今回から5回にわたって東工大の入試問題を取り上げます.最初の問題は調和数に似ていますが,調和数が発散する一方,この和は有界です.
問題
正の整数に関する条件
(*) 進法で表したときに,どの位にも数字が現れない}
を考える.以下の問に答えよ.
を正の整数とするとき, 以上かつ 未満であって条件(*)を満たす正の整数の個数を とする.このとき, を の式で表せ.
正の整数 に対して,
とおく.このとき,すべての正の整数 に対して次の不等式が成り立つことを示せ.
解答解説
どちらも簡単です.迷う余地がないと思います.
(1) の解答
最上位桁は ~ までの任意の数字が使え,それ以外の桁は ~ までの任意の数字が使えるので, 以上かつ 未満の正の整数,すなわち, 桁の正の整数で条件(*)を満たすものは 個存在します.
(2) の解答
任意の正の整数 に対して, であるならば であることに注意すると,
となり不等式が証明されました.ここで, であることに注意してください.
感想
正直ガッカリです.その一言につきます.
出身大学ということもあり,どうしても厳しめに評価してしまうかもしれませんが,それを差し引いても東工大でこの問題はないでしょう.バカにしすぎです.
この問題は (1) なしでも成立すると思います.(1) がないとかなりハードルが上がりますが,受験生の 割くらいは解けると思います.逆に,割も解けないとしたら,それはそれでガッカリです.というか,日本は大丈夫なのか深刻になります.
さて,この問題を見て調和数(harmonic number)を思い浮かべた方も多いかと思います.番目の調和数 は
として定義され, と近似されます.ここで, は自然対数です.実際, が証明できます.教科書レベルの問題ですので,解いてみてください.
ということで, は とすると発散するのですが,問題は を含まない整数のみ逆数をとり,それ以外を として 部分和を取ると,任意の に対して有界である(ので無限和は収束する)ことを示しています.
そのあたりの事実は面白いかもしれないし,その証明も易しい.その意味で数学的に綺麗ですが,入試としては易しすぎました.