この記事は,CheapTrick[Morise, 2015]とD4C[Morise, 2016]という音声処理の手法について,考察した事項をメモしたものです.窓関数を用いたDFTによる信号処理についてご存じであれば読めるかと思います.
なお,周期
CheapTrickの窓関数が持つ重要な性質に「分析する信号が周期関数であれば,信号の時間シフトでパワーが変化しない」ことがあります.どういうことかというと,次の定理が成立します.
まず,
である.したがって,
と書ける.
ここで,
である.したがって,パーセバルの定理から
となる.
である.
この証明において本質的なのは「畳み込み定理」と「パーセバルの定理」であり,これらはどちらも離散フーリエ変換に対しても成立します.よって,この主張・証明は離散フーリエ変換に対するものとして書き直せます.
まず,
とおく.すると,
である.したがって,
と書ける.
ここで,
である.したがって,パーセバルの定理から
となる.
である.
次のJavaScriptを実行することで,この定理が成り立つことを数値的に確認できます.
const PI = Math.PI;
const N = 300;
const x = [];
const w = [];
for (let i = 0; i < N; i++) {
x[i] = Math.random();
x[i + N] = x[i];
x[i + 2 * N] = x[i];
}
for (let i = 0; i < 3 * N; i++) {
w[i] = 0.5 - 0.5 * Math.cos(2 * PI * i / (3 * N));
}
let S1 = 0;
let S2 = 0;
for (let i = 0; i < 3 * N; i++) {
S1 += (x[i] * w[i]) ** 2;
}
for (let i = 0; i < N; i++) {
S2 += x[i] ** 2;
}
console.log(S1 / S2); // 1.125 = 9/8
まず,
である.したがって,
と書ける.
ここで,
と計算できる(右辺の末項に注意).したがって,パーセバルの定理から
となる.
ここで,
となる.したがって,三角不等式から
と評価できるので,式(1)から
となる.
である.
以上により,不等式
が成立する.したがって(
と近似できる.