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ゆうすい模試(極限)の解説

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はじめに

 この記事では, ゆうすい模試 の解説をしようと思います. 解答例とともに, 考え方や, 講評的なものも書いてみようと思います. 解いてくださった方々, ありがとうございました.

 第1問, 第2問は簡単なので要点の説明だけにし, 第3問以降はきちんとした解答例を挙げました. これらのTEX打ちを手伝ってくださったNRSKさんに感謝申し上げます.

第1問


 ΔABCAB=1+x, BC=2+x, CA=3+x を満たすとする. 以下の極限を求めよ.
(1)limx+0 sinAsinC(2)limx+0 AC(3)limx2 Bπ2 x2

 これはまあ, 計算するだけですかね... (2)はだいたい対辺の比に等しくて2くらいかなって予想できるかもしれません. (3)はなんか計算ミスしてる方が多かったです.

 ということで, (1)は正弦定理使って, (2)は sinAA1 を使って, (3)は流れからしてsin(Bπ2)を考えれば良いので, 余弦定理とか使えば良いです. 簡単でしたね. 一応答えは2,2,16となります.

第2問


 (1) 0<x<1とする. 0tx のとき (1x)tsintt が成り立つことを示せ.
 (2) 0tx のとき (1x)2x2+sin2tx2+t21 が成り立つことを示せ.
 (3) limx+0 0xxx2+sin2tdt を求めよ.

 初めは(3)だけで出そうと思ったのですが, さすがにあれかなと思って, 入試問題的な誘導をつけてみました. まあ誘導は面倒なだけなのでどう示しても結構です. ほとんどの方が出来ていました. 長いのでここには書きません.

 お気持ちとしては, 積分区間がとても小さくなるので, だいたいsinttとできて, 積分もだいたい 0xxx2+t2dt=π4 くらいになるということでした. (ただし極限と積分の入れ替えは一般には出来ないので, 厳密には面倒な評価が必要になります.)

第3問


 nを自然数とする. xの方程式
sinx+sin2x++sinnx = 1
の正の解のうち最小のものをxnとするとき, limnn2xn を求めよ.

 これは, 近似が分かっていれば簡単に予測できる問題でした. だいたいsinxxなので(1+n)xn1で, xn2n(n+1)くらいなので, 答は2ですよね.

 具体的な解法としては, ひとつには左辺の和を明示する方法があります. これは多くの方がやってらして, 実際割と簡単に行きます. でもこの方法は汎用性がないので, ここでは不等式評価を利用したいと思います.

 sinxは上からはxで押さえられますが, 下から1次式で押さえるには割線近似が必要です. それらを駆使すると, 例えば以下のようになります.

 [解答例]

 左辺をf(x)とする.まずsinx<xを使うと,1=f(xn)<(1+2++n)xnより,2n(n+1)<xnを得る.
 次にxnの上からの評価だが,sinxの上凸性より,0<x<π2sinx>2πxを用いると,f(πn2)>2ππn212n(n+1)>1
 これとf(0)=0<1から,中間値の定理でxn<πn2である. これでは評価が甘いのでもう1度押さえる.

 再度sinxの上凸性より0<x<πnsinx>sinπnπnxを用いると,1=f(xn)>sinπnπn(1+2++n)xnを得る.
 以上より,
2nn+1<n2xn<πnsinπn2nn+1
なので,nとしてはさみうちの原理よりlimnn2xn=2である. □

第4問


 nを自然数とする. xの方程式 x3+n2xn2=01つの実数解と2つの虚数解を持つので, それらを an, bn+cni, bncni とおく(ただしan,bn,cnは実数でcn>0). 以下の極限を求めよ.
(1)limnan(2)limnbn(3)limncnn
(4) (3)の値をpとして, limn n(cnpn)

 これは少し目新しい感じかもしれません. でも, 解と係数の関係を使うことさえ分かれば特に難しいことなく最後まで楽しく解けるのではないかと思います. この問題は私のお気に入りです. あまり発想は必要ないですかね. ((1)の示し方は色々なやり方があるかもしれません)

 [解答例]

(1)左辺をf(x)とするとf(0)<0,f(1)>0より中間値の定理から0<an<1であることに注意して,
f(an)=an3+n2ann2=0i.ean=1an3n2
nとしてlimnan=1である.

(2)解と係数の関係より,
{an+2bn=0(A)2anbn+bn2+cn2=n2(B)an(bn2+cn2)=n2(C)
であることに注意する.
 (A)より,bn=12anだから,limnbn=12である.

(3)(B)cn>0より,cnn=12anbn+bn2n2だから,limncnn=1である.

(4)(B)より,n(cnn)=n2anbn+bn2cn+n=2anbn+bn21+cnnだから,limnn(cnn)=21(12)+(12)21+1=38である. □

第5問


 r1より大きい実数とする. xy平面においてA(0,1)とし, 動点P,Qは, Aが線分PQ上にあってかつPQ=rを満たすとする. Pが点(r21,0)から点(r21,0)までx軸上を動くときのQの軌跡が囲む領域の面積をS(r)とするとき, limrS(r)r2 を求めよ.

