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冪集合と逆像

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$$\newcommand{A}[0]{\mathbb{A}} \newcommand{abs}[1]{\lvert#1\rvert} \newcommand{Algs}[0]{{\rm Algs}} \newcommand{Art}[0]{{\rm Art}} \newcommand{Aut}[0]{Aut} \newcommand{B}[0]{\mathbb{B}} \newcommand{bB}[0]{\mathbf{B}} \newcommand{bH}[0]{\mathbf{H}} \newcommand{Br}[0]{\mathrm{Br}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{cF}[0]{\mathcal{F}} \newcommand{cG}[0]{\mathcal{G}} \newcommand{cH}[0]{\mathcal{H}} \newcommand{cI}[0]{\mathcal{I}} \newcommand{cJ}[0]{\mathcal{J}} \newcommand{colim}[0]{colim} \newcommand{Cone}[0]{{\rm Cone}} \newcommand{Conj}[0]{{\rm Conj}} \newcommand{dimtot}[0]{{\rm dimtot}} \newcommand{End}[0]{End} \newcommand{Ext}[0]{{\rm Ext}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{fa}[0]{\mathfrak{a}} \newcommand{fb}[0]{\mathfrak{b}} \newcommand{fg}[0]{\mathfrak{g}} \newcommand{fh}[0]{\mathfrak{h}} \newcommand{Frob}[0]{\mathrm{Frob}} \newcommand{Fun}[0]{Fun} \newcommand{fZ}[0]{\mathfrak{Z}} \newcommand{G}[0]{\mathbb{G}} \newcommand{Gal}[0]{{\rm Gal}} \newcommand{GL}[0]{GL} \newcommand{Gm}[0]{\mathbb{G}m} \newcommand{grad}[0]{grad} \newcommand{Hom}[0]{Hom} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{im}[0]{im} \newcommand{Ind}[0]{Ind} \newcommand{inpr}[1]{\langle #1 \rangle} \newcommand{inv}[0]{\mathrm{inv}} \newcommand{leng}[0]{{\rm leng}} \newcommand{li}[0]{{\rm li}} \newcommand{Monoids}[0]{{\rm Monoids}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{norm}[1]{\lvert\lvert#1\rvert\rvert} \newcommand{Ob}[0]{{\rm Ob}} \newcommand{ord}[0]{{\rm ord}} \newcommand{p}[0]{\mathfrak{p}} \newcommand{Posets}[0]{{\rm Posets}} \newcommand{pr}[0]{{\rm pr}} \newcommand{Prim}[0]{{\rm Prim}} \newcommand{Proj}[0]{\mathbb{P}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{quat}[3]{\left(\frac{#1,#2}{#3}\right)} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rank}[0]{\mathrm{rank}} \newcommand{rec}[0]{\mathrm{rec}} \newcommand{Res}[0]{Res} \newcommand{res}[0]{\mathrm{res}} \newcommand{sB}[0]{\mathscr{B}} \newcommand{Sch}[0]{Sch} \newcommand{Set}[0]{{\rm Set}} \newcommand{Sets}[0]{{\rm Set}} \newcommand{SL}[0]{SL} \newcommand{SO}[0]{SO} \newcommand{spa}[1]{{\rm Spa}(#1)} \newcommand{Spec}[0]{\mathrm{Spec}} \newcommand{spf}[1]{{\rm Spf}(#1)} \newcommand{Sw}[0]{{\rm Sw}} \newcommand{Tr}[0]{Tr} \newcommand{tr}[0]{\mathrm{tr}} \newcommand{trace}[0]{trace} \newcommand{vect}[1]{\overrightarrow{#1}} \newcommand{Vect}[0]{{\rm Vect}} \newcommand{Vir}[0]{Vir} \newcommand{vol}[0]{\mathrm{vol}} \newcommand{Xb}[0]{\overline{X}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

他の記事を読む上で最低限必要な集合についての言葉をまとめました。冪集合と逆像について書いてあります。

冪集合

冪集合

与えられた集合$\Omega$に対し、その部分集合を全て集めるとまた集合となる。これを$\Omega$の冪集合といい、$P(\Omega), 2^\Omega$などとあらわす。

冪集合は$P(\Omega)$と書くこともあるが、確率の$P$と紛らわしいのでこのノートでは$2^\Omega$で表すことにする。$A\subset \Omega$であるとき$A\in2^\Omega$であり、また$A\in2^\Omega$であるとき$A\subset\Omega$である。集合を要素に持つ集合になるのに慣れておこう。

$\Omega=\{0\}$のとき、 $$\begin{eqnarray} 2^\Omega=\{\emptyset,\Omega\}\end{eqnarray}$$ である。

