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大学数学基礎解説
文献あり

フーリエ変換からフーリエ級数と離散時間フーリエ変換と離散フーリエ変換を導出したい

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目的

Fourier 変換から出発し、複素型の Fourier 級数および離散時間 Fourier 変換を導出し、さらにそれらから離散 Fourier 変換を導出する方法を知る。なるべく step-by-step に記述するが、怪しい式操作は気にしない。

原理

下の図のように、それぞれの変換について対象となる関数の周期化や離散化を施すと別の変換を得られる。

Fourier 変換周波数領域離散化時間領域周期化Fourier 級数時間・離散周波数・周期周波数・周期時間・離散離散時間 Fourier 変換時間・周期周波数・離散離散 Fourier 級数

今回は時間領域の操作を行うことで、別の変換を導出する。

また、離散 Fourier 級数を時間領域・周波数領域ともに有限の範囲に制限することで離散 Fourier 変換が得られる。

準備

今後使う武器たちを挙げておく。jは虚数単位である。

Fourier 変換

Fourier 変換

tRで定義されたxc(t)について、Fourier 変換F[xc(t)](jΩ)を次で定める。

(0.1)F[xc(t)](jΩ)xc(t)ejΩtdt

ただし、ΩRである。

逆 Fourier 変換

ΩRで定義されたXc(jΩ)について、逆 Fourier 変換F1[Xc(jΩ)](t)を次で定める。

(0.2)F1[Xc(jΩ)](t)12πXc(jΩ)ejΩtdΩ

ただし、tRである。

Fourier 変換対

xc(t),Xc(jΩ)が、

{xc(t)=F1[Xc(jΩ)](t)Xc(jΩ)=F[xc(t)](jΩ)

なる関係であるとき、それらを Fourier 変換対と呼び、次のように書く。

xc(t)FXc(jΩ)

無限和の変換公式

Dirichlet 核の極限

次のように定義された Dirichlet 核DN(x)

DN(x)12πk=NNejkx

について、次の関係が成り立つ。

(0.3)limNDN(x)=12πk=ejkx=n=δ(x2πn)

Poisson 和公式

Fourier 変換対xc(t)FXc(jΩ)について、次の関係が成り立つ。

(0.4)n=xc(2πn)=12πk=Xc(jk)

(0.4)の一例として(0.3)が示せるが、むしろ(0.4)の証明に(0.3)が用いられがちなので分けることにした。

複素 Fourier 級数

導出

時間領域の周期化

実数t、正の実数Tについて、x~c(t)は周期Tを持つとする。すると、適当なxc(t)によって次のように表すことができる。

(1.1)x~c(t)r=xc(trT)

(1.1)の右辺について、Fourier 変換対xc(t)FXc(jΩ)を考えると、逆 Fourier 変換の定義(0.2)より、

x~c(t)=r=F1[Xc(jΩ)](trT)=r=12πXc(jΩ)ejΩ(trT)dΩ=r=12πXc(jΩ)ejΩtejΩrTdΩ(1.2)=Xc(jΩ)ejΩt[12πr=ejΩrT]dΩ

となる。ここで Dirichlet 核の極限(0.3)を思い出すと、

12πr=ejΩrT=12πr=ejr(ΩT)=k=δ(ΩT2πk)(1.3)=1Tk=δ(Ω2πTk)

であるから、(1.2)(1.3)を代入して、

x~c(t)=Xc(jΩ)ejΩt[1Tk=δ(Ω2πTk)]dΩ(1.4)=1TXc(jΩ)ejΩtk=δ(Ω2πTk)dΩ

となる。ここで、デルタ関数がピークを持つΩの近傍に注目すると、十分小さな正の実数εを用いて、(1.4)は、

x~c(t)=k=1T2πTkε2πTk+εXc(jΩ)ejΩtδ(Ω2πTk)dΩ(1.5)=k=[1TXc(j2πTk)]ej2πTkt

と変形できる。ここで、整数kについて、

(1.6)ck1TXc(j2πTk)

と定義すると、(1.5)(1.6)を代入することにより、

(1.7)x~c(t)=k=ckej2πTkt
を得る。

離散化された周波数領域

(1.6)の右辺について考えると、Xc(jΩ)xc(t)の Fourier 変換であったから、定義(0.1)より、

ck=1TF[xc(t)](2πTk)(1.8)=1Txc(t)ej2πTktdt

となる。実数全体を幅Tずつ分割すると、

R=r=[T2rT,T2rT)

