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大学数学基礎議論
文献あり

ルベーグ積分30講の行間埋め

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はじめに

数学に関して非専門なので数弱ですが,「ルベーグ積分30講」の行間埋めを試みてみます.記事の見方は囲み枠を補完してます.個人的には数学つよつよの人はこんな記事を書いて欲しいという願望もあったりします.間違い等がありましたらコメント等で教えて頂ければ幸いです.

第5講 ルベーグ外測度

ルベーグ外測度

ルベーグ外測度は次の基本的な性質をもつ.

  1. $0\leq m^{*}(S)<\infty,m^{*}(\phi)=0$
  2. $S\subset T$ならば$m^{*}(S)\leq m^{*}(T)$
  3. $S_1$, $S_2$, $\cdots$,$S_l$,$\cdots$ を有界な集合列とする.和集合$\bigcup_{l = 1}^\infty S_l$もまた有界ならば
    $$ m^{*}\left(\bigcup_{l = 1}^\infty S_l\right)\leq \sum_{l=1}^{\infty}m^{*}(S_l) $$

(1)
$m^{*}(\phi)=0$はコメントで述べたように$|\phi|=0$とおいたことからの帰結である.

(2)
$T$をおおう長方形の系列$\{I_1, I_2,\cdots,I_n,\cdots\}$は,必ずまた$S$をおおっていることに注意するとよい.

(1)
$$ 任意の \epsilon > 0に対して I_{\epsilon} = [0,\epsilon)\times[0,\epsilon) を考えると \phi \subset I_{\epsilon}よりm^{*}(\phi)\leq |I_{\epsilon} | = \epsilon^{2}である. $$

$$ \epsilon > 0は任意なのでm^{*}(\phi)=0である. $$

(2)
$$ T \subset \bigcup_{i=1}^{\infty}I_n \ \ (I_n : 長方形)とすると $$

$$ S\subset T \subset \bigcup_{i=1}^{\infty}I_n $$

であるので, $m^{*}(S)$の定義から

$$ m^{*}(S)\leq\sum_{n=1}^{\infty} |I_n| $$

をえる.この不等式は$T\subset \bigcup_{i=1}^{\infty}I_n$なる任意の長方形の列${I_n}$に対して成り立つ.
そのため,右辺についてそのような長方形の列について$\inf$をとれば$m^{*}(S) \leq m^{*}(T)$をえる.

第6講 ルベーグ内測度

内測度の性質

$$ J = S\cup (J\cap S^{c}) $$

$$ J = (S\cup S^{c})\cap J = (S \cap J)\cup(S^c \cap J)=S\cup (J\cap S^{c})\\ \because S \subset J $$

$$ Tを含む長方形Jをとると,S\subset TからJ\cap S^{c}\supset J\cap T^{c}が成り立つ. $$

$$ S\subset Tから, S^c \supset T^{c}である.以上から,J\cap S^{c}\supset J\cap T^{c}が成り立つ. $$

第10講 可測集合族

可測集合全体はボレル集合体をつくる

集合$X$の上に外測度$m^{*}$が与えられているとする.このとき, $m^{*}$に関して可測な集合全体はボレル集合体をつくる.

(B1)をみたすこと:
可測の条件式に入れてみれば$\phi \in \mathfrak{M} $は明らかである.

(B1)をみたすこと:
$$ A =\phiとすると, A^{c}=Xである.\\ m^{*}(E\cap A) + m^{*}(E\cap A^c) = m^{*}(E\cap \phi) + m^{*}(E\cap X)=m^{*}(\phi) + m^{*}(E)=m^{*}(E)\\ 以上から,\phi \in \mathfrak{M} であることから(B1)をみたす. $$

第11講 測度空間

増加列と減少列

$$ \lim_{n \to \infty}B_n = \bigcup_{n=1}^{\infty}(A_1-A_n)=A_1 -\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n $$

$$ \lim_{n \to \infty} B_n = \bigcup_{n=1}^{\infty}(A_1-A_n) \\ =(A_1-A_1)\cup(A_1-A_2)\cup(A_1-A_3)\cup\cdots \\ = (A_1\cap A_1^{c})\cup(A_1\cap A_2^c)\cup(A_1\cap A_3^c)\cup\cdots \\ =A_1\cap(A_1^c\cup A_2^c\cup A_3^c\cup \cdots) \\ =A_1\cap (A_1\cap A_2\cap A_3\cap \cdots)^c \\ =A_1 -\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n $$

集合列の上極限と下極限

上極限と測度との関係は次のように与えられる.

(e)
$m\left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n\right) <\infty$のとき

$$ m\left( \varlimsup A_n \right)\geq \varlimsup m(A_n) $$

(e):
$C_1 = \bigcup_{k=1}^{\infty}A_k$, $C_2 = \bigcup_{k=2}^{\infty}A_k$, $\cdots$, $C_n = \bigcup_{k=n}^{\infty}A_k$, $\cdots$とおくと
$$ C_1 \supset C_2 \supset \cdots C_n \supset \cdots \rightarrow \varlimsup A_n $$

$$ C_n \supset A_n $$
が成り立つ.(b)を用いると, 上と同様にして証明することができる.

