有限の長さの相対可補束 $L$ において, 任意の元は原子元の結び: join で表わされる.
この定理を証明したいのですが, [1]pp. 17 では次のような証明のみ残されていました.
$a > 0$ をとり, $a$ が原子元であるか, あるいは $0 < b < a$ なる$b \in L$ が存在したとする. $c \in L$ を区間 $[0, a]$ における $b$の相対補元とする. $[0, a]$ の長さ: length に関する帰納法より, $b$ と $c$は原子元の join で表わされるから $a = b \lor c$ も原子元の join で表わされる. (証明終)
上の定理と証明に関する準備をします.
順序集合 $L$ が束であるとは, 任意の $x, y \in L$についてその部分集合 $\{ x, y \}$ が $L$において下限および上限をもつときにいう. このときそれぞれを $x, y$の交わり: meet, および結び: join とよんで,
$$
(1) \quad x \land y = \inf{\{x, y \}}, \quad x \lor y = \sup{\{ x, y \}}
$$
と表わす.
または $L$ において演算 $\land, \lor$ が定義されていて, 任意の$x, y, z \in L$ に関して
交換律: $x \land y = y \land x, \quad x \lor y = y \lor x$
結合律:$x \land (y \land z) = (x \land y) \land z, \quad x \lor (y \lor z) = (x \lor y) \lor z$
吸収律: $x \land (x \lor y) = x, \quad x \lor (x \land y) = x$
をみたすときに $L$ は束であるという.
ふたつの方向の定義は同値です. つまり,(1) として定義した $L$ の演算 $\land, \lor$ は, 交換律, 結合律,吸収律をみたし, 逆にその三つの束の公理をみたす代数系 $L$ において$x \leqq y \Leftrightarrow x \land y = x$ と定めると $L$は順序集合となり, $x \land y = \inf{\{ x, y \}}$,$x \lor y = \sup{\{ x, y\}}$ が成り立つ. さらに順序集合 $L$が束であって, 演算 $\land, \lor$ を(1) によって導入し,それについて再び導入した順序はもとの順序と一致する.
個人的には前者の定義のほうが扱いやすいと思います. つまり束というのを,特別な順序集合と考えて,
$$
x \land y = \inf{\{ x, y \}}
$$
$$
x \lor y = \sup{\{ x, y \}}
$$
と表わすことにしたほうがいろいろとわかりやすい,ということです.
群に対して部分群が与えられるように,束にも部分束というものが考えられます; 束 $L$ の部分集合 $M$ が
$x \in M$ かつ $y \in M$ ならば $x \land y \in M$ かつ $x \lor y \in M$
をみたすとき$M$ を $L$ の部分束といいます. 一般的な束 $L$の部分束として思いつくのは,
$$
[a, b] = \{ x \mid a \leqq x \leqq b \} \quad (a, b \in L, \, a \leqq b)
$$
で,これを区間 $[a, b]$ とよびます. 束 $L$ の区間 $[a, b]$が部分束となるのは, 次の通りです. $x, y \in [a, b]$ をとると, $b$ は$\{ x, y \}$ の上界なので $\sup{\{ x, y \}} = x \lor y \leqq b$ で, また$a \leqq x, y \leqq \sup{\{ x, y \}} = x \lor y$ から$x \lor y \in [a, b]$. 双対的に$x \land y = \inf{\{ x, y \}} \in [a, b]$.
また束における準同型も考えられて, ふたつの束 $(L, \land_{L}, \lor_{L})$と $(M, \land_{M}, \lor_{M})$ に対して, 写像 $f : L \to M$ が
$$
f(x \land_{L} y) = f(x) \land_{M} f(y), \quad f(x \lor_{L} y) = f(x) \lor_{M} f(y) \quad (\forall x, y \in L)
$$
をみたすときに$f$ を束準同型写像といって, もし $f$ が全単射であるとき, $L$ と $M$は束同型といって $L \cong M$ と表わします. 束を順序集合として考えたとき,順序同型写像は束同型写像となります; 束 $(L, \leqq_{L}), (M, \leqq_{M})$の間に順序同型写像 $f:L \to M$ が存在したとすると,$f(\sup_{L}{\{ x, y \}}) = \sup_{M}{\{ f(x), f(y) \}} \quad (\forall x, y \in L)$が成り立ちます. なので束として同型であることを示したいときは,ふたつの束の間に順序同型写像が存在することを示せばよいことになります.
