本稿では、群の定義の条件を弱めると共に、そこから生じる右群といわれる半群の構造を紹介する。
群の定義は以下が採用されることが多い。
(1)任意の
(2)ある元
①任意の
②任意の
①を満たす
実は、この定義はもっと弱めることができる。具体的には次のようになる。
⑴任意の
⑵ある元
①任意の
②任意の
①を満たす
上の主張は結合律さえ満たせば、「任意の元に対して“両側”逆元を持たせる“両側”単位元の存在」ではなく、「任意の元に対して“右”逆元を持たせる“右”単位元の存在」を保証しても群になるというものである。
命題1の証明は下の記事をご覧いただきたい。
https://ameblo.jp/metazatunen/entry-12042179065.html
ここで次のような疑問が生じる
「任意の元に対して“右”逆元を持たせる“左”単位元の存在」を仮定するとどのような代数的構造が得られるか?
先程は右逆元,右単位元のセットだったが、右逆元,左単位元のセットで考えてみたのである。この問に答えるための用語をいくつか定義する。
⑴
条件)任意の元
以下、
⑵任意の元
⑶
条件)次の①,②を満たす
①
②任意の元
⑷
⑸任意の
⑹
⑺
⑻任意の
⑼集合
⑽写像
上の疑問を解消するために、右群の構造を調べる。
半群
⑴
⑵任意の元
⑶任意の元
⑷任意の
⑸
⑹
⑺
⑻
⑴⇒⑵⇔⑶⇒⑷⇒⑸⇒⑹⇒⑺⇔⑻⇒⑴の順で行う。
⑴⇒⑵ 明らか。
⑵⇒⑶ 任意に
⑶⇒⑵ 任意に
⑶⇒⑷ 存在性は次のように示される。任意に
一意性は次のように示される。
⑷⇒⑸
①
証明)閉じることと、結合率を満たすことは明らかである。右単位元と右逆元の存在を示す。
(右単位元)
(右逆元)
よって、命題1より
②
③
(準同型)
任意に
(単射)
(全射)
⑸⇒⑹
(左消約)
第一成分をとって、
(右単純)
⑹⇒⑺ 元
⑺⇒⑻ 明らか。
⑻⇒⑺
⑻⇒⑴左単位元を持つことは⑺から従い、後半の主張は
これで、右群の構造が決定できた。すなわち、群と右零半群との直積で書ける半群であり、もしくは冪等元を持つ右単純半群であることが分かった。後者は実践的で、乗積表を少し見ただけで右群かどうか判定できる。