多様体論としてのLagrange未定乗数法のお話です。最近復習がてら考えたのでその覚書です。
$n$次元微分多様体$M$と$r$個の滑らかな関数$g_1,\cdots,g_r\in C^\infty(M)$を考えます。
さらに$a_1,\cdots,a_r\in\mathbb{R}$達ががそれぞれ$g_1,\cdots,g_r$達の正則値であるとすると、
\begin{align}
N:=\{p\in M;\ g_i(p)=a_i,\ (1\le i\le r) \}
\end{align}
は$n-r$次元(正規)部分多様体です。スカラー関数$f\in C^\infty(M)$の$N$に制限した臨界点、すなわち$df(T_pN)=0$を満たす点$p\in N$を求めることを考えましょう。
点$p\in N$が$df(T_pN)=0$を満たすとすると、ある$\lambda_i,\ (1\le i\le r)$があり、
\begin{align}
df|_p=\sum_{i=1}^r\lambda_idg_i|_p
\end{align}
が成り立ちます。逆にある点$p\in N$においてこの式が成り立てば、$df(T_pN)=0$となります。従って
\begin{align}
d(f+\sum_{i=1}^r\lambda_ig_i)=0,\\
g_i=a_i,\ (1\le i\le r)
\end{align}
を満たす$p\in M$を求めればよいことになります。これはLagrangeの未定乗数法そのものです。
さらに幾何学的解釈の役割を入れ替えることもできます。$\lambda_i$の中には0でないものが少なくとも一つはあるので、それを$\lambda_1$とします。すると点$p\in M$において、
\begin{align}
dg_1=-df-\mu_2dg_2-\cdots-\mu_rdg_r,\ \mu_i=\lambda_i/\lambda_1
\end{align}
が成り立ちます。これは、点$p\in M$が$f,g_i\ (2\le i\le r)$が一定となる部分多様体上での$g_1$の臨界点であることを意味します。
写像の臨界点として理解することもできます。$\varphi:M\rightarrow\mathbb{R}^{r+1}$を
\begin{align}
M\ni x\mapsto\varphi(p)=(f(x),g_1(x),\cdots,g_r(x))\in\mathbb{R}^{r+1}
\end{align}
と定義します。$p\in M$において、$df,dg_i$達が一次従属となるならば、$d\varphi|_p$は退化して、$p$は写像$\varphi$の臨界点となることが分かります。