,整数部分は $2$で割った商と余りに分けて,商をさらに $2$で割って商と余りに分けて,を商が $0$ になるまでくり返し,出てきた余りを下位ビットから並べればおしまいです.

今回は $6$ なので,$6$$2$ で割って $3$ 余り $0$$3$$2$ で割って $1$ 余り $1$$1$$2$ で割って $0$ 余り $1$,でおしまい.あとは出てきた余りを下位から並べると $110$ です.

小数部分は,2倍したときの整数部分を最下位ビットに書く(整数部分が$1$のときには取り除く)ことを,$0$ になるまで繰り返します.

今回は $0.75$ なので,$0.75$$2$倍して $1.5$ なので最下位に $1$ を書いて,残りの $0.5$$2$倍します.すると $1$ となるので,最下位に $1$ を書いて,残りが $0$ になったのでおしまい.

なので,$110.11$ となります.

次はかけ算.$2$進法で $110.11 \times 101.0101$ を求めると次のようになります.

!FORMULA[51][36182][0]進数の掛け算 $2$進数の掛け算

したがって,2進法では $100011.110111$ となり,これを $4$進法に直すには小数点を基準に2ビットずつに区切って直せばいいので,$4$進法では $203.313$ となります.

問2 の解答

点 A から直線 OB に下した垂線の足を N と,点 B から直線 OA に下した垂線の足を M とおくと,$\triangle \mathrm{OMB}$$\angle \mathrm{M}$ が直角の三角形で,斜辺 $\mathrm{OB} = 2$ なので,$\mathrm{OM} = \mathrm{OB} \cos 60^\circ = 1$ となり,$\triangle \mathrm{ONA}$$\angle \mathrm{M}$ が直角の三角形で,斜辺 $\mathrm{OB} = 3$ なので,$\mathrm{ON} = \mathrm{OA} \cos 60^\circ = \displaystyle\frac{3}{2}$ となります.

ということは,
\begin{align} \overrightarrow{\rm OM} &= \frac{\mathrm{OM}}{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\rm OA} = \frac{1}{3}\overrightarrow{\rm OA},\\ \overrightarrow{\rm ON} &=\frac{\mathrm{ON}}{\mathrm{OB}}\cdot\overrightarrow{\rm OB} =\frac{3}{4}\overrightarrow{\rm OB} \end{align}
となります.

H は直線 AN と BM の交点であるので,ベクトル $\overrightarrow{\rm OH}$ は実数 $s$, $t$ を用いて次のようにおけます.
\begin{align} \overrightarrow{\rm OH} &= s\ \overrightarrow{\rm OM} + (1-s)\ \overrightarrow{\rm OB} = \frac{s}{3}\ \overrightarrow{\rm OA} + (1-s)\ \overrightarrow{\rm OB}\\ \overrightarrow{\rm OH} &= t\ \overrightarrow{\rm OA} + (1-t)\ \overrightarrow{\rm ON} = t\ \overrightarrow{\rm OA} + \frac{3(1-t)}{4}\ \overrightarrow{\rm OB} \end{align}
$\overrightarrow{\rm OA}$$\overrightarrow{\rm OB}$ は平行でないことから,$\overrightarrow{\rm OH}$$2$つの式の係数は等しいので,$\displaystyle\frac{s}{3} = t$$1-s = \displaystyle\frac{3(1-t)}{4}$ が成立し,2式から $s$, $t$ を求めると,$s =\displaystyle\frac{1}{3}$, $t = \displaystyle\frac{1}{9}$ となります.

これを上式に代入して,$\overrightarrow{\rm OH} = \displaystyle\frac{1}{9}\overrightarrow{\rm OA} + \frac{2}{3}\overrightarrow{\rm OB}$ が答えです.

感想

試験開始 10分で終わらせましょう.それがこの問題の全てです.

ひとこと言わせてもらうならば,問1 はある意味で算数です.数学ではありません.単純に計算問題なので.

私は情報系の人間なので,上記の通りに $2$進法のままで計算するし,$2$進法から $4$進法への変換もビットを区切っておしまいです.これでバツをつけられる筋合いはないと思っているのですが,数学の先生はどのように採点するのでしょうか?

そのあたりの基準が分からないので,簡単であるというだけではなく,不用意であるという点でも本問は駄作であると言わざるを得ません.

問2 については次のように解く方法もあるかと思います.

$\overrightarrow{\rm OA}$$\overrightarrow{\rm OB}$ は平行ではないので,$\overrightarrow{\rm OH} = s\ \overrightarrow{\rm OA} + t\ \overrightarrow{\rm OB}$ とおくことができ,H は垂心であるので $\overrightarrow{\rm OH}\cdot\overrightarrow{\rm AB} = 0$ かつ $\overrightarrow{\rm AH}\cdot\overrightarrow{\rm OB} = 0$ が成り立つ.

$\overrightarrow{\rm AB} = \overrightarrow{\rm OB} - \overrightarrow{\rm OA}$, $\overrightarrow{\rm AH} = \overrightarrow{\rm OH} - \overrightarrow{\rm OA} = (s - 1)\cdot \overrightarrow{\rm OA} + t\ \overrightarrow{\rm OB}$ であり,$\overrightarrow{\rm OA}\cdot\overrightarrow{\rm OB} = 3 \times 2 \times \cos 60^\circ = 3$ であるので,
\begin{align} \overrightarrow{\rm OH}\cdot\overrightarrow{\rm AB} &=(s\ \overrightarrow{\rm OA}+t\ \overrightarrow{\rm OB})\cdot(\overrightarrow{\rm OB}-\overrightarrow{\rm OA}) =3s - 9s + 4t - 3t = -6s + t = 0\\ \overrightarrow{\rm AH}\cdot\overrightarrow{\rm OB} &=\{(s-1)\cdot\overrightarrow{\rm OA}+t\ \overrightarrow{\rm OB}\}\cdot\overrightarrow{\rm OB} =3(s-1)+4t=3s+4t-3=0 \end{align}
が成り立つ.

これを解くと,$s = \displaystyle\frac{1}{9}$, $t = \displaystyle\frac{2}{3}$ となるので,$\overrightarrow{\rm OH}=\displaystyle\frac{1}{9}\overrightarrow{\rm OA}+\frac{2}{3}\overrightarrow{\rm OB}$ が得られます.

投稿日:2021515

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投稿者

名前はトムヤムクン(TomYumGoong)と読みます.仕事で数学を使う電子・情報系人間.塾講師とは違った立場で気楽に,主に中学入試の算数と大学入試の数学の問題を眺めていこうと思っています.

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