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閉円板の複素関数の極大値について

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Banach環についての準備

Banach環

可換環$\mathcal A$上のBanachノルムとは関数$\|\ \|\colon\mathcal A\to\mathbb R_{\ge0}$で、以下を満たすものである:

  1. $\|f\|=0\iff f=0$
  2. $\|fg\|\le\|f\|\cdot\|g\|$ (semimultiplicative)
  3. $\|f+g\|\le\|f\|+\|g\|$

Banach環とは可換環と完備なBanachノルムの組$(\mathcal A,\|\ \|)$である。

  1. 任意の完備局所体は付随するノルムでBanach環となる。
  2. 任意の環$\mathcal A$と自明なノルム$|a|_0:=\begin{cases}0&a=0\\1&a\ne0\end{cases}$
  3. 複素数体$\mathbb C$とノルム$\|\|:=\max\{|\ |_0,|\ |_\infty\}$。ここで、$|\ |_\infty$は通常のユークリッド・ノルム。
  4. 完備局所体$k$と実数$r>0$に対して、$k\langle r^{-1}T\rangle$を形式級数$f=\sum_{i\ge0}a_iT^i$で、$\sum_{i\ge0}|a_i|r^i$が収束するものの集合とする。このとき、$\|f\|=\sum_{i\ge0}|a_i|r^i$とする。

一般には、$\|f^n\|=\|f\|^n$すら成り立たない。これが成り立つBanach環をuniformと呼ぶ。

ここで、Banach環の射を以下で定義する:

bounded環準同型

Banach環の環準同型$\varphi\colon\mathcal A\to\mathcal B$がboundedであるとは、定数$C>0$が存在して任意の$f\in\mathcal A$に対して$\|\varphi(f)\|\le C\|f\|$となることである。

スペクトル半径

$f\in\mathcal A$のスペクトル半径とは$$\rho(f):=\inf_n\sqrt[n]{\|f^n\|}$$である。

スペクトル半径は上の注意で述べた$\|f^n\|=\|f\|^n$が成り立たないという問題に解決策を与える(uniformである)。

スペクトル半径の諸性質

任意の$f,g\in\mathcal A$に対して、

  • $\rho(f^n)=\rho(f)^n$
  • $\rho(1)=1$
  • $\rho(fg)\le\rho(f)\rho(g)$
  • $\rho(f+g)\le\rho(f)+\rho(g)$

上のほとんどの性質の証明は簡単である。$\rho(f+g)\le\rho(f)+\rho(g)$の証明だけ多少の工夫を要する。

スペクトル半径の連続性

Banach環$(\mathcal A,\|\ \|)$に対して、スペクトル半径$\rho\colon\mathcal A\to\mathbb R:f\mapsto\rho(f)$はノルム$\|\ \|$に関して連続である。

Banachノルムのsemi-multiplicativity不等式$\|fg\|\le\|f\|\cdot\|g\|$より、$\|f\|^n\le\|f\|^n$となる。つまり、$\inf_n\sqrt[n]{\|f^n\|}\le\|f\|$である。

ここで、$\varepsilon>0$を任意にとる。すると、任意の$\|f-g\|<\varepsilon$となる$f,g\in\mathcal A$に対して、$|\rho(f)-\rho(g)|\le\rho(f-g)\le\|f-g\|<\epsilon$となる。

特に、$\rho$はノルムになっている。

スペクトル半径が$\|\ \|$から構成できる自然なuniformなノルムであることは、以下のように定式化できる:

uniformization

Banach環$\mathcal A$のuniformizationとは、$(\mathcal A,\rho)$のseparated completionである。(ここで、$\rho$$\|\ \|$のスペクトル半径)
これは、次の普遍性を満たす:
任意のuniformなBanach環$\mathcal B$に対して、bounded環準同型$\mathcal A\to\mathcal B$$\mathcal A^u$を通る。

ここで、separated completionは正確には定義しないが、完備化のようなものである。

完備な非アルキメデス局所体$k$と実数$r>0$に対して、$k\langle r^{-1}T\rangle$のスペクトル半径は:
$$\rho\left(\sum_{i\ge0}a_iT^i\right)=\sup_i |a_i|r^i$$
である。

これはここでは証明しないが、以下の複素数体の議論のアナロジーである。

複素数体上の形式級数環のスペクトル半径

実数$r>0$に対して、$f\in\mathbb C\langle r^{-1}T\rangle$のスペクトル半径は
$$\rho(f)=\max_{|z|\le r}|f(z)|.$$

$f(T)=\sum_{i\ge0}a_iT^i$とする。
まず、三角不等式より$\max_{|z|\le r}|f(z)|\le\sum_{i\ge0}|a_i|r^i=\|f\|$となる。任意の$f$について成り立つので、正整数$n$に対して、$\max_{|z|\le r}|f(z)^n|\le\|f^n\|$となる。$n$乗根をとって$\inf$を取ると$\max_{|z|\le r}|f(z)|\le\rho(f)$を得る。

次に、$\rho(f)\le\max_{|z|\le r}|f(z)|$を示す。$\rho$の連続性により、$f$を多項式$f=\sum_{i=0}^Na_iT^i$と仮定して良い。 コーシーの積分定理 より、$C$を原点周りの半径$r$の円周とすると、

$$|a_k|\le\frac1{2\pi}\int_C\frac{|f(z)|}{|z|^k}|dz|\le\frac{\max_{|z|\le r}|f(z)|}{r^k}$$
なので、和をとることで
$$\|f\|=\sum_{k=0}^N|a_k|r^k\le(N+1)\max_{|z|\le r}|f(z)|$$
を得る。$f$は任意だったので、$f^n$と取り替えると、
$$\|f^n\|\le(nN+1)\max_{|z|\le r}|f(z)|^n$$
なので、
$$\sqrt[n]{\|f^n\|}\le\sqrt[n]{nN+1}\max_{|z|\le r}|f(z)|$$
で、$\inf$をとると欲してた結果を得る。

最大絶対値の原理 より、$\max_{|z|{\color{red}\le} r}|f(z)|=\max_{|z|{\color{red}=}r}|f(z)|$となる。

上の定理は、$\mathbb C\langle r^{-1}T\rangle$のuniformizationが disc algebra であることを言っている。

投稿日:2021817

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jenta
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