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Fibonacci数と三角関数

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はじめに

本稿では,「直前の2項を足し合わせたものを次の項とする」という極めて単純な定義ながら,とても美しい性質を数多く秘めているFibonacci数列,およびLucas数列を扱う.Fibonacci数の関係式の一部が三角関数の関係式に似ていると感じたことから本稿ではその関係性を考え,最終的にはFibonacci数列等に関する新たな一般項を表す式を導く.さらには,Chebyshev多項式との繋がりも見出す.

基礎知識の確認

この章では,定義や一般項を表すBinetの公式など,Fibonacci数列周辺の基本事項を確認する.

Fibonacci数列,Lucas数列

次の漸化式で定まる数列{Fn}をFibonacci数列という.

F1=F2=1,Fn+2=Fn+1+Fn(n=1,2,3,)

また,次の漸化式で定まる数列{Ln}をLucas数列という.

L1=1,L2=3,Ln+2=Ln+1+Ln(n=1,2,3,)

さらに,Fibonacci数列の項に出てくる数をFibonacci数,Lucas数列の項に出てくる数をLucas数という.

Fibonacci数列の特性方程式x2x1=0の解をϕ:=1+52,ϕ¯:=152とする.ϕ,ϕ¯は共に黄金数と呼ばる.これもまた美しい性質を多く持っているが,目的から外れるので本稿では扱わない.ただし,ϕ2=ϕ+1,ϕϕ¯=1,ϕ+ϕ¯=1は用いるのでここで確認しておく.
Fibonacci数列の一般項Fnを求める公式はBinetの公式と呼ばれ,同様のものがLucas数列にも存在する.

Binetの公式

Fibonacci数列,Lucas数列の一般項は次の式で表される.
Fn=ϕnϕ¯n5,Ln=ϕn+ϕ¯n

さらに,Fibonacci数,Lucas数それぞれについて加法定理も存在する.

加法定理

任意の自然数m,nについて,次が成り立つ:
2Fm+n=FmLn+LmFn,2Lm+n=LmLn+5FmFn

Binetの公式を代入し,計算すると従う. 2Fm+n=2(ϕm+nϕ¯m+n)5=(ϕmϕ¯m)(ϕn+ϕ¯n)+(ϕm+ϕ¯m)(ϕnϕ¯n)5=FmLn+LmFn2Lm+n=2(ϕm+n+ϕ¯m+n)=(ϕm+ϕ¯m)(ϕn+ϕ¯n)+5ϕmϕ¯m5ϕnϕ¯n5=LmLn+5FmFn

F2n=LnFn,2L2n=Ln2+5Fn2

Fibonacci数の三角関数表示

この章では本題のFibonacci数,Lucas数と三角関数との関係について考える.
Eulerの公式より,三角関数は次のように表される.

cosx=eix+eix2,sinx=eixeix2i

これより先,z=π2+ilogϕとする.

Fn=in1sin(nz)sinz,Ln=2incos(nz)

三角関数の加法定理などを用いて変形していくと求めたいものを得ることができる.
sin(nz)=sin(nπ2+inlogϕ)={(1)n12cos(inlogϕ)(n:odd)(1)n2sin(inlogϕ)(n:even)={enlogϕ+enlogϕ2in1(n:odd)enlogϕenlogϕ2in1(n:even)=52in1Fn=sinzin1Fncos(nz)=cos(nπ2+inlogϕ)={(1)n12sin(inlogϕ)(n:odd)(1)n2cos(inlogϕ)(n:even)={enlogϕenlogϕ2in1(n:odd)enlogϕ+enlogϕ2in1(n:even)=Ln2in

ちなみに,先ほど証明した加法定理は,これを用いることでも証明することができる.

加法定理(再掲)

任意の自然数m,nについて,次が成り立つ:
2Fm+n=FmLn+LmFn,2Lm+n=LmLn+5FmFn

Fibonacci数,Lucas数をそれぞれ三角関数表示して計算するだけである.
2Fm+n=2im+n1sin(mz+nz)sinz=im1sin(mz)sinz2incos(nz)+2imcos(mz)in1sin(nz)sinz=FmLn+LmFn2Lm+n=4im+ncos(mz+nz)=2imcos(mz)2incos(nz)52im1sin(mz)52in1sin(nz)5=LmLn+5FmFn

cos(nz)sin(nz)は,Chebyshev多項式(命題4参照)を用いることでcoszsinzで表すことができる.

非負整数nに対し,cos(nθ)=Tn(cosθ)なるn次整数係数多項式Tn(x)が存在する.これをn次Chebyshev多項式という.

T0(x)=1,T1(x)=xである.n2のときは,三角関数の和積公式よりcos(nx)+cos((n2)x)=2cos((n1)x)cosxであるので,Tn(x)=2xTn1(x)Tn2(x)と定めればよい.

命題4を用いることで,定理2の次の表現を得る.

Ln=2inTn(12i),Fn=in1nTn(12i)
なお,Tn(x)Tn(x)の微分を表す.

L1=1=2icoszより,cosz=12iである.よって,Tn(cosx)=cos(nx)x=zを代入すると第1式を得る.また,両辺を微分することで第2式も得ることができる.

投稿日:2021831
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