束にはいくつかクラスがあって, 必要なものだけを次に紹介します.
任意の束 $L$ とその元 $x, y, z$ に関して, 次の不等式が成り立ちます.
$x \leqq z$ ならば $x \lor (y \land z) \leqq (x \lor y) \land z$
$x \leqq z$ とする. このとき $x$ は $\{ x \lor y, z \}$の下界である;
$$
x \leqq x \lor y, \quad x \leqq z
$$
よって$x \leqq (x \lor y) \land z$.
$y \land z$ も $\{ x \lor y, z \}$ の下界である;
$$
y \land z \leqq y \leqq x \lor y, \quad y \land z \leqq z
$$
よって$y \land z \leqq (x \lor y) \land z$.
したがって $(x \lor y) \land z$ は $\{ x, \; y \land z \}$の上界であるから,
$$
x \lor (y \land z) \leqq (x \lor y) \land z
$$
(証明終)
加群 $M$ の部分加群 $X, Y$ に対して,
$$
X \land Y = X \cap Y
$$
$$
X \lor Y = X + Y = \{ x + y \mid x \in X, y \in Y \}
$$
としたとき $M$ の部分加群の全体は包含関係 $\subseteq$ に関して束をなし, さらに部分加群$X, Y, Z$ に関して $X \subseteq Z$ ならば
$$
X \lor (Y \land Z) = (X \lor Y) \land Z
$$
$$
\left( \Leftrightarrow X + (Y \cap Z) = (X + Y) \cap Z \right)$$
が成り立つ.
$X, Y, Z$ を $M$ の部分加群で $X \subseteq Z$ とすると, 補題 2 から
$$
X + (Y \cap Z) \subseteq (X + Y) \cap Z
$$
が成り立つので,示すべきことは,
$$
(X \lor Y) \land Z \subseteq X \lor (Y \land Z)
$$
すなわち
$$
(X + Y) \cap Z \subseteq X + (Y \cap Z)
$$
$a \in (X + Y) \cap Z$とすると, $a \in X + Y$ からある $b \in X, \, c \in Y$ が存在して,$a = b + c$ と表わせる. このとき $c = (-b) + a$ である.$-b \in X \subseteq Z$ と $a \in (X + Y) \cap Z \subseteq Z$ より$c \in Z$. また $c \in Y$ であったから, $c \in Y \cap Z$. さらに$b \in X$ であったから, $b + c \in X + (Y \cap Z)$. すなわち$a \in X + (Y \cap Z)$.
以上から等式 $$X + (Y \cap Z) = (X + Y) \cap Z$$が成り立つ. (証明終)
加群: Modul の部分加群全体がなす束において, この性質
$X \subseteq Z$ ならば $X + (Y \cap Z) = (X + Y) \cap Z$,すなわち, $X \subseteq Z$ ならば $X \lor (Y \land Z) = (X \lor Y) \land Z$ を一般の束 $L$ にあてはめて,
$$
x \leqq z \Rightarrow x \lor (y \land z) = (x \lor y) \land z \quad (x, y, z \in L)
$$
が成り立つ束を “Modul” からとって, modular 束といい, 上の条件を modular 律といいます.
また, 補題1 の不等式を moduar 不等式といいます. つまり $L$ が modular 束であるとは, modular 不等式の逆 (双対?) の順序
$$
x \leqq z \Rightarrow x \lor (y \land z) \geqq (x \lor y) \land z \quad x, y, z \in L
$$
が成り立つことをいいます.
modular 束において, わたしが述べなければならないのが次の法則です.
modular 束 $M$ のふたつの元 $a, b$ に対して束同型
$$
[a, a \lor b] \cong [a \land b, b]
$$
が成り立つ.
