分数階Fourier変換
分数階Fourier変換(Fractional Fourier transform)の紹介をします.
分数階Fourier変換の積分表示
に対し, 1次元のFourier変換を周波数タイプで定義しておきます:
つまり, は周波数(Hz)の性質を持っています. 周波数タイプのは定数倍のズレがない上のユニタリー作用素でした.
また, Fourier変換には以下のような4周期の自己同型性がありました:
ここでは時間反転のパリティ作用素です. この矢印の狭間に向かう作用素として分数階Fourier変換(FrFT)を定義しましょう. つまり, FrFTは関数を時間空間と周波数空間の†狭間の世界†に送ります.
あまり難しい話をしても疲れるので, の固有関数は次のHermite-Gauss関数であることを認めておきましょう:
ここで, Hermite-Gauss関数とはRodriguesの公式によるHermite多項式
を用いて
で定義されるものです.
次の一般化は妥当でしょう.
この定義だけを見れば, FrFTは固有関数の選び方に依っています. しかし, 実はHermite-Gauss関数系はの正規直交基底になっています! 量子論などでHermite多項式の直交性などを見たことがある人にとっては「そうなんだ」となりますが, そうでない人にとっては驚きでしょう.
つまり, 任意の関数は
と展開することができます. この両辺にFrFT-1のを作用させることで, 形式的に
を得ます.
積分核を具体的に計算すれば, 陽なFrFTの定義を得ることができますが, 果たしてこんなものを計算できるのでしょうか?
実は, Mehlerの公式という素晴らしいものが存在していて, これを助けてくれます. Mehler核の証明は省略しますが, 結果として次を得ます.
FrFT-2
積分核は以下で表される:
これを用いて,階のFrFTは次で表される:
積分核はの値による特異性を持つため, を整数として以下のように場合分けをしておきましょう:
でデルタ関数なんて絶対許さないマンは積分核表示をしなければ回避できます. また, 文献によってはとし,階で考えることもあります. 根号における偏角を気にするならばで主値を選びましょう.
のとき
通常のFourier変換と一致して欲しい! を書き下すと
となり, 確かに一致しました! ただし, としたことに注意しましょう.