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数論的関数をマクローリン展開してみた

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はじめに

はじめまして、ねりまだいこんといいます。Mathlogにはじめて投稿します。よろしくお願いします。
$n$の約数の個数を返してくれる関数$d(n)$ 約数関数 と呼ばれています。もしも、この関数をマクローリン展開できたら・・・ということで、いろいろと考えてみました。

準備

自然数$n$を固定したとき、$n$以外の任意の自然数$m$について、
$$ f_n(x)= \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{2} 1 & x = n\\ 0 & x = m \end{array} \right. \end{eqnarray} $$
がなりたつ関数$f_n(x)$を考えます。$x$が自然数以外のときは、どんな値でも構いません。これを用いて、
$$ d^*(x) = \sum_{n=1}^\infty d(n) f_n(x) $$
と定義すれば、$d^*(x)$は自然数$k$において$d(k)$に一致します。このような関数$f$はいくらでも存在するわけですが、今回は
$$ f_n(x) = \frac{\sin^2(2\pi x)}{4\pi^2(x-n)^2}+\frac{\sin^2(2\pi x)}{4\pi^2(x+n)^2} $$
を選びます。
これはこんな形をしています。

!FORMULA[14][1414055007][0] $f_1(x)$

展開する

$x$が自然数のとき$d(n)$に一致する関数$d^*(x)$は、
$$ d^*(x) = \sum_{n=1}^\infty \left\{ \frac{\sin^2(2\pi x)}{4\pi^2(x-n)^2}+\frac{\sin^2(2\pi x)}{4\pi^2(x+n)^2}\right\}d(n) $$
と書けることになります。これを$x$についてマクローリン展開します。計算がすごい複雑なので結果だけ書くと、
$$ c_k^n = \sum_{s=1}^k (-1)^{s+1} (2k-2s+1) \frac{4(4\pi)^{2s-2}}{(2s)!} \frac{d(n)}{n^{2k-2s+2}} $$
として
$$ \begin{eqnarray} d^*(x) &=& \sum_{k=1}^\infty \left(\sum_{n=1}^\infty c_k^n \right) x^{2k} \\ &=& \sum_{k=1}^\infty \left\{ \sum_{n=1}^\infty \sum_{s=1}^k (-1)^{s+1} (2k-2s+1) \frac{4(4\pi)^{2s-2}}{(2s)!} \frac{d(n)}{n^{2k-2s+2}} \right\} x^{2k} \\ &=& \sum_{k=1}^\infty \left\{ \sum_{s=1}^k (-1)^{s+1} (2k-2s+1) \frac{4(4\pi)^{2s-2}}{(2s)!} \sum_{n=1}^\infty \frac{d(n)}{n^{2k-2s+2}} \right\} x^{2k} \end{eqnarray} $$
と書けます。ここで$d(n)$ ディリクレ級数 と呼ばれているものを使うと、 リーマンのゼータ関数 および ベルヌーイ数 を用いて、
$$ \sum_{n=1}^\infty \frac{d(n)}{n^{2a}} = \zeta(2a)^2 = \frac{(B_{2a})^2(2\pi)^{4a}}{4(2a)!^2} $$
と書けることが知られています。したがって
$$ d^*(x) = 4\sum_{n=1}^\infty \left\{ \sum_{k=1}^n (-1)^{k+1}(2n-2k+1) \frac{4^{2n-1} \pi^{4n-2k+2}}{(2k)!(2(n-k+1))!^2} (B_{2n-2k+2})^2 \right\}x^{2n} $$
となります。試しに数学ソフトで$n=90$で打ち切って計算した結果を図に示します。

!FORMULA[26][-396046153][0] $d^*(x)$
図から$d^*(1)=1$$d^*(2)=2$$d^*(3)=2$$d^*(4)=3$$d^*(5)=2$が読み取れ、自然数において約数の個数となることが確かめられます。収束が早くはないので、素数の判定などの実用的な用途には使えませんが、円周率やベルヌーイ数を使って約数の個数を計算できるってなんだかロマンを感じませんか。

一般化

さて一般化します。数論的関数$f$のディリクレ級数が$g(s)$であるとき、自然数において$f$と一致する関数$f^*(x)$
$$ f^*(x) = \sum_{k=1}^\infty \left\{ \sum_{s=1}^k (-1)^{s+1} (2k-2s+1) \frac{4(4\pi)^{2s-2}}{(2s)!} g(2k-2s+2) \right\} x^{2k} $$
となる。

投稿日:2021629

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投稿者

東京で自治体職員やってます

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