という意味です.
これはつまり,
準同型写像とは簡単に言うと構造を保つ写像のことで,今の場合環
が成り立つことをいいます.つまり,足し算掛け算してから写像で写したものと,写してから足し算掛け算したものが同じになる,という意味です.また準同型の核
と定義されます.つまり,
線形写像やその核(や像)といった言葉は大学の線形代数などで聞き馴染みのあるかもしれませんが,環の準同型やその核はそれらの類似および拡張された概念です.
さて,どのようなものが核に含まれるでしょうか?一番簡単なものは
となるので
ここで,実は
明らかに
となる.これは
という関係式で変数のリダクションを行うので,
と計算され,上記の
さて
となる.ここで,
以上で命題を示すことができました.
さて,このようにして求めた
cuspidal curve
となります.
という対応関係から
さらに,原点付近を見てもらえれば分かる通り,この曲線は原点において尖った形をしています.このような点を尖点(cusp)と言います(詳細な定義は割愛[2]).
この曲線は尖点以外の点では接線が一つに定まります.例えば
(1,1)での接線
赤色の線を接線として1つ得ることができます.しかし,原点では接線が2重になった形で出てきてしまいます.
(0,0)での接線
「おい,基底.どう見ても1本じゃねえかタコすけぇ!」と言われてしまうかもしれませんが,上からくる接線と下からくる接線がだんだんと原点に近づく様子を考えると,ちょうど原点で2本重なっている気持ちを分かってもらえると思います.
このように,接線が2本以上で重なったり交わったりしてしまうような点を特異点と言います.正しくは,曲線の特異点は
となるので
となり,
曲線や曲面といった,方程式で表すことができる図形を一般化した概念を代数多様体と言いますが,それが特異点をもたないとき,その代数多様体は非特異(nonsingular)である,あるいは滑らか(smooth)であるといいます.
以下は発展的な内容を含みますので,特に興味のない方は読み飛ばしてください.
広中の定理から,標数0の体上の任意の代数多様体は非特異多様体と双有理同値になります.つまり,特異点を持つ曲線や曲面などは,(双)有理写像という特殊な写像で非特異なものに写すことができるということです.このような操作を特異点解消といいます.
一般の代数多様体はブローアップという操作を有限回行うことにより特異点を解消することができますが,今回は正規化という操作で特異点を解消してみたいと思います.
を満たす時,つまり
となるので,
一般の代数多様体について,それが非特異であればその座標環は整閉整域になりますが,曲線の場合は特に非特異であることと座標環が整閉整域であることは同値になります.
ここで
を考えます.すると右辺は
という同型射により
以上の操作により,
特異点解消は代数幾何学の主要なテーマであるだけでなく,超関数論や統計学と結びつくことにより,情報幾何や機械学習などさまざまな応用が研究されている[3]対象です.詳しい話は全然わかりませんが一説によると人間の脳の中には特異点があり,人間はその特異点をうまく解消しているんだとか.ワクワクしますね.
今回は簡単な問題を通じて代数幾何学の一つの側面をざっと通して見てみました.代数幾何学とはこのように,「方程式や環・体」といった代数的構造と,「曲線や曲面あるいは空間」といった幾何的構造の対応関係を以て互いの性質を研究するという分野です.
これからも継続して記事を書いていきますので,もし興味があればMathlogおよびTwitterのフォローをよろしくお願い致します.