とできるから、(1.8)は、

ck=1Tr=T2T2xc(trT)ej2πTk(trT)dt=1Tr=T2T2xc(trT)ej2πTktej2πkr=1dt=1Tr=T2T2xc(trT)ej2πTktdt=1TT2T2[r=xc(trT)]=x~c(t)ej2πTktdt(1.9)=1TT2T2x~c(t)ej2πTktdt

となる。

定義

Fourier 係数

tRで定義され、周期がTR+であるx~c(t)について、Fourier 係数ckを次で定める。

(1.10)ck1TT2T2x~c(t)ej2πTktdt

ただし、kZである。

Fourier 級数

x~c(t)をFourier 係数ckを用いて次のように級数展開したものをFourier 級数と呼ぶ。

(1.11)x~c(t)=k=ckej2πTkt

性質

Fourier 変換対xc(t)FXc(jΩ)に対して、

{x~c(t)r=xc(trT)ck1TXc(j2πTk)
という関係性があった。

連続的かつ周期的x~c(t)に対して、離散的な無限列{ck}が得られる。

離散時間 Fourier 変換 (DTFT)

導出

時間領域の離散化

Fourier 変換対xc(t)FXc(jΩ)について考える。nを整数、Δtを正の実数とし、次のように定義する。

(2.1)x[n]xc(nΔt)

(2.1)の右辺について、逆 Fourier 変換の定義(0.2)より、

x[n]=F1[Xc(jΩ)](nΔt)(2.2)=12πXc(jΩ)ejΩnΔtdΩ

である。ここでωΔtΩとおくと、(2.2)は、

(2.3)x[n]=12πXc(jωΔt)ejωn1Δtdω

となる。実数全体を幅2πずつ分割すると、

R=r=[π2πr,π2πr)

とできるから、(2.3)は、
x[n]=12πr=ππXc(jω2πrΔt)ej(ω2πr)n1Δtdω=12πr=ππXc(jω2πrΔt)ejωnej2πrn=11Δtdω=12πr=ππXc(jω2πrΔt)ejωn1Δtdω(2.4)=12πππ[1Δtr=Xc(jω2πrΔt)]ejωndω

となる。ここで、

(2.5)X(ejω)1Δtr=Xc(jω2πrΔt)

と定義すると、(2.4)(2.5)を代入することにより、

(2.6)x[n]=12πππX(ejω)ejωndω

を得る。

周期化された周波数領域

(2.5)の右辺について、Poisson 和公式(0.4)を適用できて、

X(ejω)=2πΔtn=F1[Xc(jω2πΩΔt)](2πn)=n=F1[2πΔtXc(j2πΔt(Ωω2π))](2πn)=n=F1[2πΔtXc(j2πΔtΩ)](t)ejω2πt|t=2πn=n=F1[Xc(jΩ)](Δt2πt)ejω2πt|t=2πn=n=xc(Δt2πt)ejω2πt|t=2πn=n=xc(nΔt)ejωn=n=xc(nΔt)=x[n]ejωn(2.7)=n=x[n]ejωn

となる。

定義

離散時間 Fourier 変換

nZで定義されたx[n]について、離散時間 Fourier 変換DTFT[x[n]](ejω)を次で定める。

(2.8)DTFT[x[n]](ejω)n=x[n]ejωn

ただし、ωRである。

逆離散時間 Fourier 変換

ωRで定義されたX(ejω)逆離散時間 Fourier 変換DTFT1[X(ejω)][n]を次で定める。

(2.9)DTFT1[X(ejω)][n]12πππX(ejω)ejωndω

ただし、nZである。

離散時間 Fourier 変換対

x[n],X(ejω)が、

{x[n]=DTFT1[X(ejω)][n]X(ejω)=DTFT[x[n]](ejω)

なる関係であるとき、それらを離散時間 Fourier 変換対と呼び、次で表す。

x[n]DTFTX(ejω)

性質

Fourier 変換対xc(t)FXc(jΩ)に対して、

{x[n]xc(nΔt)X(ejω)1Δtr=Xc(jω2πrΔt),ωΔtΩ

という関係性があった。

離散的x[n]に対して、X(ejω)周期的かつ連続的となり、その周期はω=2πである。

離散 Fourier 級数 (DFS)

Fourier 級数からの導出

時間領域の離散化

(1.1)で定められたx~c(t)について考える。整数n、正の整数Nについて、次のように定義する。

(3.1.1)x~[n]x~c(nTN)

