たて$a$、よこ$b$、高さ$c$の直方体を考えます。その体積$V$、表面積$A$、辺の全長$L$は、下記の公式で表せます
$$ V=abc $$
$$ A=2(ab+bc+ca) $$
$$ L=4(a+b+c) $$
ここで、$V=A=L $となる直方体が存在するかどうかを考えてみましょう。
自明な直方体としては、大きさが$0$のとき、すなわち、$a=b=c=0$の直方体が、$V=A=L=0$となるので、存在します。
しかし、$ 0 $ より大きな直方体では、どうでしょうか?
$V>0$で、$V=A=L $となる直方体は存在しない
背理法を使って、この予想を証明します。
仮に、そのような直方体が存在するとしますと、
$V=L$を公式を用いて$a$について解いて、
$$a=\frac{4(b+c)}{bc-4} $$
$A=L$を公式を用いて$a$について解いて、
$$a=\frac{2(b+c)-bc}{b+c-2} $$
両者より、
$$ \frac{4(b+c)}{bc-4}
=\frac{2(b+c)-bc}{b+c-2} $$
両辺に$(bc-4)(b+c-2)$掛けて
$$ 4(b+c)(b+c-2)
=(2(b+c)-bc)(bc-4) $$
これを展開して、
$$ 4b^2+4bc-8b +4cb+4c^2-8c
=(2b^2c+2bc^2-b^2c^2- 8b-8c+4bc) $$
$b$についての二次方程式の形に変形します。
$$ (c^2-2c+4)b^2 +
2(-c^2+2c)b +
4c^2 = 0 $$
$b$が実数解を持つには、2次方程式の解の公式の判別式$D$が$0$より大きくないといけません。
$$D=(2(-c^2+2c))^2-4(c^2-2c+4) \cdot4c^2$$
$$= 4( (-c^2+2c)^2-4(c^2-2c+4)c^2 ) $$
$$= 4( c^4-4c^3+4c^2-4c^4+8c^3-16c^2) $$
$$= 4( -3c^4+4c^3-12c^2) $$
$$= 4c^2( -3c^2+4c-12) $$
ここで、$c$は、体積が$0$より大きい直方体の辺の長さ、すなわち$0$より大きい実数なので、$4c^2$は必ず正になります。
そうしますと、$D>0$であるためには、残りの$ (-3c^2+4c-12)$が$0$より大きければ、よいわけです。
しかし、式$-3c^2+4c-12$は、増減表を書くとわかりますが、$c$がどのような実数値をとっても、最大でも$-32/3$にしか到達できない、必ず負の値になる放物線なのです。
従って、直方体の辺の長さであるはずの$b$が実数ではないことになり、矛盾してしまいます。これで、最初においた$0$より大きい$V=A=L$の直方体が存在するという仮定が誤っていたことが示されました。
証明できましたので、予想は晴れて定理に昇格しました!
$V>0$で、$V=A=L $となる直方体は存在しない
$V=A$となる直方体は存在します。しかも、なんと辺の長さが自然数になる例が、いくつか知られています。
ポテト一郎さんの、(初学者には有害な)表面積の練習問題
$V=A=L$となる正多角柱は、$n$が$13$以上の正$n$角柱について、存在します。
https://twitter.com/aoki_taichi/status/1319355406490107904