写像
$$
\phi_{b} : [a, a \lor b] \ni x \mapsto x \land b \in [a \land b, b]
$$
と
$$
\psi_{a} : [a \land b, b] \ni y \mapsto y \lor a \in [a, a \lor b]
$$
を考える. $\phi_{b}, \psi_{a}$ が順序同型であることを示す. $x, y \in [a, a\lor b]$ を任意にとって $x \leqq y$ であるとすると$\phi_{b}(x) = x \land b \leqq y \land b = \phi_{b}(y)$. なぜならば
$$
x \land b = (x \land y) \land (b \land b) = (x \land b) \land (y \land b)
$$
逆に* $x \land b \leqq y \land b$ であるとすると, $x \leqq a \lor b$ と modular 律より
$$\begin{eqnarray}
x &=& x \land (a \lor b) \\
&=& a \lor (b \land x) \\
&\leqq& a \lor (b \land y) \\
&=& (a \lor b) \land y \\
&=& y \quad
\end{eqnarray}
$$
よって $x \leqq y$.
したがって $\phi_{b}$ は順序単射. 双対的に $\psi_{a}$ も順序単射となる.
また, modular 律から,
$$
\psi_{a}(\phi_{b}(x)) = \psi_{a}(x \land b) = (x \land b) \lor a = x \land (a \lor b) = x \quad(\forall x \in [a, a \lor b])
$$
$$
\phi_{b}(\psi_{a}(y)) = \phi_{b}(y \lor a) = (y \lor a) \land b = y \lor (a \land b) = y \quad (\forall y \in [a \land b, b])
$$
となるので,$\phi_{b}$ と $\psi_{a}$ は互いに逆写像であり, 全単射.
したがって順序同型写像となり, $[a, a \lor b]$ と $[a \land b, b]$は束同型. (証明終)
(* $x \land b \leqq y \land b \Rightarrow x \leqq y$ が素直に示せればよかったのですが, 一般的には成り立たないと思います.
たとえば $b = 0$ が反例です. この場合では, $a \leqq x, y \leqq a \lor b$ と modular 律という条件があるので上のように成り立ちますが,岩村先生はこの対応 $\phi_{b}$が 「順序関係を保存することは明白」([2]pp. 110) と書いているので, もう少し純粋に示せるのかもしれません.
あるいは, つぎの予想が成り立てばそういえるのかもしれません)
ふたつの写像 $\phi : (L, \leqq_{L}) \to (M, \leqq_{M})$ と $\psi : (M, \leqq_{M}) \to (L, \leqq_{L})$ がそれぞれ順序を保つとき,すなわち
$$
a \leqq_{L} b \Rightarrow \phi(a) \leqq_{M} \phi(b) \quad (a, b \in L)
$$
$$
x \leqq_{M} y \Rightarrow \psi(x) \leqq_{L} \psi(y) \quad (x, y \in M)
$$
が成り立つとき,かつ $\phi$ と $\psi$ が互いに互いの逆写像であれば, $\phi$は順序同型写像であるか?.
$a, b \in L$ に対して,$\phi(a) \leqq_{M} \phi(b)$ であるとすると,$\psi(\phi(a)) = a \leqq_{L} b = \psi(\phi(b))$.
これはあっているでしょうか. ならば, Dedekind の転置法則はもっと簡単に示せます; $\phi_{b}, \psi_{a}$ は順序を保ち,互いに互いの逆写像であるから, $\phi_{b}$ は $[a, a \lor b]$ から$[a \land b, b]$ への順序同型写像である. ここで modular 律は $\phi_{b}$と $\psi_{a}$ が互いの逆写像であることを示すときに使われています.
次に modular 束よりも強い束である分配束について定義します.
束 $L$ の任意の元 $x, y, z$ について
$$
x \land (y \lor z) = (x \land y) \lor (x \land z)
$$
が成り立つとき $L$を分配束という.
$x, y, z \in L$ について,
$$
x \land (y \lor z) = (x \land y) \lor (x \land z)
$$
が成り立つことと,
$$
x \lor (y \land z) = (x \lor y) \land (x \lor z)
$$
が成り立つことは同値なので,分配束においては上の二つの等式が成り立ちます.
分配束が modular 束よりも強いということはつまり,
分配束は modular 束である.
$L$ を分配束として,$x, y, z \in L$ において $x \leqq z$ と仮定する. このとき $x \lor z = z$であるから,
$$
x \lor (y \land z) = (x \lor y) \land (x \lor z) = (x \lor y) \land z
$$
(証明終)
また, 以下で述べる可補束において, 分配的な可補束 $=$ Boole 束の補元の一意性を示すために次の補題を紹介します.