(3.1.1)の右辺について、Fourier 級数の定義(1.11)より、適当な Fourier 係数ckのもとで、

x~[n]=k=ckej2πkT(nTN)(3.1.2)=k=ckej2πNkn

となる。整数全体をN個ずつに分割すると、

Z=r={rN,,(N1)rN}

とできるから、(3.1.2)は、

x~[n]=r=k=0N1ckrNej2πN(krN)n=r=k=0N1ckrNej2πNknej2πrn=1=r=k=0N1ckrNej2πNkn(3.1.3)=k=0N1[r=ckrN]ej2πNkn

となる。ここで、

(3.1.4)Ckr=ckrN

と定義すると、(3.1.3)(3.1.4)を代入することにより、

(3.1.5)x~[n]=k=0N1Ckej2πNkn

を得る。

周期化された周波数領域

(3.1.4)の右辺について考えると、Fourier 係数の定義(1.10)より、

Ck=r=1TT2T2x~c(t)ej2πT(krN)tdt=r=1TT2T2x~c(t)ej2πTktej2πTrNtdt(3.1.6)=1TT2T2x~c(t)ej2πTkt[r=ejNtT2πr]dt

となる。ここで、Dirichlet 核の極限(0.3)より、

r=ejNtT2πr=2πn=δ(NtT2π2πn)=n=δ(NtTn)(3.1.7)=TNn=δ(tnTN)

であるから、(3.1.6)(3.1.7)を代入して、

Ck=1TT2T2x~c(t)ej2πTkt[TNn=δ(tnTN)]dt(3.1.8)=1NT2T2x~c(t)ej2πTktn=δ(tnTN)dt

となる。ここで、被積分関数が周期Tを持つことから、十分小さな正の実数εを用いて積分区間を変更し、さらに積分区間においてデルタ関数がピークを持つtの近傍に注目すると、(3.1.8)は、

Ck=1N0εTεx~c(t)ej2πTktn=δ(tnTN)dt=1Nn=0N1nTNεnTN+εx~c(t)ej2πTktδ(tnTN)dt=1Nn=0N1x~c(nTN)=x~[n]ej2πTk(nTN)(3.1.9)=1Nn=0N1x~[n]ej2πNkn

となる。ここで、

(3.1.10)X~[k]NCk

と定義すると、(3.1.5)(3.1.9)(3.1.10)を代入することにより、

(3.1.11){x~[n]=1Nk=0N1X~[k]ej2πNknX~[k]=n=0N1x~[n]ej2πNkn

を得る。

DTFT からの導出

時間領域の周期化

整数n、正の整数Nについて、x~[n]は周期Nを持つとする。すると、適当なx[n]によって次のように表すことができる。

(3.2.1)x~[n]r=x[nrN]

(3.2.1)の右辺について、離散時間 Fourier 変換対x[n]DTFTX(ejω)を考えると、逆 DTFT の定義(2.9)より、

x~[n]=r=DTFT1[X(ejω)][nrN]=r=12πππX(ejω)ejω(nrN)dω=r=12πππX(ejω)ejωnejωrNdω(3.2.2)=ππX(ejω)ejωn[12πr=ejωrN]dω

となる。ここで Dirichlet 核の極限(0.3)を思い出すと、

12πr=ejωrN=12πr=ejr(ωN)=k=δ(ωN2πk)(3.2.3)=1Nk=δ(ω2πNk)

であるから、(3.2.2)(3.2.3)を代入して、

x~[n]=ππX(ejω)ejωn[1Nk=δ(ω2πNk)]dω(3.2.4)=1NππX(ejω)ejωnk=δ(ω2πNk)dω

となる。ここで、被積分関数が周期2πを持つことから、十分小さな正の実数εを用いて積分区間を変更し、さらに積分区間においてデルタ関数がピークを持つωの近傍に注目すると、(3.2.4)は、

x~[n]=1N0ε2πεX(ejω)ejωnk=δ(ω2πNk)dω=1Nk=0N12πNkε2πNk+εX(ejω)ejωnδ(ω2πNk)dω(3.2.5)=1Nk=0N1X(ej2πNk)ej2πNkn

となる。ここで、整数kについて、
(3.2.6)X~[k]X(ej2πNk)