冪集合$2^\Omega$は要素を$2^1=2$個持つ集合。

$\Omega=\{0,1\}$のとき、 $$\begin{eqnarray} 2^\Omega=\{\emptyset, \{0\}, \{1\}, \Omega\}\end{eqnarray}$$ である。

冪集合$2^\Omega$は要素を$2^2=4$個持つ集合。

$\Omega=\{0,1,2\}$のとき、 $$\begin{eqnarray} 2^\Omega=\{\emptyset,\{0\},\{1\},\{2\},\{0,1\},\{0,2\},\{1,2\},\Omega\}\end{eqnarray}$$である。 冪集合$2^\Omega$は要素を$2^3=8$個持つ集合。

上で見たことから想像できるように、$\Omega$の要素が有限で$n$個であるとき、$2^\Omega$は要素を$2^n$個持つ有限集合である。

冪集合の部分集合$Q\subset P(X)$を与えることは、$X$の部分集合$U\subset X$に対する条件を定めることと同じ。

$X=\R$とする。$A\subset P(X)$に対応する条件として、$U\subset X$$0\in U$を満たすこととする。

つまり、$0$を要素にもつ部分集合全体を集めてその集合を$A$と名付けたということ。

例えば$(-1,1)\in A, (-3,5)\in A, \R\in A$であるが、$(1,3)\notin A, (-\infty,0)\notin A$である。

逆像

集合$X, Y$の間の写像$f:X \to Y$による$Y$の部分集合$B$の逆像を定義する。これは$X$の部分集合で次のように定まる。

逆像

$f:X\to Y$を写像とし、$B\subset Y$とする。

このとき、$B$$f$による逆像とは次で定まる$X$の部分集合のことを言う。
$$\begin{eqnarray} f^{-1}(B)=\{x\in X\mid f(x)\in B\}\end{eqnarray}$$

$f^{-1}$という記号について一つ注意しておく。$f$についてその逆写像が存在するとき、それを$f^{-1}$と表記する。この逆写像を表す$f^{-1}$と逆像を表す$f^{-1}$は別のものである。これらは、逆写像であれば$f^{-1}(y)$のように$y\in Y$の要素に対して定まるものであるのに対し、逆像は$f^{-1}(B)$のように部分集合$B\subset Y$、あるいは同じことだが$B\in2^Y$に対して定まるものであるということで区別がつく。数学では文字や変数がどこの集合の要素であるかを常に注意する必要がある。ここでは$y\in Y$に対する$f^{-1}(y)$であるのか、$B\in2^Y$に対する$f^{-1}(B)$なのかをしっかりと見極めよう。

ところがさらにややこしいのが、$f:X\to Y$$y\in Y$に対して$\{y\}\subset Y$であるからその逆像$f^{-1}(\{y\})$が定まるのだが、これのことを$f^{-1}(y)$と略記することがあるし、実際にこの講義やノートの中でも頻繁に用いる。

$X=\{a,b,c\}, Y=\{0,1,2\}$とし、 $f:X\to Y$$$\begin{eqnarray} \begin{cases} f(a)=0\\ f(b)=1\\ f(c)=1 \end{cases}\end{eqnarray}$$ と定める。 このとき、 $$\begin{eqnarray} f^{-1}(\{0,2\})&=\{a\}\\ f^{-1}(\{2\})&=\emptyset\\ f^{-1}(\{0,1\})&=X\end{eqnarray}$$ となる。

$\R$を実数全体の集合とし、$f:\R\to\R$$f(x)=x^2$により定める。$\R$の部分集合である閉区間を次の記号で表す。 $$\begin{eqnarray} [a,b]=\{x\in\R\mid a\leq x\leq b\}\end{eqnarray}$$ このとき、$$\begin{eqnarray} f^{-1}([1,2])&=&[-\sqrt{2},-1]\cup[1,\sqrt{2}]\\ f^{-1}([0,1])&=&[-1,1]\\ f^{-1}(\{x\in\R\mid0 < x\})&=&\R\setminus\{0\}\\\end{eqnarray}$$ となる。

定義や上の例からわかるように、逆像により写像$f^{-1}:2^Y\to 2^X$が定まる。改めて注意するが、これは逆写像$f^{-1}:Y\to X$とは異なるものである

逆像については この動画 を参照してください。

逆像の性質

逆像という操作は集合に対する演算との相性がよい。

写像$f:A\to B$$C,D\subset B$に対して次が成り立つ。

  1. $f^{-1}(B)=A$

  2. $f^{-1}(\emptyset)=\emptyset$

  3. $f^{-1}(C\cap D)=f^{-1}(C)\cap f^{-1}(D)$

  4. $f^{-1}(C\cup D)=f^{-1}(C)\cup f^{-1}(D)$

  5. $f^{-1}(C\setminus D)=f^{-1}(C)\setminus f^{-1}(D)$

証明については こちらの動画 を参照してください。

投稿日:2020117
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数学が好きです。

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