阪大(理系)の数学も最後の1問となりました.曲線 $y=\sin x$ と $2$ 箇所で接する直線の特徴づけを行う問題ですが,得られた式をどのように処理するかがポイントです.
次の問に答えよ.
$a$ を実数とする.$x$ についての方程式 $x - \tan x = a$ の実数解のうち,$|x|<\displaystyle\frac{\pi}{2}$ をみたすものがちょうど $1$ 個あることを示せ.
自然数 $n$ に対し,$x-\tan x=n\pi$ かつ $|x|<\displaystyle\frac{\pi}{2}$ をみたす実数 $x$ を $x_n$ とおく.$t$ を $|t|<\displaystyle\frac{\pi}{2}$ をみたす実数とする.このとき,曲線 $C: y=\sin x$ 上の点 $P(t, \sin t)$ における接線が,不等式 $x\geqq \displaystyle\frac{\pi}{2}$ の表す領域に含まれる点においても曲線 $C$ と接するための必要十分条件は,$t$ が $x_1, x_2, x_3,\ldots$ のいずれかと等しいことであることを示せ.
とりあえず,$f(x)=x-\tan x$ とおいて $f(x)$ を微分してみます.
\begin{equation}
f'(x)=1 - \frac{\cos^2 x+\sin^2 x}{\cos^2 x}=-\frac{\sin^2 x}{\cos^2 x}=-\tan^2 x\leqq 0
\end{equation}
となります.
したがって,$f(x)$ は $|x|<\displaystyle\frac{\pi}{2}$ の範囲で単調減少関数であり,$\displaystyle\lim_{x\to-\frac{\pi}{2}+0}f(x)=+\infty$ かつ $\displaystyle\lim_{x\to+\frac{\pi}{2}-0}f(x)=-\infty$ であるので,任意の実数 $a$ に対して $f(x) = x - \tan x = a$ かつ $|x|<\displaystyle\frac{\pi}{2}$ をみたす実数解 $x$ はちょうど $1$ 個である.
点$P$ における 曲線 $C$ の接線が 点$Q (s,\sin s)$ (ただし$s\geqq \displaystyle\frac{\pi}{2}$) でも接すると仮定する.このとき,$y'=\cos x$ であることから,$P$ における $C$ の接線の方程式は
\begin{equation}
y=(\cos t)(x-t)+\sin t=(\cos t)x + (\sin t - t\cos t),
\end{equation}
$Q$ における $C$ の接線の方程式は
\begin{equation}
y=(\cos s)(x-s)+\sin s = (\cos s)x + (\sin s - s\cos s)
\end{equation}
で表される.こられ $2$ つの方程式が同一になればよいので
\begin{align}
\cos t&=\cos s,\\
\sin t - t\cos t&=\sin s - s\cos s
\end{align}
である.したがって,$\cos t=\cos s$, $|t|<\displaystyle\frac{\pi}{2}$, $s \geqq \displaystyle \frac{\pi}{2}$ より, ある自然数 $n$ に対して $s=t+2n\pi$ もしくは $s = -t + 2n\pi$ である.
$s=t+2n\pi$ のとき,$\sin t - t\cos t=\sin s - s\sin s$ に代入すると,
\begin{align}
\sin t - t\cos t
&= \sin(t+2n\pi) - (t+2n\pi)\cos(t+2n\pi)\\
&= \sin t - (t+2n\pi)\cos t
\end{align}
から $\cos t=0$ となるが,$|t|<\displaystyle\frac{\pi}{2}$ であるとき $\cos t \ne 0$ であり,条件を満たす $t$ は存在しない.
$s=-t+2n\pi$ のとき,$\sin t - t\cos t = \sin s - s\cos s$ に代入すると,
\begin{align}
\sin t - t\cos t
&= \sin(-t+2n\pi) - (-t+2n\pi)\cos(-t+2n\pi)\\
&=-\sin t - (-t+2n\pi)\cos t
\end{align}
であるので,$2(\sin t-t\cos t)=-2n\pi\cos t$ が得られ,両辺を $-2\cos t < 0$ で割ると $t - \tan t=n\pi$ が得られる.したがって,$t=x_n$である.
以上のことから,$t$ は $x_1,x_2,x_3,\ldots$ のいずれかである.
逆に,$t$ が $x_1,x_2,x_3,\ldots$ のいずれかであるならば,$t=x_n$ である自然数 $n$ が存在し,$s=-x_n + 2n\pi$ とおくことで,今の逆の議論から $\cos t = \cos s$ かつ $\sin t - t\cos t = \sin s - s\sin s$ が成り立ち,$P$ と $Q$ における $C$ の接線の方程式は等しくなる.
よって,曲線 $C: y=\sin x$ 上の点 $P(t, \sin t)$ における接線が,不等式 $x\geqq \displaystyle\frac{\pi}{2}$ の表す領域に含まれる点においても曲線 $C$ と接するための必要十分条件は,$t$ が $x_1, x_2, x_3,\ldots$ のいずれかと等しいことである.
$\cos t = \cos s$ かつ $\sin t - t\cos t=\sin s - s\cos s$ が得られてからどのように処理するかが問題となりそうですが,書き方はいろいろとあれど,基本的には解答のように,$\cos t = \cos s$ から $s$ を $t$ を用いて表して,そこからもう一方の式に代入する方法を取ることになると思います.
問題の難しさとしては,途中までは特に困難な点は見当たらず,とにかく最後の処理だけだと思います.