ピタゴラスの三角形とは?
原始解について
ピタゴラスの三角形の原始解とその導出
各辺が自然数の直角三角形
すなわち,かの有名な三平方の定理
$$x^2+y^2=z^2 \,\,\,\, \cdots (1)$$ の自然数解のことを指します.
例えば, (1)の方程式の自然数解として, $(x,y,z)=(3,4,5),(5,12,13)$があげられますが,$(x,y,z)=(6,8,10),(15,36,39)$も(1)の解となっています.
つまり,$(x,y,z)$が(1)の方程式の解ならば,0でない整数$c$を用いた$(cx,cy,cz)$も解となっています.このような$(cx,cy,cz)$の形の解は$(x,y,z)$と同じものであるとみなして考えます.
方程式の自然数解$(x,y,z)$について$x,y,z$がどの2つとも互いに素であるとき,
$(x,y,z)$を原始解という.
整数$a,b$が互いに素であるとは$a$と$b$の最大公約数$d$が$1$のことである.
また,最大公約数は記号で$d=(a,b)$と表す.
さて,ピタゴラスの三角形と原始解の意味を説明したので,いよいよピタゴラスの三角形の原始解を導出してみましょう.
まずその前に導出に使うもの(記号,定理etc)を説明します.
$0$でない整数$m$を固定して,$a,b$を整数とする.
$a-b$が$m$の倍数であるとき,$a$は$b$と法$m$で合同であるといい,
$a\equiv b\,(\text{mod}\,m)$で表す.
$a$が奇数のとき,$a^2\equiv 1\,(\text{mod}\,4)$であり,$a$が偶数のとき,$a^2\equiv 0\,(\text{mod}\,4)$である.
$a$が奇数のとき,整数$k$を用いて$a=2k+1$と表せる.$$\begin{align}a^2&=(2k+1)^2\\&=4k^2+4k+1\\&=4(k^2+k)+1\\&\equiv 1\,(\text{mod}\,4)\end{align}$$ $a$が偶数のとき,整数$k$を用いて$a=2k$と表せる.$$\begin{align}a^2&=(2k)^2\\&=4k^2\\&\equiv 0\,(\text{mod}\,4)\end{align}$$ 以上より,この合同式は成り立つ.$\Box$
$a>0,b>0,(a,b)=1$のとき,積$ab$が平方数となる必要十分条件は$a,b$がともに平方数であることである.
必要性は明らかであるので,十分性を示す.
$(a,b)=1$より,$a,b$は共通の素因数をもたない.ここで積$ab$が平方数となるとき$ab=m^2$であるから$m$に含まれるすべての素因数の指数は偶数である.
ここで,$a$の素因数のうち,指数が奇数である素因数を$p$とすると,$b$にも素因数$p$が奇数個含まれるはずであるが,これは$(a,b)=1$に矛盾する.
以上より,題意は示された.$\Box$
$(x,y,z)$を(1)の方程式の原始解とする.このとき,$x,y$のいずれか一方は奇数で,その他は奇数である.$x$が奇数のとき,解の形は以下のようになる.
$$x=a^2-b^2,y=2ab,z=a^2+b^2$$ ここで,$a,b$は以下の条件を満たす.
$$a>b>0,(a,b)=1,a-b\equiv 1\,(\text{mod}\,2)$$ また,逆にこれを満たす$(x,y,z)$は(1)の方程式の原始解である.
$(x,y,z)$は原始解なので,$x,y$ともに偶数もありえない.また,ともに奇数でもない.そうだとすると,補題1より,$x^2+y^2\equiv 2\,(\text{mod}\,4)$であるが,$z^2\equiv 0,1\,(\text{mod}\,4)$ となるので,矛盾.よって,$x$を奇数,$y$を偶数としてよい.(1)を変形すると,
$$\frac{z+x}2\cdot\frac{z-x}2=\left(\frac y2\right)^2$$ となる.$z$は奇数なので,この3つの項はすべて整数である.もし,
$$d=\left(\frac{z+x}2,\frac{z-x}2\right)$$ ならば,
$$\frac{z+x}2,\frac{z-x}2$$ はともに$d$の倍数である.よって,
$$x=\frac{z+x}2-\frac{z-x}2,z=\frac{z+x}2+\frac{z-x}2$$ もともに$d$の倍数である.$(x,z)=1$より,$d=1$でなければならない.
ここで,補題2より,
$$\frac{z+x}2=a^2,\frac{z-x}2=b^2$$とかける.ここで,$a>b>0$は明らかである.また,$x=a^2-b^2,z=a^2+b^2$であって,$y=2ab$である.$d=1$であるから,$(a^2,b^2)=1$なので,$(a,b)=1$である.
また,$a-b\equiv 1\,(\text{mod}\,2)$も明らかである.そうでないなら,$a,b$の偶奇が一致し,$x,y$がともに偶数となり,$(x,y)=1$に反する.
逆に,$a>b>0,a-b\equiv 1\,(\text{mod}\,2),(a,b)=1$を満たし,
$$x=a^2-b^2,y=2ab,z=a^2+b^2$$を満たすならば,$(x,y,z)$は(1)の方程式の原始解であって,$x,z$は奇数である.
$d'=(x,z)$ならば,$x,z$は$d'$の倍数なので,$z+x=2a^2,z-x=2b^2$も$d'$の倍数である.ここで,$d'$は奇数であるから,$a^2,b^2$はともに$d'$の倍数である.ここで,$(a,b)=1$であるとき$d'=1$でなければならないので,$(x,y,z)$が原始解であることが示された.$\Box$
初めての記事で不慣れなため,間違い等あるかもしれません.
もしありましたら遠慮なくお申し付けください.
また,今後もこういった記事を書き続けようと思います.
ですので,たくさんの方に見てくれるととても嬉しいです.