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高校数学解説
文献あり

ズッカーマン数の逆数の和は収束する

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$$\newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} \newcommand{mmod}[1]{\ \left(\mathrm{mod}\ #1\right)} \newcommand{rank}[0]{\mathrm{rank}} \newcommand{wenvert}[1]{\left\lvert\left\lvert#1\right\rvert\right\rvert} $$

$384$$10$進数であらわしたときの各桁の積
$$3\times 8\times 4=96$$
$384$ の約数である。このほか、
$$\begin{split} & 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 11, 12, 15, 24, 36, \\ & 111, 112, 115, 128, 132, 135, 144, 175, \\ & 212, 216, 224, 312, 315, 384, 432, \ldots \end{split}$$
は、自分自身を$10$進数であらわしたときの各桁の積で割り切れる( OEIS: A007602 )。こうした数をズッカーマン数 (Zuckerman number) という(Tattersall, 2005, p. 86, 問題44-45)。

$10$進数であらわしたときに$0$を含む数は、各桁の積も$0$となるから、各桁の積で割り切れないのでズッカーマン数とはならない。しかし、たとえば $2064$$10$進数であらわしたときの各桁の数で$0$以外のものの積
$$2\times 6\times 4=48$$
$2064$ の約数である。
$$\begin{split} & 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 15, 20, 22, 24, \\ & 30, 33, 36, 40, 44, 48, 50, 55, 60, 66, 70, 77, 80, 88, 90, 99, \\ & 100, 101, 102, 104, 105, 110, 111, 112, 115, 120, \ldots \end{split}$$
は、自分自身を$10$進数であらわしたときの各桁の$0$以外の数の積で割り切れる( OEIS: A002796 )。

なお、以下、各桁の数のとり方については、断りなく、$10$進数であらわしたときの各桁の数とする。

レピュニット (Repunit) はすべての桁が$1$だから、その積も $1$となるのでズッカーマン数である。$0$$1$のみですべての桁が構成され、かつ$0$$1$つでも桁の中に含む数はズッカーマン数ではないが、各桁の数から$0$を除いたものの積は$1$となるので、自分自身の各桁の$0$以外の数の積で割り切れる数となる。
それでズッカーマン数も、ズッカーマン数ではないが自分自身の各桁の$0$以外の数の積で割り切れる数も無数に存在することはすぐにわかる。

De KoninckとLucaはこのような形の数について研究し、 $x$ が大きいとき $x$ 以下のズッカーマン数の個数は $x^{0.122}$ より大きいが $x^{0.863}$ より小さく、 $x$ 以下の、自分自身の各桁の $0$ 以外の数の積で割り切れる数の個数は $x^{0.495}$ より大きいが $x^{0.901}$ より小さいことを示した(De Koninck and Luca 2007, 2017、2007年には個数の上界として、それぞれ $x^{0.618}$, $x^{0.654}$ がとれると主張していたが、筆者が誤りを指摘して2017年に修正されたもの)。
このことから、ズッカーマン数の逆数の和、および自分自身の各桁の$0$以外の数の積で割り切れる数の逆数の和は収束することがわかる。

以前、ズッカーマン数に関する問題をtwitterで見つけたとき、この論文を参照してズッカーマン数の逆数の和が収束することを ツイートしたが 、ズッカーマン数の逆数の和、および自分自身の各桁の$0$以外の数の積で割り切れる数の逆数の和は収束することは、より簡単に証明できるので、この記事ではその証明を記す。

ズッカーマン数の逆数の和は収束する

ズッカーマン数の逆数の和が収束することは比較的容易に示せる。
$N(x)$$x$ 以下のズッカーマン数の個数とする。

$10$進数であらわしたときに$0$を含む数はズッカーマン数とはならないから、$10^n$以下のズッカーマン数は、$n$桁以下の数で、$0$を含まない数でなければならない。そのようなものの個数は$9^n$に一致するから、$10^{n-1}< x\leq 10^n$のとき、
$$N(x)\leq 9^n\leq 9\times 9^{n-1}\leq 9\times 10^{(n-1)\log 9/\log 10}<9x^{\log 9/\log 10}$$
となる。よって $n$ 番目のズッカーマン数を $a_n$ とすると
$$n\leq 9a_n^{\log 9/\log 10}$$
より
$$a_n\geq \left(\frac{n}{9}\right)^{\log 10/\log 9}$$
なので
$$\sum_n \frac{1}{a_n}\leq 9^{\log 10/\log 9}\sum_n \frac{1}{n^{\log 10/\log 9}}$$
は収束する。