(e):
$C_1 = \bigcup_{k=1}^{\infty}A_k$, $C_2 = \bigcup_{k=2}^{\infty}A_k$, $\cdots$, $C_n = \bigcup_{k=n}^{\infty}A_k$, $\cdots$とおくと
$$ C_1 \supset C_2 \supset \cdots C_n \supset \cdots \rightarrow \varlimsup A_n $$

$$ C_n \supset A_n $$
が成り立つ.(b)を用いると,

$$ m( \lim_{n \to \infty} C_n) = \lim_{n \to \infty} m(C_n) = m(\varlimsup A_n) $$

が成り立つ.一方, (ii)から

$$ m(C_n)\geq m(A_n) \ \ \ (n = 1,2,3, \cdots) $$

したがって, 両辺に現れた数列の上極限をとってみると, 実数列に関する上極限の性質から
$$ \lim m(C_n) = \varlimsup m(C_n) \geq \varlimsup m(A_n) $$
が得られる.以上から,

$$ m\left(\varlimsup A_n\right) \geq \varlimsup(A_n) $$

第13講 可測集合の周辺

2つの可測性の一致

$$ J=K\cup\left(J\cap K^c\right) (共通点なし) $$

$$ J = \left(K\cup K^c\right)\cap J=(K\cap J)\cup(K^c\cap J)=K\cup(K^c\cap J) \ \ \ \because K \subset J $$

$$ m(K) = m(J) - m(J\cap K^c)=|J|-m( \tilde{G} ) $$

$K =J\cap\tilde{G^c}$とおいた.このとき,$K^c = J^c \cup \tilde{G}$となる.以上から,

$$ J\cap K^c = J \cap (J^c \cup \tilde{G}) = (J\cap J^c)\cup(J\cap \tilde{G}) =\phi\cup \tilde{G}=\tilde{G} \\ \because \tilde{G}\subset J $$

第18講 可測関数の積分

  • $\varphi (x)\geq\psi(x)\geq 0$とする.このとき

$$ \int_{E}\varphi (x) m(dx) \geq \int_{E}\psi (x) m(dx) \geq 0 $$

  • 実数$a,b$に対し

$$ \int_{E}\left(a\varphi (x) + b \psi(x)\right)m(dx) = a\int_{E}\varphi (x)m(dx) + b\int_{E}\psi(x)m(dx) $$

  • $E\cap F = \phi$ならば

$$ \int_{E\cup F} \varphi (x)m(dx)= \int_{E}\varphi (x)m(dx) + \int_{F}\varphi (x)m(dx) $$

この証明はどれも簡単なので特に述べない.

工事中

第19講 積分の基本定理

積分の基本定理

積分の基本定理

$f(x)$を測度空間$X\left(\mathcal{B},m\right)$上の可測関数で,$f(x) \geq0$を満たすものとする.単関数の増加列

$$ 0\leq\varphi_1(x)\leq\varphi_2(x)\leq \cdots \leq\varphi_n(x)\leq \cdots $$

によって,$f(x)$

$$ f(x)= \lim_{n \to \infty} \varphi_n(x) $$
と表されているとする.このとき任意の$E\in\mathcal{B}$に対して

$$ \int_E f(x)m(dx) = \lim_{n \to \infty}\int_E\varphi_n(x)m(dx) $$

が成り立つ.

(i) $\int_E \psi(x)m(dx)<\infty$のとき, このとき$m(E^{*})<\infty$である.

$$ \infty > \int_E \psi(x)m(dx) = \sum_{i=1}^{s}\alpha_i m(E\cap A_i) \geq \min \alpha_i \sum_{i=1}^{s}m(E\cap A_i) = \min \alpha_i m(E^{*}) $$

$\min\alpha_i>0$より$m(E^{*})<\infty$である.

(ii) $\int_E\psi(x)m(dx)=\infty$のとき,このときは$m(E^{*})=\infty$である.

$$ \infty=\int_{E}\psi(x)m(dx)=\sum_{i=1}^{s}\alpha_i m(E\cap A_i)\leq \max\alpha_i\sum_{i=1}^{s}m(E\cap A_i)=\max \alpha_i m(E^{*}) $$

$\max\alpha_i>0$より$m(E^{*})=\infty$である.

$x\in B_n$に対しては,$\varphi_n(x)\geq\psi(x)-\epsilon\geq\epsilon$が成り立つから,

$$ \int_E \varphi_nm(dx)\geq\epsilon m(E\cap B_n) $$

$$ \int_E \varphi_n(x)m(dx) = \left(\int_{E\cap B}+\int_{E\cap B^{c}}\right)\varphi_n(x)m(dx) \geq \int_{E\cap B}\varphi_n(x)m(dx) \geq \int_{E\cap B}\epsilon m(dx) \geq \epsilon m(E\cap B_n) $$

つづく...

参考文献

投稿日:2021910
OptHub AI Competition

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hdk105
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