分配束 $L$ の元 $x, y, z$ について, $x \land z = y \land z$かつ $x \lor z = y \lor z$ ならば $x = y$.
$$\begin{eqnarray} x &=& x \land (x \lor z) \quad [吸収律] \\ &=& x \land (y \lor z) \quad [仮定より] \\ &=& (x \land y) \lor (x \land z) \quad [分配律] \\ &=& (x \land y) \lor (y \land z) \quad [仮定より] \\ &=& (x \lor z) \land y \quad [分配律] \\ &=& (y \lor z) \land y \quad [仮定より] \\ &=& y \quad [吸収律]\end{eqnarray}$$ (証明終)
最小元 $0$ と最大元 $1$ をもつ束 $L$ において, $x \in L$ の補元$x^{c}$ は
$$
x \land x^{c} = 0, \quad x \lor x^{c} = 1
$$
をみたす元のことをいい, 任意の元が補元をもつとき $L$を可補束という.
束 $L$ の任意の区間が可補束であるとき, $L$ を相対可補束といい,その区間における補元を相対補元という.
たとえば $L$ の区間 $[a, b]$ について, $x \in [a, b]$ が
$$
x \land x^{c'} = a, \quad x \lor x^{c'} = b
$$
をみたす $x^{c'}$をもつとき, $x^{c'}$ を $x$ の $[a, b]$ における相対補元といいます.
modular 束でありかつ可補束である束を 可補 modular 束とよべば, 可補 modular 束は相対可補束と比較できて, 可補 modular 束 $\subseteq$ 相対可補束 となります;
可補 modular 束 $M$ は相対可補束である.
まず $M$ の任意の元 $b$ をとり, 区間 $[ 0, b ]$ について考える. $x \in [ 0, b ]$に対して $M$ は可補的であるので ($M$ においての) 補元 $x'$ が存在する.
このとき
$$
x \land (x' \land b) = (x \land x') \land b = 0 \land b = 0
$$
また $x \leqq b$ であり, $M$ は modular 束であるから
$$
x \lor (x' \land b) = (x \lor x') \land b = 1 \land b = b
$$
$x' \land b \leqq b$ であるから $x' \land b$ は区間 $[0, b]$ における$x$ の相対補元である. よって $[0, b]$ は $M$ の可補的な部分 modular 束である. そこで $[0, b]$ における $x$ の補元を $x'' = x' \land b$とおきなおすと,
$$
x \land x'' = 0, \quad x \lor x'' = b
$$
である. このとき $a \leqq b$ である $a \in M$ を任意にとると, 区間 $[a, b]$ において,
$$
x \lor (x'' \lor a) = (x \lor x'') \lor a = b \lor a = b
$$
$$
x \land (x'' \lor a) = (x \land x'') \lor a = 0 \lor a = a
$$
が成り立つ. $x'' \lor a \geqq a$ であり, また $x'' = x' \land b \leqq b$ と$a \leqq b$ から $x'' \lor a \leqq b$ であるので,$x'' \lor a \in [a, b]$. すなわち $x'' \lor a$ は $[a, b]$ における $x$の相対補元. よって区間 $[a, b]$ は可補的である. (証明終)
分配束 $\subseteq$ modular 束であったので,
Boole 束 $=$ 可補分配束 $\subseteq$ 可補 modular 束 $\subseteq$相対可補束 $\subseteq$ 可補束となります.
最初の定理にでてきた原子元というのは, $0 < x < p$ なる $x$ が存在しない $p \in L$ のことをいいます. 一般的に $a, b$ に対して $a < b$ かつ$a < x < b$ となる $x$ が存在しないとき, つまり $b$ が $a$ の直後の元であるとか, $b$ が $a$ を被覆するとき, $a \prec b$と表わします. これによって原子元 $p$ は $0 \prec p$ と表わせます.
ここからが本題なのですが, 相対可補束の任意の元は原子元の結び: join $\lor$ で表わされる, というのです. [2] pp. 123- 125 では,主旨はすこし違いますが, 極大条件をみたす可補 modular 束において任意の元が原子元の join で表わされることの証明が載っています.
もういちどいうと, 可補 modular 束 $\subseteq$ 相対可補束なので,相対可補束の任意の元が原子元の join で表わされるという,いちばん初めの定理は, 可補 modular 束の任意の元が原子元で表わされるという定理の一般化となっています.
