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a×bとb×a問題

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例えば、以下の問題があったとします

問.3人にリンゴを4つずつ渡すとき、リンゴは何個必要ですか?

解答
3×4=12

12個

このように解答したとき、先生は上記の解答を間違っているとし、その理由が「『3×4』は『4×3』でなくてはならない」というとき、その先生は果たして正しいのか?という問題です。

結論からいうと、僕はa×bでもb×aでもどちらでもよいと思っていますが、その理由をいくつか挙げます。

※中にはよい先生もいるので、全ての先生が悪いというわけではないです。

かけ算の順は気にしなくてよい

まず、この問題に対して多くの人が考える反論は、「かけ算は、$×$の前後を入れ替えても成り立つ」ということです。

これに対し、先生は恐らく「いや、文章題だから、なぜその式になったかの意味を考えなくてはならない。」と反論するでしょう。

上記の場合、リンゴを4個ずつ3人に渡すのだから、4個×3人=12個としなければならないそうです。

しかし、これは気にしなくてもよいというのが今回の主張です。

行列の場合

例えば、行列は非可換です。

$ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} a & b \\ c & d \end{array} \right) \end{eqnarray} $ $×$ $ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} e & f \\ g & h \end{array} \right) \end{eqnarray} $ $=$ $ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} ae+bg & af+bh \\ ce+dg & cf+dh \end{array} \right) \end{eqnarray} $

$ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} e & f \\ g & h \end{array} \right) \end{eqnarray} $ $×$ $ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} a & b \\ c & d \end{array} \right) \end{eqnarray} $ $=$ $ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} ea+fc & eb+fd \\ ga+hc & gb+hd \end{array} \right) \end{eqnarray} $

例えば、xy平面上の$ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} x \\ y \end{array} \right) \end{eqnarray}$を左へ$90°$回転させるには、左から
$ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{array} \right) \end{eqnarray}$をかける必要があります。

$ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{array} \right) \end{eqnarray}$$ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} x \\ y \end{array} \right) \end{eqnarray}$ $=$ $ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{cc} -y \\ x \end{array} \right) \end{eqnarray}$

元々の座標が$(2,3)$だった場合、$90°$回転すると$(-3,2)$となり、正しいですよね。

関数の場合

関数$f(x)=x^2,g(x)=sinx,x \in \mathbb{R}$があります。
$∀θ \in \mathbb{R}$に対し

$f \circ g(θ) = f(g(θ)) = f(sinθ) = (sinθ)^2$
$g \circ f(θ) = g(f(θ)) = g(θ^2) = sin(θ^2)$
となり、$f \circ g(θ) ≠ g \circ f(θ)$ということがわかります。

 

非可換の場合は右から左へ演算する

上記のように関数や、行列など非可換な場合右から左へ演算していく必要があります。

かけ算も同様に、右から左へ演算していると解釈すれば間違いではないと思われます。

特別にかけ算の場合は左から右へ演算しても結果が同じというわけで、演算の順番までは問わない、というわけです。

そう考えると、$3×4$でも「4個のリンゴを3人に分ける」という意味になります。

単純にコストが無駄

先生側は「a×b」を「b×a」に矯正するよりも、他の重要なことを教えたらいかがでしょうか。

生徒は生徒で「a×b」を「b×a」に書き直す時間がもったいないです。
例えば生徒が大人になり、仕事でかけ算が必要になった場合
「ああ、a×bにしてしまった!本当はb×aなのに!計算式からやり直そう!」といちいち考えていたら時間が足りなくなってしまいます。

ある程度許容力は必要でしょう。

他にも、「文字を丁寧に書かなければ$×$」という先生もいますが、最低限読めれば問題なく、読めなくて初めて$×$でよいと思います。

自分でも読めない文字を書く人はさすがに指導する必要があると思いますが。

特に現代は文字の読み取り技術があるので、機械ですら読めない字を書いて困るのは子供の方です。

以下の記事でも述べていますが、文字を書くときは文字をはっきり区別するということが大事だと思います。

全単射と日常生活での利用法
https://mathlog.info/articles/2054

学習性無力感

罰を与えすぎると学習性無力感を感じ、学習意欲の低下につながる恐れがあります。

学習性無力感とは、心理学者セリグマンが提唱したものです。

実験では、まず犬を檻に閉じ込めて電気ショックを与えます。可哀想だと思いますが。

この檻は脱出が不可能で、犬はわけもわからず電気ショックを与えられます。

しばらくした後、次に新しい檻へ移動させます。

この新しい檻では、ボタンを押せば檻から出られるのですが、犬はあがこうともしません。

このことから、何をしても罰を与えられる環境に一度身を置くと、解決手段があるにもかかわらず自分から行動しなくなるということがわかります。

「自分は何をしても無駄なんだ」ということを学習し、行動しなくなるわけですね。

なので、かけ算の前後を入れ替えた程度で$×$をつけるのはいかがなものかと思います。

まとめ

・a×bとb×aはどちらでもよい
非可換な場合は右から演算するので、かけ算も同様に考えられる
・先生はa×bをb×aに矯正する時間があれば、a×bとb×aよりも有益なことを教えた方がいい
・生徒はa×bをb×aに書き直す時間がもったいない
・あまり$×$をつけすぎると学習性無力感になる

投稿日:202181
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あーく
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