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大学数学基礎解説
文献あり

Diamondのmodel form

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戯れに.

PAIP(参考文献参照)(参考文献をciteする方法がよくわかりませんでした)の該当箇所の過去のノートの抜粋です.$\diamondsuit$に馴染みのある人にとっては「それはそう」という類のものかもしれませんが,諸々の無限組み合わせ論的原理に対する見方を変えるきっかけとなった内容なのでこれを選びました.使用例とした正則基数の後続基数におけるSouslin木の構成法は標準的だと思います(例えばJech本はこのようにしていたはず).

構成

$\kappa$は正則不可算基数,$S\subset\kappa$は定常とする.$\diamondsuit_\kappa(S)$を仮定し$\langle a_\alpha:\alpha\in S\rangle$$\diamondsuit_\kappa(S)$-列(つまり,$a_\alpha\subset\alpha$かつ,$A\subset \kappa\Rightarrow\{\alpha\in S: a_\alpha=A\cap\alpha\}$は定常)とする.$\tau^*,|\tau^*|=\kappa$を濃度$\kappa$の語彙の一般形とする.即ち$\tau^*=\{s^n_i:i<\kappa,n<\omega\}$,各$s^n_i$$n$-項記号(記法の簡単のため関係記号のみを扱う)とする.各$\alpha\in S$について,$\tau^*$-構造$M_\alpha=(\alpha;(\tau^*)^{M_\alpha})$を定める.そのために次のような$f_s,X_s$ for $s\in \tau^*$を選ぶ.

  1. $X_s\subset\kappa, |X_s|=\kappa$
  2. $f_s:\kappa^{lg(s)}\to X_s$は単写,ここで$lg(s)$$s$の項数
  3. $s\not=s'$ならば$X_s\cap X_{s'}=\emptyset$.

$M_\alpha$における$s=s^n_i\in\tau^*$の解釈を以下で定める.

$$ (s)^{M_\alpha}=\{(l_1,\dots,l_n)\in\alpha^n:f_s(l_1,\dots,l_n)\in a_\alpha\}. $$

これで$\tau^*$-構造の列$\langle M_\alpha:\alpha\in S\rangle$が得られた.

性質

$M$を濃度$<\kappa$の語彙$\tau$の構造で$\kappa$を台集合とするものとする.$\tau\subset\tau^*$であるとしてよいから各$M_\alpha$は縮約して$\tau$-構造とみなせる.$\alpha<\kappa$について$M\upharpoonright\alpha$$\alpha$を台集合とする$M$の部分モデルを表す.

次の連言を満たす$\alpha\in S$は定常に存在する.

(a) $M_\alpha=M\upharpoonright\alpha$.
(b) $M_\alpha\prec M$.

$\kappa$は正則不可算かつ$|\tau|<\kappa$だから$\{\alpha<\kappa:M\upharpoonright\alpha\prec M\}$はclubである.よって主張は(a)を満たす$\alpha\in S$が定常に存在することから従う.

同じ理由で$C=\{\alpha<\kappa:$すべての$s=s^n_i\in\tau^*$について$f_s[\alpha^n]\subset\alpha\}$はclubである.$A=\bigcup\{f_s[s^M]:s\in\tau\}$とする.明らかに$s=s^n_i\in\tau^*$について$s^M=\{(l_1,\dots,l_n)\in\kappa^n:f_s(l_1,\dots,l_n)\in A\}$
なので,各$\alpha<\kappa$について
$$\tag{1} s^{M\upharpoonright\alpha}=\{(l_1,\dots,l_n)\in\alpha^n:f_s(l_1,\dots,l_n)\in A\} $$
となる.

$\diamondsuit_\kappa(S)$の定義より$T=\{\alpha\in S:A\cap\alpha=a_\alpha\}$は定常であるから,$T\cap C$は定常である.$\alpha\in T\cap C$ならば(1)より$M_\alpha=M\upharpoonright\alpha$となる.

