お試しでの記事作成として、
小木曽啓示 代数曲線論
を読んだメモ。
以下でリーマン面と言ったらコンパクトリーマン面のこととする。$X$は大体、コンパクトリーマン面を指す。
$X$ 上の正則関数のなす層を $\mcO_X$ と記す。
$D$ を $X$ 上の因子とする。 $X$ の各開集合 $U (\neq \varnothing) $ に対して
$$
\mcO_X(D)(U) := \left\{f \in \mcM(U) | \div(f) + D|_U \geq 0 \right\}
$$
とおき、自然な制限写像を考えると $\mcO(D)$ は層になる。これを因子 $D$ に付随する層という。
$D$ の正の成分が大事っぽい。正の成分があると、切断 $f \in \mcO_X(D)(U)$ として極を持つようなものが許される。例えばある点 $P \in X$ について $D = 2P$ とすれば $f$ は $P$ において2位の極まで持ってもよい。(持たなくてもよい。)
いっぽう、負の成分は $f$ に零を持つことを強制する。$D = -2P$ とすれば $f$ は $P$ において2次以上の零を持たねばならない。
$X$ を種数 $g$ のコンパクトリーマン面とするとき、
$$
h^0 (\mcO_X(D)) - h^1(\mcO_X(D)) = 1 - g + \deg D .
$$
ただし、
$$
\begin{align}
h^0 (\mcO_X(D)) &:= \dim H^0(X, \mcO_X(D)) \\
h^1 (\mcO_X(D)) &:= \dim H^1(X, \mcO_X(D)) \\
g \equiv g(X) := h^1(\mcO_X) &:= \dim H^1(X, \mcO_X)
\end{align}
$$
左辺を層 $\mcO_X(D)$ のオイラー・ポアンカレ標数といい、$\chi(\mcO_X(D))$ と書く。
また、コンパクトリーマン面上の大域的正則関数は定数のみなので $h^0(\mcO_X) = 1$
であることから、$1 - g = h^0(\mcO_X) - h^1(\mcO_X) = \chi(\mcO_X)$ が成り立つ。
よってリーマン・ロッホの定理は
$$
\chi(\mcO_X(D)) = \chi(\mcO_X) + \deg D
$$
とも書ける。(こっちのほうが覚えやすい...!)
$$ h^0(\Omega_X^1(-D)) = h^1(\mcO_X(D)). $$
$X$ 上の 0 でない大域的有利型1形式の定める因子の線形同値類のことを $K_X$ と書き、$X$ の標準因子という。
(テキスト: 注意6.37(172ページ))
$\omega$ を $X$ 上の 0 でない大域的有利型1形式とすると、 $K_X = \div(\omega)$ であり、
$$
\begin{align}
\mcO_X(K_X) &\simeq \Omega_X^1; & f \longleftrightarrow f\omega , \\
\mcO_X(K_X + D) &\simeq \Omega_X^1(D); & f \longleftrightarrow f \omega .
\end{align}
$$
上の2番めの式で $D → -D$ として、その次元をとればセールの双対定理の左辺の項が出るので、セールの双対定理はさらに
$$
h^0(\mcO_X(K_X - D)) = h^0(\Omega_X^1(-D)) = h^1(\mcO_X(D))
$$
とも書ける。これをリーマンロッホの定理に代入すれば
$$
h^0 (\mcO_X(D)) - h^0(\mcO_X(K_X - D)) = 1 - g + \deg D
$$
となる。これは 1次のコホモロジーが出てこなくて、0次のコホモロジー (= 大域切断の空間)だけが出てくるので扱いやすい。
さて、次にセールの双対定理で $D = 0$ とすると、
$$
g \equiv h^1(\mcO_X) = h^0(\Omega_X^1) = h^0(\mcO_X(K_X)), \label{hoge}
$$
すなわち$X$ の種数 $g$ は $X$ 上の大域的正則1形式全体のなす線形空間の次元に等しい。
これをさらにリーマン・ロッホの定理で $D = K_X$ としたものに代入すると、
$$
\underbrace{h^0(\mcO_X(K_X))}_{= g} - \underbrace{h^0(\mcO_X)}_{= 1} = 1 - g + \deg K_X,
$$
より、
$$
\deg K_X = 2g - 2
$$
を得る。