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積分解説6 ∫[0,π/2]log(x^2+log^2cosx)dx

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この記事では, 以下の美しい積分の証明をしようと思います. 実は積分botさんにあった積分なのですが, 現在積分botさんが不調のようですので, このような形での紹介となります. 証明はオリジナルです.

0π2log(x2+log2cosx)dx=πloglog2

(証明)

以下, a(1+e2ix)=2aeixcosx即ち
log(a(1+e2ix))=ix+log(2acosx)(|x|<π2)
に注意します. さらに, logz=log|z|+iargzですから,
log(x2+log2(2acosx))=2Reloglog(a(1+e2ix))
であることを利用していきます.

関数f(z)=loglogzzaを積分することを考えます. 円弧z=a(1+e2ix)に沿って積分すれば求める形を作ることができます.

ただし, logの偏角を|argz|<πとなるようにとります. 従って, f(z)は実軸上の区間(,1]を除いた領域で正則となります.

また, 区間(0,1)の近くでのloglogzの値について, 0<x<1に対して
loglog(x±0i)=log(log1x±0i)=loglog1x±iπ
となることに注意します. (x+0iは実軸より無限小だけ上であることを表します.)

  1. 1<aのとき

以下のような積分路をとります.

積分路1 積分路1

まず円弧上では, z=a(1+e2ix)(x:π2π2)と置換すれば,
Cf(z)dz=π2π2loglog(a(1+e2ix))ae2ix2iae2ixdx=20π2log(x2+log2(2acosx))dx
となります. (虚部は明らかに奇関数であることを用いました.)

次に区間(0,1)の上下の積分は,
(+0i1+0i+10i0i)f(z)dz=01loglog1x+iπxadx+10loglog1xiπxadx=2πi01dxxa=2πilog(11a)
となります.

最後に, z=aでの留数はResz=af(z)=loglogaです.

以上より,
0π2log(x2+log2(2acosx))dx=πloglogaπlog(11a)=πlogloga11a
を得ます.

  1. 12<a<1のとき

以下のような積分路をとります.

積分路2 積分路2

円弧上の積分は[1]と全く同様です.

今回は, 積分路上に極aが来ているので, 半径εの円に沿って積分し, ε0とします. (つまり, 区間(0,1)上の主値積分をとっていることになります)

aまわりの積分は, loglog1zzaの分に関しては通常の留数と同じように考えられるので, 2πiloglog1aとなります. ±iπzaの分に関しては, 今度は上側と下側で符号が変わるので, 打ち消しあって0になります.

最後に区間(0,1)の上下での主値積分は(loglogxが打ち消されることはもう分かるでしょう),

2πi p.v.01dxxa=2πilimε+0(0aε+a+ε1)dxxa=2πilog(1a1)

以上より,
0π2log(x2+log2(2acosx))dx=πloglog1a1a1
を得ます.

  1. 0<a<12 のとき

以下のような積分路をとります.

積分路3 積分路3

円弧上の積分と点aまわりの積分は上と全く同様です. 区間(0,2a)での主値積分は,

p.v.02adxxa=0
ですので,
0π2log(x2+log2(2acosx))dx=πloglog1a
を得ます.

以上の結果をまとめると,

0π2log(x2+log2(2acosx))dx={πloglog1a (0<a<12)πloglog1a1a1(12<a<1)πlogloga11a(1<a)

となります.

ここでa12として, (そもそもこれは極限を取るまでもなく[2]か[3]の議論に含めてしまえば良かったのですが)

0π2log(x2+log2cosx)dx=πloglog2
を得ます. 綺麗ですね.

読んでくださった方, ありがとうございました.

投稿日:202164
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投稿者

東大理数B4です

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