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級数で表される定数に関する考察

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この記事では, 最近興味を持っている, 以下の級数で定義される定数の表示について考えたいと思う.
C:=0<nln2(1+1n)=0.97718918326893655446

まず, 以下の表示が成り立つ.

C=π230<nLi2(1n2)

Li2の接続公式
Li2(z)+Li2(zz1)=12ln2(1z)
z=1nとして用いて,
0<nln2(1+1n)=20<n(Li2(1n)+Li2(1n+1))=2Li2(1)20<n(Li2(1n)+Li2(1n))=π230<nLi2(1n2)

次に以下の命題が成り立つ.

|x|1に対し,
0<nLi2(x2n2)=0<nζ(2n)n2x2n

以下の式変形により示される.
0<nLi2(x2n2)=0<n0<k1k2(x2n2)k=0<kx2kk20<n1n2k=0<kx2kk2ζ(2k)

上の命題の右辺は, さらに次のように変形される.

|x|1に対し,
0<nζ(2n)n2x2n=20x1tln(πtsinπt)dt

Maclaurin展開
πcotπx=1x20<nζ(2n)x2n1
より,
0<nζ(2n)nx2n=20<nζ(2n)0xt2n1dt=0x(1tπcotπt)dt=[ln(πtsinπt)]0x=ln(πxsinπx)
これより,
0<nζ(2n)n2x2n=20<nζ(2n)n0xt2n1dt=20x1tln(πtsinπt)dt

部分積分により,
0x1tln(πtsinπt)dt=lnxln(πxsinπx)0x(1tπcotπt)lntdt
と書き換えることもできる.

一方, 最初の定数の部分を拡張すると以下の級数表示を得る.

0<nln2(1+xn)=21<n(1)nHn1nζ(n)xn

ln2(1+z)=21<n(1)nHn1nzn
z=xnとして用いればよい.

これは以下の積分表示を持つ.

調和数をHn:=1+12++1nとする.
1<n(1)nHn1nζ(n)xn=01ln(Γ(1+x)Γ(1+xt))dt1t01lnΓ(1+xt)tdt

対数ガンマ関数のMaclaurin展開から始める.
lnΓ(1+x)=γx+1<n(1)nζ(n)nxn
ここで, γはEulerの定数γ=0.5772156649である. これを用いて,

1<n(1)nHn1nζ(n)xn=1<n(1)nnζ(n)xn011tn11tdt=01(γx+lnΓ(1+x)γxt+lnΓ(1+xt)t)dt1t=01(lnΓ(1+x)1tlnΓ(1+xt)t(1t))dt=01ln(Γ(1+x)Γ(1+xt))dt1t0xlnΓ(1+t)tdt

これによって, 元の級数が2つの積分の和に分解できたことになる. まず, 第2項を考える. 対数ガンマ関数のMaclaurin展開より, 以下の等式が得られる.

|x|1に対し, 以下の等式が成り立つ.
0xlnΓ(1+t)tdt=γx+1<n(1)nζ(n)n2xn

また, 部分積分により,

0xlnΓ(1+t)tdt=lnxlnΓ(1+x)0xψ(1+t)lntdt
と表すこともできる. これを用いて以下のように命題2に現れる和を表すことができる.

関数f(x)を,
f(x):=0xlnΓ(1+t)tdt
と定義する. このとき,
0<nζ(2n)n2x2n=2(f(x)+f(x))

まとめ

最後に, 得られた表示をまとめておく.

C=π230<nLi2(1n2)=π230<nζ(2n)n2=π232011tln(πtsinπt)dt=π23+201(1tπcotπt)lntdt=21<n(1)nHn1nζ(n)

投稿日:2021916
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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