はっきりいって, わたしの勉強不足で, 極大条件や束における長さ : length,また, 次元や, graded poset: 次数つき順序集合 などの概念の定義が曖昧です.いち数学徒として定義を理解していないのは恥ずべきことです.申し訳ありません. わたしが悩んでいるのも,この概念の定義の不理解ゆえだと思っています.
ただ,これらはおおざっぱにいうと, 束 $L$ の元 $a$ に対して,
$$
0 = x_{0} \prec \dots \prec x_{n} = a
$$
をみたす有限列 $x_{0}, \dots, x_{n}$ が存在する条件のことをいっています. また,これもよくわからないのですが, 最小元 $0$ は $0$ 個の原子元の join として表わされている, と捉えます. これを認めて, 次の補題を紹介します.
有限の長さの, (あるいは極大極小条件をみたす) 可補 modular 束 $L$ の任意の元 $a$ は原子元の join で表わされる.
可補 modular 束 $L$ の任意の元 $a > 0$ に対して,
$$
0 = x_{0} \prec \dots \prec x_{n} = a
$$
をみたす有限列 $x_{0}, \dots, x_{n}$ をとる. ここで $q_{i} \, (1 \leqq i \leqq n)$ を,$x_{i - 1}$ の $[0, x_{i}]$ における相対補元とする. 可補 modular 束は相対可補束なので, このような元は存在する. まず $q_{1}$ は$x_{0} = 0$ の $[0, x_{1}]$ における相対補元であるから,$q_{i} \lor 0 = x_{1}$. 左辺は $q_{1}$ に等しいから, $q_{1} = x_{1}$.
つぎに, $q_{2}$ は $x_{1}$ の $[0, x_{2}]$ における相対補元だから,
$$
q_{2} \lor x_{1} = q_{2} \lor q_{1} = x_{2}
$$
帰納的に,
$$
x_{i} = q_{1} \lor \dots \lor q_{i}
$$
が成り立つ. よって
$$
a = x_{n} = q_{1} \lor \dots \lor q_{n}
$$
と表わせる. $L$ は modular 束なので, Dedekind の転置法則が使えて,
$$
[x_{i - 1}, x_{i - 1} \lor q_{i}] \cong [x_{i - 1} \land q_{i}, q_{i}]
$$
が成り立ち,左辺は $[x_{i - 1}, x_{i}]$ と等しく, 右辺は $[0, q_{i}]$ と等しい.
すなわち
$$
[x_{i - 1}, x_{i}] \cong [0, q_{i}]
$$
$x_{i - 1} \prec x_{i}$ であったので $0 \prec q_{i}$. よって $q_{i}$ は原子元である. (証明終)
これと同じ手法で試みた, いちばん初めの定理のわたしの考察を述べます.
ここからはかなり危ないはなしとなりますし,あっちにいったりこっちにいったりと, かなり乱雑なのですが,どうかあたたかい目で見守ってください.
有限の長さの相対可補束において, 任意の元は原子元の join で表わせる.
なぜ苦しいのかというと, 考察しているのが相対可補束で modular 律が使えず,上の証明における Dedekind の転置法則も使えないからです. $a \in L$をとって, まず $0 = x_{0} \prec x_{1} = a$ のときを考えると, $a$はそれ自身原子元であって, べき等律から $a = a \lor a$ と, 原子元の join で表わせます. $0 = x_{0} \prec x_{1} \prec x_{2} = a$ のときを考え,$y_{1}$ を $x_{1}$ の $[0, a]$ における相対補元とします. このとき$y_{1}$ は原子元でしょうか. いったん $y_{1}$ が原子元であると仮定して,$$0 = x_{0} \prec x_{1} \prec x_{2} \prec x_{3} = a$$のときを考えます.$y_{1}$ を $x_{1}$ の $[0, x_{2}]$ における相対補元とすると,上で仮定したことから $y_{1}$ は原子元であって $x_{2}$ は$x_{2} = x_{1} \lor y_{1}$ と原子元の join で表わせます. さらに $y_{2}$を $x_{2}$ の $[0, a]$ における相対補元とすると, $a = x_{2} \lor y_{2}$と表わせて, $x_{2}$ は原子元の join で表わせるから, もし $y_{2}$が原子元の join で表わせるなら, $a$ も原子元の join で表わせることになります. これをもういちど繰り返します.
$$0 = x_{0} \prec x_{1} \prec x_{2} \prec x_{3} \prec x_{4} = a$$のときを考えます.
