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虚数単位の階乗の絶対値の値(= | i ! |)

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$$$$

今回紹介する式はこちらです:

$$|i!|=\sqrt{\frac{\pi}{\sinh\pi}}$$


余談
$!$」はふつう, 0以上の整数に対して定義される記号で, 複素数に対して使うのは「どちらかといえば不適切」だと思っていました. しかし, 他にもいろいろ見てみたところ$z!:=\Gamma(1+z)$は思っていたよりも一般的なようでした.

例えば Wolfram Alpha では$\Gamma(1+z)$$z!$, つまり「$!$」の複素数への拡張とすると明示( https://mathworld.wolfram.com/Factorial.html )しています.

以降, $z$は複素数とします.

証明

次の公式を使って比較的簡単に示すことができます.

ガンマ関数の相反公式

複素数$z$に対して以下が成り立つ.
$$\Gamma(z)\Gamma(1-z)=\frac{\pi}{\sin\pi z}$$

上記の公式で$z=i$とし, $\Gamma(1+z)=z\Gamma(z)$より,
$$\Gamma(i)\Gamma(1-i)=-i\Gamma(i)\Gamma(-i)=\frac{\pi}{\sin(i\pi)}.$$

$\sin z=-i\sinh(iz)$だから,
$$\Gamma(i)\Gamma(-i)=\frac{\pi}{\sinh\pi}.$$

ここで, 両辺に$i\times (-i)=1$をかけます.
$$ i\Gamma(i)(-i\Gamma(-i))=\frac{\pi}{\sinh\pi}\times 1$$

また, $\overline{\Gamma(z)}=\Gamma(\overline{z})$ ($\overline{z}$:複素共役)より,
$$ i\Gamma(i)(-i\Gamma(-i))=i\Gamma(i)\overline{i\Gamma(i)}=|i\Gamma(i)|^2=\frac{\pi}{\sinh \pi}.$$

右辺は正なので,
$$|i\Gamma(i)|=\sqrt{\frac{\pi}{\sinh \pi}}.$$

よって,
$$\boldsymbol{|i!|=\sqrt{\frac{\pi}{\sinh\pi}}.}$$

補足

$\sin$$\sinh$ の式

オイラーの公式を使います.

オイラーの公式

複素数$z$に対して以下が成り立つ.
$$\cos z+i\sin z=e^{iz}$$

上記の式そのままから, 両辺の共役をとったものを辺々引きます. すると,
$$ 2i\sin z=e^{iz}-e^{-iz}$$
となります.

あとは$\displaystyle\sinh z=\frac{e^{z}-e^{-z}}{2}$に従って,
$$\sin z=-i\sinh(iz)$$
が得られます.

ガンマ関数の複素共役

実はこの記事を大規模手直しする前は$\Gamma(z+1)=z\Gamma(z)$を使って示していましたが, 両辺が無限に長くなって心配だったので, 別の方法にしました.

$\Gamma(z)$ を別の形で表示すればよさそうです. $z$の簡単な計算規則を使った式なら何でもよいのですが, 今回は極限の定義の式を使います.

ガンマ関数 (極限を用いた定義)

複素数$z$に対して,
$$\Gamma(z)=\lim_{n\to\infty}\frac{n^zn!}{\prod_{k=0}^n(z+k)}.$$

$\overline{n^z}=n^{\overline{z}}$であるので$\overline{\Gamma(z)}=\Gamma(\overline{z})$は自明です.

投稿日:2020118
更新日:2日前
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投稿者

数学科出身の中でも最弱

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