 これは, 大半の方がS(r)を真面目に計算されていました. そして私はそれを見てほくそ笑んでおりました.() というのも実は, 答を予測するのにも, 厳密な評価にも, S(r)どころかQの軌跡すら必要ないからです.

 まずは予想の仕方としては, 図形全体を1/r倍すると分かりやすいと思います. 即ち, PQ=1,A(0,1/r)としてみます. するとQの軌跡はほとんど半円に近いことが分かります. なので答はπ2です. 厳密な評価は, 適当な扇形によって外側と内側から押さえてやれば良いです.

 [解答例]

 題意の領域をWrと置く.まず,AQr1なので,Wrは原点中心半径rの上半円に含まれる.従って,S(r)<π2r2である.
 次に,P(r21,0)から(0,0)まで動く間にAQの長さと傾きは単調増加することから,Qの軌跡上にy軸対称な2点R,Rを取った時,中心A半径ARの扇形ARRWrに含まれる.ここでRを,P=(r,0)の時のQとすると,AR=r1+rであり,扇形ARRの中心角はtanθr=r,0<θr<π2となるθrを用いて,2θrである.従って,S(r)>12(r1+r)22θrである.
 limrθr=π2に注意して, はさみうちの原理より,limrS(r)r2=π2である. □

 下図の赤線はr=30のときのQの軌跡である.
問5 問5

第6問


 nを自然数とする. 実数xに対し, x以下の最大の整数を[x]と表すことにする. 以下で, 円周率π3.14<π<3.15を満たす無理数であることを用いて良い.
(1) [kπ]=[k+3π], 0kn を満たす整数kの個数をanとおく. limnann を求めよ.
(2) [kπ]+3=[k+7π], 0kn を満たす整数kの個数をbnとおく. limnbnn を求めよ.

 これは, 厳密にやろうと思うとすると結構技巧的な方法が必要となります(厳密な証明を送って下さった方は数名でした)が, 予想だけなら, 確率みたいな考えをすれば簡単に出来ますね.

 即ち, [kπ]=[kπ+3π]を満たすのはkπの小数部分が13π未満のときであって, kπの小数部分はほとんど0から1のランダムな値をとるので, 確率的に考えれば答も13πになる, というものです.

 厳密な方法としては, こういう整数部分をとる系のやつは, 各kに対して[kπ]を考えるだけでなく, 各mに対してm=[kπ]なるkの個数を考える, つまり数える方向を変えると上手くいくことが多いです. 下図のようにグラフにすると分かりやすいです.(横軸がkで, 直線の下の正方形のy座標が[k/π]に対応)
問6 問6

 [解答例]

 (1)整数mに対し[kπ]=mなるkの個数をf(m)とおくと, この値は34に限られる.m=0,1,[nπ]のうちでf(m)=3なるmN3個,f(m)=4なるmN4個とすると,an=N4である.
 まず,mの総数から
N3+N4=[nπ]+1(A)
が成立する.さらにkの総数から
n3N3+4N4n+3(B)
が成立する.(m=[nπ]の時のみ,[kπ]になるknより大きくなり得るので,その分を不等式で評価した)
 (B)3(A)より,
13n[nπ]3nN4n13n[nπ]
だから,limnann=13πである.

 (2)今度は組(f(m),f(m+1))を考えると,π<3.5より,これは(4,4)とはなり得ないことが分かる.
 m=0,1,[nπ]のうち,これが(3,3)となるmN33個,(3,4)となるmN34個,(4,3)となるmN43個とすると,bn=N33である.
 まずmの総数から
N33+N34+N43=[nπ]+1(C)
次に,N43f(m)=4なるmの個数に等しいから,N43=N4(D)である.N34についても同様だが,f(0)=4をカウントしないことと,f(m+1)=4になる可能性を加味して,N41N34N4(E)が成立する.(C),(D),(E)より,
1n[nπ]2N4n+1nN33n1n[nπ]2N4n+2n
だから,limnbnn=1π2(13π)=7π2である.

最後に

 まずは, ここまで読んでくださった方, 本当にありがとうございました. 楽しんでいただけたでしょうか.

 やはり極限は, 第3問や第5問のような問題を感覚的に近似して予想するのが楽しいですね. また, 今回はほとんどがそうでしたが, anとかxnの具体的な値はひとつも求まらないのに極限値だけは求まるというのも不思議で面白いですよね. (ですから第5問でS(r)を具体的に求めるのは邪道なのです!)

 また気が向いたら高校数学の作問を作ろうと思います. 今回は私も十分に楽しませていただきました. それでは, ありがとうございました.

投稿日:2021821
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