上のことから, $x_{3}$ は原子元の join で表わせます. $x_{3}$ の $[0, a]$における相対補元を $y_{3}$ と表わすと $a = x_{3} \lor y_{3}$ となって,もし $y_{3}$ が原子元の join で表わされるならば $a$ もまた原子元の join で表わせることになります. つまり理想的には 原子元の join で表わせる元の補元が原子元の join で表わされるか? ということが示せればわたしはしあわせです.
ひとつ考えたのは, $y_{2}$に関してのことです.
$$
x_{2} \land y_{2} = (x_{1} \lor y_{1}) \land y_{2} = 0
$$
が成り立つので,
$$
x_{1} \land y_{2} = 0, \quad y_{1} \land y_{2} = 0
$$
が成り立ちます.
なぜならば
$$
x_{1} \land y_{2} \leqq x_{1} \leqq x_{1} \lor y_{1}
$$
から
$$
x_{1} \land y_{2} = (x_{1} \land y_{2}) \land y_{2} \leqq (x_{1} \lor y_{1}) \land y_{2} = 0
$$
が成り立つからです.
したがってこのとき
$$
(x_{1} \lor y_{1}) \land y_{2} = 0 = (x_{1} \land y_{2}) \lor (y_{1} \land y_{2})
$$
と,みっつの元 $x_{1}, y_{1}, y_{2}$ に関して分配律が成り立ちます. そこで,こう考えました. 部分的に分配的ならば部分的に modular 的で, 部分的に Dedekind の転置法則が使えるのではないか, と. しかしこれは成り立ちませんでした. ただ, おもしろい同型が作れました. もし modular 的であるならば, Dedekind の転置法則を応用して,
$$
[(x_{1} \lor y_{1}) \land y_{2}, y_{2}] \cong [x_{1} \lor y_{1}, (x_{1} \lor y_{1}) \lor y_{2}]
$$
すなわち
$$
[0, y_{2}] \cong [x_{2}, a]
$$
$y_{2}$ は $x_{2}$ の $[0, a]$における相対補元であったので, もうすこし一般的にして,
$$
[0, x^{c}] \cong [x, 1]
$$
もしこの束同型が成り立つなら, $x \prec 1$であれば $0 \prec x^{c}$ となります. すなわち, $x^{c}$はこのとき原子元となります. この同型が 可補 modular 束において成り立つことは明らかです. もういちど整理すると, $L$ が 可補 modular 束のとき, Dedekind の転置法則から
$$
[0, x^{c}] = [x \land x^{c}, x^{c}] \cong [x, x \lor x^{c}] = [x, 1]
$$
が成り立ちます.
問題はこの同型が modular 束でないときにも成り立つか, ということです.
逆にいうと, 可補束 $L$ とその元 $x$ に対して束同型
$$
[0, x^{c}] \cong [x, 1]
$$
が成り立つと仮定すると,$0 = x_{0} \prec x_{1} \prec x_{2} = a$ のとき, $x_{1}$ の $[0, a]$ における相対補元 $y_{1}$ は原子元となります. ならば,上で考察した帰納法が成り立つことになります. 結局, modular 束とは限らない可補束の元 $x$ に対して, 束同型
$$
[0, x^{c}] \cong [x, 1]
$$
が成り立つか, ということに帰着します.
わたしの目には, この同型はうつくしく見えるので,成り立ってほしいと願います. Dedekind の転置法則のまねをして, 写像
$$
\phi : [0, x^{c}] \ni a \mapsto a \lor x \in [x, 1]
$$
と
$$
\psi : [x, 1] \ni b \mapsto b \land x^{c} \in [0, x^{c}]
$$
をとります.
ふたつの写像が順序を保つのはよいので,互いが互いの逆写像であることを示せればよいです. これはつまり,$a \in [0, x^{c}]$ について
$$
\psi(\phi(a)) = (a \lor x) \land x^{c} = a
$$
が成り立つかどうか,ということです. 考えましたがやっぱりわからないのでたすけてほしいです. よろしくお願いします.