と定義すると、(3.2.5)(3.2.6)を代入することにより、

(3.2.7)x~[n]=1Nk=0N1X~[k]ej2πNkn

を得る。

離散化された周波数領域

(3.2.6)の右辺について考えると、X(ejω)x[n]の DTFT であったから、定義(2.8)より、

X~[k]=DTFT[x[n]](2πNk)(3.2.8)=n=x[n]ej2πNkn

となる。整数全体をN個ずつに分割すると、

Z=r={rN,,(N1)rN}

とできるから、(3.2.8)は、

X~[k]=r=n=0N1x[nrN]ej2πNk(nrN)=r=n=0N1x[nrN]ej2πNknej2πkr=1=r=n=0N1x[nrN]ej2πNkn=n=0N1[r=x[nrN]]=x~[n]ej2πNkn(3.2.9)=n=0N1x~[n]ej2πNkn

となる。

定義

離散 Fourier 係数

nZで定義され、周期NN+であるx~[n]について、離散 Fourier 係数X~[k]を次で定める。

(3.3)X~[k]n=0N1x~[n]ej2πNkn

ただし、kZである。

離散 Fourier 級数

x~[n]を離散 Fourier 係数X~[k]を用いて次のように有限和に展開したものを離散 Fourier 級数と呼ぶ。

(3.4)x~[n]=1Nk=0N1X~[k]ej2πNkn

性質

x~c(t)とその Fourier 係数ckに対して、

{x~[n]x~c(nTN)X~[k]=Nr=ckrN

また、DTFT 変換対x[n]DTFTX(ejω)に対して、

{x~[n]r=x[nrN]X~[k]X(ej2πNk)
という関係性があった。

x~[n]およびX~[k]はともに周期的かつ離散的であり、それらの周期 はともにNである。

離散 Fourier 変換 (DFT)

導出

周期Nx~[n]とその離散 Fourier 係数X~[k]を考える。

ここで、n{0,1,,N1}において、

(4.1)xN[n]x~[n]

と定義すると、離散 Fourier 係数の定義(3.3)(4.1)を代入することにより、

(4.2)X~[k]=n=0N1xN[n]ej2πNkn

となる。さらに、k{0,1,,N1}において、

(4.3)XN[k]X~[k]

と定義すると、(4.2)(4.3)を代入することにより、

(4.4)XN[k]=n=0N1xN[n]ej2πNkn

を得る。

同様に、離散 Fourier 級数の定義(3.4)(4.1)(4.3)を代入することにより

(4.5)xN[n]=1Nk=0N1XN[k]ej2πNkn

を得る。

定義

離散 Fourier 変換

NN+,n{0,1,,N1}で定義されたxN[n]について、離散 Fourier 変換DFT[xN[n]][k]を次で定める。

(4.6)DFT[x[n]][k]n=0N1xN[n]ej2πNkn

ただし、k{0,1,,N1}である。

逆離散 Fourier 変換

NN+,k{0,1,,N1}で定義されたXN[k]について、逆離散 Fourier 変換DFT1[XN[k]][n]を次で定める。

(4.7)DFT1[XN[k]][n]1Nk=0N1XN[k]ej2πNkn

ただし、n{0,1,,N1}である。

離散 Fourier 変換対

xN[n],XN[k]が、

{xN[n]=DFT1[XN[k]][n]XN[k]=DFT[xN[n][k]

なる関係であるとき、それらを離散 Fourier 変換対と呼び、次で表す。

xN[n]DFTXN[k]

性質

x~[n]とその離散 Fourier 係数X~[k]に対して、

{xN[n]x~[n],n{0,1,,N1}XN[k]X~[k],k{0,1,,N1}

という関係性があった。

結局 DFS と同じ形ではあるが、xN[n]およびXN[k]はともに有限長Nの列である。一連の導出の流れとしてはおまけ感がある。

参考文献

[1]
樋口 龍雄, 川又 政征, MATLAB対応 ディジタル信号処理
投稿日:2021824
OptHub AI Competition

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  1. 目的
  2. 原理
  3. 準備
  4. Fourier 変換
  5. 無限和の変換公式
  6. 複素 Fourier 級数
  7. 導出
  8. 定義
  9. 性質
  10. 離散時間 Fourier 変換 (DTFT)
  11. 導出
  12. 定義
  13. 性質
  14. 離散 Fourier 級数 (DFS)
  15. Fourier 級数からの導出
  16. DTFT からの導出
  17. 定義
  18. 性質
  19. 離散 Fourier 変換 (DFT)
  20. 導出
  21. 定義
  22. 性質
  23. 参考文献