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積分解説6 ∫[0,π/2]log(x^2+log^2cosx)dx

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{asn}[0]{\hspace{16pt}(\mathrm{as}\ n\to\infty)} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{beq}[0]{\begin{eqnarray*}} \newcommand{c}[2]{{}_{#1}\mathrm{C}_{#2}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{cb}[0]{\binom{2n}{n}} \newcommand{d}[0]{\mathrm{d}} \newcommand{del}[0]{\partial} \newcommand{dhp}[0]{\dfrac{\pi}2} \newcommand{ds}[0]{\displaystyle} \newcommand{eeq}[0]{\end{eqnarray*}} \newcommand{ep}[0]{\varepsilon} \newcommand{G}[1]{\Gamma({#1})} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{hp}[0]{\frac{\pi}2} \newcommand{I}[0]{\mathrm{I}} \newcommand{l}[0]{\ell} \newcommand{limn}[0]{\lim_{n\to\infty}} \newcommand{limx}[0]{\lim_{x\to\infty}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{nck}[0]{\binom{n}{k}} \newcommand{p}[0]{\varphi} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{space}[0]{\hspace{12pt}} \newcommand{sumk}[1]{\sum_{k={#1}}^n} \newcommand{sumn}[1]{\sum_{n={#1}}^\infty} \newcommand{t}[0]{\theta} \newcommand{tc}[0]{\TextCenter} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

${}$

この記事では, 以下の美しい積分の証明をしようと思います. 実は積分botさんにあった積分なのですが, 現在積分botさんが不調のようですので, このような形での紹介となります. 証明はオリジナルです.

$$\int_0^\hp\log(x^2+\log^2\cos x)\,dx=\pi\log\log2$$

${}$

(証明)

以下, $a(1+e^{2ix})=2ae^{ix}\cos x$即ち
$$\log(a(1+e^{2ix}))=ix+\log(2a\cos x)\qquad(|x|<\hp)$$
に注意します. さらに, $\log z=\log |z|+i\arg z$ですから,
$$\log(x^2+\log^2(2a\cos x))=2\Re\log\log(a(1+e^{2ix}))$$
であることを利用していきます.
${}$

関数$\ds f(z)=\frac{\log\log z}{z-a}$を積分することを考えます. 円弧$z=a(1+e^{2ix})$に沿って積分すれば求める形を作ることができます.

ただし, $\log$の偏角を$|\arg z|<\pi$となるようにとります. 従って, $f(z)$は実軸上の区間$(-\infty,1]$を除いた領域で正則となります.

また, 区間$(0,1)$の近くでの$\log\log z$の値について, $0< x<1$に対して
$$\log\log(x\pm0i)=\log(\log\tfrac1x\pm0i)=\log\log\tfrac1x\pm i\pi$$
となることに注意します. ($x+0i$は実軸より無限小だけ上であることを表します.)
${}$

  1. $1< a$のとき

以下のような積分路をとります.

積分路1 積分路1

まず円弧上では, $z=a(1+e^{2ix})\quad(x:-\hp\to\hp)$と置換すれば,
$$\beq \int_C f(z)\,dz&=&\int_{-\hp}^\hp\frac{\log\log(a(1+e^{2ix}))}{ae^{2ix}}2iae^{2ix}\,dx\\[5pt] &=&2\int_0^\hp\log(x^2+\log^2(2a\cos x))\,dx \eeq$$
となります. (虚部は明らかに奇関数であることを用いました.)

次に区間$(0,1)$の上下の積分は,
$$\beq &&\left(\int_{+0i}^{1+0i}+\int_{1-0i}^{-0i}\right)f(z)\,dz\\[5pt] &=&\int_0^1\frac{\log\log\tfrac1x+i\pi}{x-a}\,dx+\int_1^0\frac{\log\log\tfrac1x-i\pi}{x-a}\,dx\\[5pt] &=&2\pi i\int_0^1\frac{dx}{x-a}\\[5pt] &=&2\pi i\log(1-\tfrac1a) \eeq$$
となります.

最後に, $z=a$での留数は$\mathrm{Res}_{z=a}f(z)=\log\log a$です.

以上より,
$$\beq \int_0^\hp\log(x^2+\log^2(2a\cos x))\,dx&=&\pi\log\log a-\pi\log(1-\tfrac1a)\\[5pt] &=&\pi\log\frac{\log a}{1-\tfrac1a} \eeq$$
を得ます.
${}$

  1. $\frac12< a<1$のとき

以下のような積分路をとります.

積分路2 積分路2

円弧上の積分は[1]と全く同様です.

今回は, 積分路上に極$a$が来ているので, 半径$\ep$の円に沿って積分し, $\ep\to0$とします. (つまり, 区間$(0,1)$上の主値積分をとっていることになります)

$a$まわりの積分は, $\ds\frac{\log\log\tfrac1z}{z-a}$の分に関しては通常の留数と同じように考えられるので, $-2\pi i\log\log\tfrac1a$となります. $\ds\frac{\pm i\pi}{z-a}$の分に関しては, 今度は上側と下側で符号が変わるので, 打ち消しあって$0$になります.

最後に区間$(0,1)$の上下での主値積分は($\log\log x$が打ち消されることはもう分かるでしょう),

$$\beq &&2\pi i\ \mathrm{p.v.}\int_0^1\frac{dx}{x-a}\\[5pt] &=&2\pi i\lim_{\ep\to+0}\left(\int_0^{a-\ep}+\int_{a+\ep}^1\right)\frac{dx}{x-a}\\[5pt] &=&2\pi i\log(\tfrac1a-1) \eeq$$

以上より,
$$\int_0^\hp\log(x^2+\log^2(2a\cos x))\,dx=\pi\log\frac{\log\tfrac1a}{\tfrac1a-1}$$
を得ます.
${}$

  1. $0< a<\frac12$ のとき

以下のような積分路をとります.

積分路3 積分路3

円弧上の積分と点$a$まわりの積分は上と全く同様です. 区間$(0,2a)$での主値積分は,

$$\mathrm{p.v.}\int_0^{2a}\frac{dx}{x-a}=0$$
ですので,
$$\int_0^\hp\log(x^2+\log^2(2a\cos x))\,dx=\pi\log\log\tfrac1a$$
を得ます.
${}$

以上の結果をまとめると,

$$\int_0^\hp\log(x^2+\log^2(2a\cos x))\,dx= \begin{cases} \pi\log\log\tfrac1a &(0< a<\tfrac12)\\[5pt] \pi\log\frac{\log\tfrac1a}{\tfrac1a-1} &(\tfrac12< a<1)\\[5pt] \pi\log\frac{\log a}{1-\tfrac1a} &(1< a)\\ \end{cases} $$

となります.

ここで$a\to\frac12$として, (そもそもこれは極限を取るまでもなく[2]か[3]の議論に含めてしまえば良かったのですが)

$$\int_0^\hp\log(x^2+\log^2\cos x)\,dx=\pi\log\log2$$
を得ます. 綺麗ですね.
${}$

読んでくださった方, ありがとうございました.

${}$

${}$

投稿日:202164

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投稿者

東大理数B4です

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