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【東京工業大学2021年度前期入試数学第1問】調和数に似た収束する逆数和

2027
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今回から5回にわたって東工大の入試問題を取り上げます.最初の問題は調和数に似ていますが,調和数が発散する一方,この和は有界です.

問題

正の整数に関する条件

 (*) 10進法で表したときに,どの位にも数字9が現れない}

を考える.以下の問に答えよ.

  1. k を正の整数とするとき,10k1 以上かつ 10k 未満であって条件(*)を満たす正の整数の個数を ak とする.このとき,akk の式で表せ.

  2. 正の整数 n に対して,
       bn={1n(n が条件(*)を満たすとき) 0  (n が条件(*)を満たさないとき)
    とおく.このとき,すべての正の整数 k に対して次の不等式が成り立つことを示せ.
       n=110k1bn<80

解答解説

どちらも簡単です.迷う余地がないと思います.

(1) の解答

最上位桁は 18 までの任意の数字が使え,それ以外の桁は 08 までの任意の数字が使えるので,10k1 以上かつ 10k 未満の正の整数,すなわち,k 桁の正の整数で条件(*)を満たすものは ak=8×9k1 個存在します.

(2) の解答

任意の正の整数 i に対して, 10i1n<10i であるならば 1n10i+1 であることに注意すると,
n=110k1bn=i=1kn=10i110i1bni=1kai×10i+1=8×i=1k(910)i1=8×1(910)k1910<80
となり不等式が証明されました.ここで,(910)k>0 であることに注意してください.

感想

正直ガッカリです.その一言につきます.

出身大学ということもあり,どうしても厳しめに評価してしまうかもしれませんが,それを差し引いても東工大でこの問題はないでしょう.バカにしすぎです.

この問題は (1) なしでも成立すると思います.(1) がないとかなりハードルが上がりますが,受験生の 2割くらいは解けると思います.逆に,1割も解けないとしたら,それはそれでガッカリです.というか,日本は大丈夫なのか深刻になります.

さて,この問題を見て調和数(harmonic number)を思い浮かべた方も多いかと思います.n番目の調和数 Hn
   Hn=1+12+13++1n
として定義され,Hnlnn と近似されます.ここで,ln は自然対数です.実際,lnnHnlnn+1 が証明できます.教科書レベルの問題ですので,解いてみてください.

ということで,Hnn とすると発散するのですが,問題は 9 を含まない整数のみ逆数をとり,それ以外を 0 として n 部分和を取ると,任意の n に対して有界である(ので無限和は収束する)ことを示しています.

そのあたりの事実は面白いかもしれないし,その証明も易しい.その意味で数学的に綺麗ですが,入試としては易しすぎました.

投稿日:2021527
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投稿者

TomYum君
TomYum君
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名前はトムヤムクン(TomYumGoong)と読みます.仕事で数学を使う電子・情報系人間.塾講師とは違った立場で気楽に,主に中学入試の算数と大学入試の数学の問題を眺めていこうと思っています.

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