この記事では、次の問題について考えてみたいと思います。
微分可能関数$f:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$は、
$(f'(x))^2=4f(x),\ f(1)=1,\ f(2)=4$
を満たしています。
$f(-3)$を求めてください。
とりあえず$(f'(x))^2=4f(x)$の両辺を微分してみましょう。
$2f'(x)f''(x)=4f'(x)$
すなわち、
$f''(x)=2,\ または\ f'(x)=0$
従って、
$f(x)=x^2+ax+b,\ または\ f(x)=c\ (a,b,cは定数)$
この定数$a,b,c$を$(f'(x))^2=4f(x)$になるように定めてあげれば、
$a^2=4b,\ c=0$なので、
$f(x)=x^2+ax+\frac{a^2}{4},\ または\ f(x)=0$
さて、あとは$f(1)=1,\ f(2)=4$になるような$a$を求めればいいのですが、
これは$a=0$ですね。
また、$f(x)=0$はこの時点で選択肢から消えます。
よって、$f(x)=x^2$であり、$f(-3)=9$です。
一見、これで問題ないように見えますが、本当にいいのでしょうか?
実は、最初に両辺を微分したところがマズいところです。
問題には「微分可能関数」としか書いてないので、「$2$階微分可能」とは限らないのです。
もし、$f(x)$がこんな関数だったらどうでしょう・・・
$f(x)=\begin{cases}
(x+1)^2 & (x<-1) \\
0 & (-1\leqq x\leqq 0) \\
x^2 & (0< x)
\end{cases}$
これは先程の微分方程式の解
$f(x)=x^2+ax+\frac{a^2}{4},\ または\ f(x)=0$
を継ぎはぎにくっつけたものです。
微分すると
$f'(x)=\begin{cases}
2(x+1) & (x<-1) \\
0 & (-1\leqq x\leqq 0) \\
2x & (0< x)
\end{cases}$
なので、$x=0,-1$では$2$階微分不可能な関数です。
この$f(x)$は$(f'(x))^2=4f(x),\ f(1)=1,\ f(2)=4$を満たしています。
そしてこの場合は$f(-3)=4$です。
もっと言えば、定数$C(\geqq0)$を任意にとって、
$f(x)=\begin{cases}
(x+C)^2 & (x<-C) \\
0 & (-C\leqq x\leqq 0) \\
x^2 & (0< x)
\end{cases}$
とすれば$(f'(x))^2=4f(x),\ f(1)=1,\ f(2)=4$を満たします。
$f(x)=\begin{cases}
0 & (x\leqq 0) \\
x^2 & (0< x)
\end{cases}$
も満たします。
つまり、$f(x)$を完全に決定できなくて、$f(-3)$を求められないんですね。
似た構図の問題を1つ見てみましょう。
微分可能関数$f:\mathbb{R}-\{0\}\rightarrow\mathbb{R}$は、
$f'(x)=x^{-1},\ f(1)=0$
を満たしています。
$f(-1)$を求めてください。
これも$x>0$と$x<0$で定数の違いがあってもいいので、
いくら$\int x^{-1}dx=\log|x|+C$だからと言っても、$f(1)=0$から$f(-1)$は決定できません。
おそらく、微分方程式の教科書で$(f'(x))^2=4f(x)$の問題が出たとしても、
答えには$f(x)=(x-C)^2,\ または\ f(x)=0$と書いてあるでしょう。
不備ではなく、教科書は基本的に適切な範囲で十分に微分可能な関数であること前提で作ってるんですよ。たぶん。
でも、微積分の問題は上記のようなイレギュラーな関数のせいで変な不備ができかねないので、作問にはちょっと注意が要りますね。
余力がある人は、「$1$階微分可能」の仮定だけで、
$(f'(x))^2=4f(x),\ f(1)=1,\ f(2)=4$を満たす関数$f(x)$は
$x\geqq0$のときに$f(x)=x^2$以外にありえないのか考えてみてください。(ありえないと思うけど、答えは知らないです)
以上、ご覧いただきありがとうございます。