一項述語$A$だけからなる語彙$\tau=\{A\}$を考えれば,上記を満たす$\langle M_\alpha:\alpha\in S\rangle$から逆に$\diamondsuit_\kappa(S)$-列を得ることができる.従って$\diamondsuit_\kappa(S)$$\langle M_\alpha:\alpha\in S\rangle$の存在と同値である.他に,`function form'の$\diamondsuit_\kappa(S)$-列なども容易に得ることができる.この確認方法より,列の近似する部分集合や関数の数,及び関数の項数などは適当に(主に$<\kappa$の範囲で)増やしてよい.

使用例

以上を用いれば,典型的議論の非本質的な部分を幾らか省略することができる.

$\kappa$は正則基数,$S=\{\alpha<\kappa^+:cf(\alpha)=\kappa\}$とし,$\diamondsuit_{\kappa^+}(S)$を仮定する.このとき,$\kappa^+$-Souslin木が存在する.

$\alpha<\kappa^+$に関する帰納法で目的の木$T$のレベル$\alpha$ $T_\alpha$を構成する.$T_\alpha$に含まれる節は$\kappa^+\setminus T_{<\alpha}$(ここで$T_{<\alpha}=\bigcup\{T_\beta:\beta<\alpha\}$である)の下から順に選ぶことにすれば$T$の節全体は自動的に$\kappa^+$となるので,どのような(木の)順序をつけるかのみを記述する.

$\alpha=\beta+1$のとき,各$x\in T_\beta$に対して二つの後続節$y_1(x),y_2(x)\in T_\alpha$を付け加える.

$\alpha<\kappa^+$が極限で,かつ$cf(\alpha)<\kappa$であるとき,$T_{<\alpha}$の各共終枝$b$に対して$x(b)\in T_\alpha$を,すべての$x\in b$について$x<_Tx(b)$となるように付け加える.

$\alpha<\kappa^+$が極限で,かつ$cf(\alpha)=\kappa$であるとき.ここで$\diamondsuit_{\kappa^+}(S)$による$\langle M_\alpha:\alpha\in S\rangle$を用いる.$M_\alpha$は一つの一項関係と一つの二項関係の構造とし,$M_\alpha$における一項関係の解釈を$A_\alpha$とする.$A_\alpha$$T_{<\alpha}$の極大反鎖であるならば,$T_\alpha$$T_{\leq\alpha}$において$A_\alpha$が有界な極大反鎖となるように定める.帰納的な議論よりこのようにすることができる.$A_\alpha$$T_{<\alpha}$の極大反鎖でないならば,各$x\in T_{<\alpha}$について$b(x)$$x\in b(x)$となる$T_{<\alpha}$の共終枝を(再び帰納的に議論して)選び,各$b=b(x)$に対して$x(b)\in T_\alpha$を,すべての$x\in b$について$x<_Tx(b)$となるように付け加える.

これで$T$が得られた.構成より$T$は,すべての節が両立しない二つの拡大を持つような$\kappa^+$-木である.$A\subset T$(=$\kappa^+$)を$T$の任意の極大反鎖とする.命題1より$\alpha<\kappa^+$, $cf(\alpha)=\kappa$が存在して$M_\alpha=(\alpha;<_T\upharpoonright\alpha,A\cap\alpha)\prec T$となる.$\alpha=T_{<\alpha}$となる$\alpha<\kappa^+$はclubに存在するので$M_\alpha=T_{<\alpha}$としてよい.初等性より$A\cap\alpha$$T_\alpha$の極大反鎖となるから,構成より$A\cap\alpha$$T_{\leq\alpha}$の有界極大反鎖であり,極大性より$A\subset\alpha$となる.よって$T$は濃度$\kappa^+$の反鎖を持たない.

参考文献

[1]
Saharon Shelah, Proper and Improper Forcing, Perspectives in Mathematical Logic, Springer-Verlag, Berlin, 1998, p.44
投稿日:2021910

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よもや

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