本稿では,「面白い証明」ということでBolsuk-Ulamの定理を認めた上でハムサンドイッチの定理を証明します.平易な内容ですが僕は面白いと思ってるのでぜひ楽しんでください!
$\mathbf{S}^m:=\{x\in\mathbf{R}^{m+1}\mid |x|=1\}$とする.
連続写像$f:\mathbf{S}^n\to \mathbf{R}^n$に対し,$f(a)=f(-a)$なる$a\in\mathbf{S}^n$が存在する.
これは魅力的かつ謎の多い定理で,1933年に証明された後,現在も盛んに研究が行われています.さらに,その分野は数学にとどまらず,物理,生物,化学,工学,計算機科学,経済学などと幅広いらしいです.(詳しくは知らないですが……)
さて,$n=2$のとき,この定理には次の有名な言い回しがあります:
地球上にある地点が存在し,温度と湿度が対蹠点と一致する.
簡単に考えたいので,本稿ではこの別表現を用います.なお,「対蹠点」とは,北極に対する南極,日本に対するブラジルらへん,のように地球の中心に対してちょうど真反対の点のことを言います.
ハムとチーズとパンでできたサンドイッチが1つあります.
ここで,サンドイッチはどんな形でもいいとします.
さて,2人の人がこのハムサンドイッチを分け合おうとします.
2人はこのサンドイッチを一刀両断することでハムとチーズとパンがそれぞれちょうど半分になるように分けたがっています.このようなことが可能なのでしょうか?
可能です!!!
どのようなハムサンドイッチも一刀両断で均等に分けることができる.
では,これをBorsuk-Ulamの定理を使って証明していきましょう!!
簡単のため,ここではチーズは抜きにし,パンとハムはペラペラのものを使います.このサンドイッチは$xy$平面上においてあることにしておきましょう.チーズが入っていて,ハムもチーズもペラペラでない場合は4次元球面版のBorsuk-Ulamの定理を用いることで同様に示せます.
$xy$平面に置かれたハムサンドイッチ
サンドイッチを一刀両断することは平面上のある直線でサンドイッチを2つの部分に分けるということです.
ここで,平面$ax+by\geq c$内にあるハムの量を$u(a, b, c)$,パンの量を$v(a, b, c)$と書くことにしましょう.
直線$ax+by=c$で一刀両断されたハムサンドイッチ
$(a, b, c)\neq(0, 0, 0)$より,$a^2+b^2+c^2=1$としても任意の切り方と対応させることができます.
よって,単位球面($x^2+y^2+z^2=1$)上の点$(a, b, c)$に2数の組$(u(a, b, c), v(a, b, c))$を対応させることができました.
この対応は,地球上の任意の点に温度と湿度が対応していることと同じ状況です.
よって,Borsuk-Ulamの定理より,球面上のある点$(a_0, b_0, c_0)$で,$u(a_0, b_0, c_0)=u(-a_0, -b_0, -c_0), v(a_0, b_0, c_0)=v(-a_0, -b_0, -c_0)$となる点が存在します.
右辺は$-a_0x-b_0y\geq-c_0\Leftrightarrow a_0x+b_0y\leq c_0$内にあるパンやハムの量なので,直線$a_0x+b_0y=c_0$はハムサンドイッチを均等に両断することがわかりました.