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極限の問題の母関数を使った解法

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 この記事では, 以下の問題の解説をしようと思います.


 1nの数を無作為に並べた時, 大小大小...の順(例えば"51423"等)に並ぶ確率をpnとする.
 limnpn+1pn を求めよ.

漸化式を立てる

 まずは, 漸化式を立てます. このような並べ方の場合の数をan(=n!pn)とおきます.

 ここで, n2のとき, 小大小大...の順に並べる方法も同じくanであることに注意します.(これは各位の数をn+1から引けばすぐにわかります.)

 (n+1)個の数の並びであって, 「大小大小...」または「小大小大...」となっているものについて考えます. この並びの(k+1)番目が1であるとしましょう. すると, 1から左向きに見ていくと, 大小大小...の順でk文字が並んでいて, 同様に右向きに見ていけば, 大小大小...の順で(nk)文字が並んでいます.

 これを踏まえれば, k=0,1,,nに対して, (k+1)番目に1を置き, それより左に入る数を(nk)通りの中から選んでak通りで並べ, 同様に右に入る数をank通りで並べれば, 2an+1通りの並べ方が再現できることが分かります. (但し, 便宜的にa0=1,a1=1とします.)

 従って,

2an+1=k=0n(nk)akank

が, n1で成り立つことが分かりました. これにan=n!pnを代入して,
2(n+1)pn+1=k=0npkpnk(n1)
を得ます.

母関数を利用する

 f(x)=n=0pnxn とおきます.

 まず,
n=02(n+1)pn+1xn=2f(x)
さらに,
n=0(k=0npkpnk)xn=f(x)2
となります.

 これら2式の全ての係数が等しいので...としたいところなのですが, 例の等式はn1でしか成立せず, 具体的にはn=0のときは右辺に+1が必要になります.(つまり, 定数項のみ+1が必要になります.) 従って, 係数を比べて,
2f(x)=f(x)2+1
が成り立ちます.

微分方程式を解く

 これは基本的な微分方程式になりますね. 2y=y2+1の解ですから, 変数分離してy=tan(x2+C)のようになります. さらにf(0)=p0=a0=1ですからCも求まって,
f(x)=tan(x2+π4)
となります.

極限を求める

 f(x)の原点から最も近い特異点はx=π2ですから, このTaylor展開の収束半径はπ2となります. 従って,
limnpn+1pn=2π
です.

ここまで読んでくださった方, ありがとうございました.

投稿日:202197
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投稿者

東大理数B4です

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