自分自身の各桁の $0$ 以外の数の積で割り切れる数は収束する

一方、自分自身の各桁の $0$ 以外の数の積で割り切れる数の逆数の和が収束することの証明には、やや込み入った議論を要する。

$N_0(x)$ を自分自身の各桁の $0$ 以外の数の積で割り切れる $x$ 以下の数の個数とし、$10^{n-1}< x\leq 10^n$ となる整数 $n$ をとる。$x$ 以下の正の整数のうち、$10$進表示における $2$ の個数が $k$ 個のものの個数は多くとも
$$\binom{n}{k} 9^{n-k}$$
であり、$5$ の個数が $m$ 個のものの個数は多くとも
$$\binom{n}{m} 9^{n-m}$$
である。
$b\leq x$ を自分自身の各桁の $0$ 以外の数の積で割り切れる正の数とする。$b\leq x$ だから $b$$n$ 桁以下の正の整数である。
$n/2$ より小さい整数 $m$ をとる。$2, 5$ の個数がともに $m$ 個以上のとき、各桁の $0$ 以外の数の積は $10^m$ で割り切れなければならないから $b$$2$ の個数が $m-1$ 個以下か、$5$ の個数が $m-1$ 個以下であるか、あるいは $10^m$ の倍数でなければならない。よって
$$N_0(x)\leq 2\sum_{k=0}^{m-1} \binom{n}{k} 9^{n-k}+10^{n-m}$$

$k\leq m< n/2$ なので
$$\binom{n}{k}\leq \binom{n}{m-1}< n^{m-1}$$
となるから
$$N_0(x)\leq 2m n^{m-1} \times 9^n+10^{n-m}$$
が成り立つ。

$x\geq 10^{2000}$ とすると $n\geq 2000$ となる。
$$m=\floor{\frac{n\log(10/9)}{\log(10n)}}$$
とおくと
$$(10n)^m< e^{n\log (10/9)}=(10/9)^n$$
なので
$$N_0(x)\leq \frac{2m (10/9)^n}{n\times 10^m}9^n+10^{n-m}=\left(\frac{2m}{n}+1\right)10^{n-m}<2\times 10^{n-m}$$
となる。
$n\geq 2000$ だから
$$\frac{\log\frac{10}{9}\log 10}{\log (10n)}>\frac{0.76\log\frac{10}{9}\log 10}{\log n}>\frac{0.18}{\log n}$$
なので
$$10^m>10^{(n\log(10/9)/\log (10n))-1}=\frac{1}{10}e^{n\log(10/9)\log 10/\log(10n)}>\frac{1}{10}e^{0.18n/\log n}$$
および $10^n<10x$ より
$$N_0(x)<\frac{200\times 10^n}{e^{0.18n/\log n}}<\frac{200x}{e^{0.078\log x/\log\log x}}$$
となる。
$x>10^{2000}$ なので
$$e^{0.078\log x/\log\log x}>200\log^2 x$$
となり
$$N_0(x)<\frac{x}{\log^2 x}$$
となる。

よって 自分自身の各桁の数のうち $0$ 以外のものの積で割り切れる $n$ 番目の正の整数を $b_n$ とすると、 $b_n\geq 10^{2000}$ ならば
$$b_n>n\log^2 n$$
となる。というのは $b_n>10^{2000}$ かつ $b_n< n\log^2 n$ ならば
$$n\leq N_0(b_n)< n\log^2 n/\log^2(n\log^2 n)< n$$
となって矛盾するからである。

したがって、
$$\sum_n \frac{1}{b_n}<\sum_{b_n<10^{2000}}\frac{1}{b_n}+\sum_{b_n\geq 10^{2000}} \frac{1}{n\log^2 n}$$
は収束する。

参考論文

Jean-Marie De Koninck and Florian Luca, Positive integers divisible by the product of their nonzero digits, Port. Math. 64 (2007) 75--85, doi: 10.4171/PM/1777

Jean-Marie De Koninck and Florian Luca, Corrigendum to "Positive integers divisible by the product of their nonzero digits", Portugaliae Math. 64 (2007), 1: 75--85, Port. Math. 74 (2017), 169--170, doi: 10.4171/PM/1999 , preprint avairable from MPG.PuRe

参考文献

[1]
James T. Tattersall, Elementary Number Theory in Nine Chapters, 2nd ed., Cambridge University Press, 2005
投稿日:2021728
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tyamada
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主に整数論について、よく知られた話題から、自身の研究に関することまで記事にしていきます。

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