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大学数学基礎解説
文献あり

メビウスの帯でストークスの定理が成り立たないことを計算で確かめてみる

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メビウスの帯(Möbius strip)は向き付け不可能な曲面として有名ですが、このような曲面に対してはストークス(Stokes)の定理が成り立ちません。このことを具体的に計算して確かめてみたいと思います。

まずメビウスの帯を用意します。次のパラメータ付けで与えられる曲面をAとおきます。
x(u,v)=(R+vcosu2)cosuy(u,v)=(R+vcosu2)sinuz(u,v)=vsinu2(0u2π,rvr,0<r<R)
このとき、境界Aを与える曲線は次のようにパラメータ付けできます。
x(t)=(R+rcost2)costy(t)=(R+rcost2)sintz(t)=rsint2(0t4π)
この曲線は曲面を左手にみるようになっています。少々複雑な式ですが、イメージとしてはドーナツに巻き付くように2周してもとに戻ってくる感じです。

さて、Aを含む領域で定義された1次微分形式φ
φ:=fdx+gdy:=yx2+y2dx+xx2+y2dy
とおきます。我々の目標は
AφAdφ (1)
を示すことですが、簡単な計算からdφ=(gxfy)dxdv=0ゆえに (1) の右辺は0なので、結局 (1) を示すには左辺の線積分が0でないことを示せばよいことになります。というわけで、左辺を具体的に計算してみます。まず
x(t)=r2sint2cost(R+rcost2)sinty(t)=r2sint2sint+(R+rcost2)costz(t)=r2cost2
なので
φ=sintR+rcost2dx+costR+rcost2dy={sintR+rcost2x(t)+costR+rcost2y(t)}dt=dt
となります。したがって (1) の左辺は
Aφ=04πdt=4π0
となり、(1) がいえました。

参考文献

[1]
梅原雅顕、山田光太郎, 曲線と曲面 —微分幾何的アプローチ— (改訂版)
投稿日:2021625
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