整数の除法で商と余りを求める方法には大きく分けて2通りある。
絶対値最小剰余
の除法と、
そうでない除法
である。
これは
(この記事では
任意のa,b
となる商
ここで
よく知られているのは
これは絶対値最小剰余を拡張した除法といえる。
ただ、この除法は
「これをうまく解消できる除法を定義してみたい」、「絶対値最小剰余ではない除法を拡張できないだろうか?」というのがこの記事の目的である。
ただ先に結果を述べておくと、目的の達成はできてはいるがユークリッド互除法を行うためには工夫が必要になっている。
除数と余りの関係
これはつまり、
が成り立つように、余り
この記事では複素数
とする。
命題2が成り立つことは、単位ベクトルとの内積は正射影であるし、単位ベクトルとの二次元の外積は垂直方向への射影であることから分かる。
ここではこれを別の方法で示してみよう。
まずは
をみたさなければならない。
これは整理すると、
つまり
ということである。
次に
ここまでで、
では、これをみたす商
であるため、
であり、これはさらに
と表すことができる。
この結果と命題2から
が成り立つ。
では
この実部と虚部はそれぞれ
である。
つまり
これらをまとめる前に記号を定義する。
記号
ここでは床関数を拡張して
とする。
以上から次のことが結論付けられた。
任意のa,b
で定める。このとき
が成り立つ。
このように
ドナルド・クヌースの「切り下げ除算」
はガウス整数にそのまま拡張できる。
この除法は、「除数
ではユークリッド互除法は成り立つのだろうか。
残念ながら普通には計算できない。
しかし、工夫することで互除法を使うことができる。
まずは、なぜそのままでは使うことができないのかを考えよう。
命題3より
は常に成り立つが、
(例えば
そのため互除法をそのまま使うことはできない。
(
ここで少し思い起こしてみると、自然数
という性質を利用して計算した。
ただし
そのため、これをガウス整数に適用する場合は
のように工夫が必要になる。
どうしてこの工夫で互除法の計算が上手く進むのだろう。
ユークリッド互除法の調整
(水色の領域に
商と余りを一意に定められる除法を構成でき、計算方法もシンプルであるのは興味深い。
一方でユークリッド互除法を適用するために工夫が必要となるのは惜しい結果だった。